日曜もダメよ
平日は会社で虚無の労働に追われ、その疲れをいやすべく金曜日の夜に倒れるまで飲んだ結果、土曜日はスーパー・ストロング・デトックス・マシンと化して一日じゅう部屋の隅に転がっている私のようなどうもならん作家志望者にとって、日曜日はじっくりと執筆に取り組める貴重な日である。
で、朝からパソコンの前に座っている。座ってはいるんだけど。
「――いかん」
Kindle読み放題に入っている昔のまんがを延々と読んでいるだけで午前中が終わってしまった。ネットで見かけるネタ画像で断片的に知ってはいたけれど、ちゃんと通して読んだことはない作品ってありませんか。
Kindleのリーダーを閉じ、インスタグラムを開く。こらこら、私。テキストエディタが遠い。うう。
私もよくアップするようなごはんやら猫やらの画像に混じって、白いダッフルコートが椅子の背にかけられている画像があらわれた。少し毛玉がついていて、冬のあいだ着倒されたことがわかる。それだけの写真だ。
なのに、どうして目が離せないんだろう。
名前を見なくても、誰が撮ったのか、どうしてわかるんだろう。
スマホでメッセージを送った。
〈コート見たよ。相変わらずかっこよく撮るね〉
〈ありがとうございます。クリーニングに出す前に、ふと撮りたくなって〉
〈スマホで撮ったの?〉
この回答が二、三日後に来ることもある。
〈はい。まだ慣れませんけど、
最後の予測変換のミスはなに。
私の友だちは、徹底的にマイペースで、写真をやっているのに最近までSNSで作品を発表するという発想がなくて、まだ無名だけど才能がとてもあって、たぶん、私に対して特にやさしい。なぜかはわからない。
〈今度ちゃんこ鍋食べにいく?〉
そう送ったけど、今度は返信がなかった。
何か気になる被写体が見つかって、そっちに集中しているのかもしれない。
「私もやるかぁ」
大きく伸びをしてから、私はふたたびパソコンに向き直る。
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