第6話 とある本棚たち

 ここは家具屋さんの中、いろんな人がひしめき合う中で僕らは本棚だ。隣には棚さんもいる。ちょっと向かいにはテーブルさんや椅子さんもいる。ちなみに3人いる。テーブルさん椅子とかは10人くらいの大人数だ。時々来る人に自分のアピールポイントを売り込んでいる。よく叩かれたり撫でられたり触られたり座られたりしてる。ほとんど僕らにはない。


 僕らは本棚だ。なんとなくディスプレイ用の本が置いてあったり、スライド式ですよ、DVDも置けますよとか宣伝文句もある。あとはテレビ台と合体できますよ、お子さんの成長に合わせて変形できますとか!

 やばい、僕らかっこよくない?



「この色ダサい」



 な!?それならあなた好みに染めてください!

 僕の願いは届かず、彼女はスルーしていった。まあでも売られるのはほんとたまーにだから、しかたないしかたない。今本を持っている人は本を置くスペースがそもそもある。それに新しく本を買う人も、本棚が必要なくらいたくさん買う人は少ないだろう。ネットで本読めるし。


 僕らは本じゃない、本棚だ。というかまだ売り物だ。まだ本はそばにない。誰か僕を買ってください。そして本を置いてください。大事に持ちますから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る