第5話 とある本棚です2

 私は本棚だ。ここは守の書斎。書斎というには狭く、まるで物置のようだ。実際ここは物置で、そこにいる埃を被った私が抱える本たちが彼の目当てだ。暗い隅が好きな彼はここで読む。居間に本を持って行けばいいだろうに、そんな姿勢では体も痛くなるだろうに。この本は守の父の本、私も守の父に選ばれた。父親の名前は忘れた。今の父の明が守に言ったのだ。今は僕が父親だよ、と。君をしつけなきゃ行けない。私は本を抱えながらそれを見ていた。そうして少し前彼はしばらくここに閉じ込められた。



「ふふっ」



 少し笑った。守の父が好んで読んだ小説は、特別何も面白いところはない。私は本棚だ。本は読まない。よく守の父が本棚の前でひとりごとを言ったり、内容について熱く語ったりしていたが、あまり面白くなかった。


 守は父親に似ている。

 明も守の父に似ている。でもきっといろんなところがちょっとずつ違うんだろう。もしくは大きく違うのかもしれない。


 私は本にはなれない。本のように守に読んでもらうことはできない。新しい本も持ってこれない。

 私は本棚だ、本ではない。本はいつもそばにあるが、本がなければ私は本棚出なくなる。

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