EP13-8 もう一つの災害
――DEー10『
太陽を反射し白く輝く高層ビル群の上――紺碧の空を飛び交う空軍の戦闘機。
「Fire! Fire! Fire!」
編隊を率いるパイロットが叫ぶと、各機がミサイルを立て続けに発射した。煙の尾を引くミサイルは、銀色をした三角形の板の様な機体――宇宙からの侵略者が操る戦闘機を追う。しかし
中には宇宙人の攻撃を錐揉み飛行で掻い潜りつつ勇猛果敢に応戦する、恐らくはその隊のエースパイロットであろう者もいたが、その健闘もそう長くは続かない。彼我の戦力差は大きく、人類の形勢が不利なのは明らかであった。
その戦況を、この亜世界の人間とは別の意味で危惧する男がいた。複雑な模様に織られた魔法の絨毯に乗って空を飛ぶ彼は、超音速で飛行する宇宙人の戦闘機を、すれ違いざまに手に持った
[おいおい、どうなってやがんだよ?!
右眼を青く光らせOLSの通信でそう怒鳴るのは、黒いスーツとシャツを開けた男。年齢は20代半ば。ダークブラウンの荒々しい短髪。――彼は第二等規制官のヴァンデレイである。その彼の声に応え。
[エントロピーの加速状況、及び整合性の破綻が予測を遥かに超えています]
[どういうこったよ!? (クソッタレ、誰かが干渉してやがんのか?)]
ヴァンデレイは宇宙人達からのレーザー攻撃など、ただ光を当てられている程度にしか感じない様子で、圧倒的な強さをみせてUFOを斬り散らかしているものの、宇宙から次々と飛来する敵の数は減るどころか、寧ろ増える一方であった。
[現況報告!]とヴァンデレイ。
何処にいるのか、情報迷彩で姿を隠している
[――
[ああ? なんだそりゃ!? 9割ってもう詰みだろ! ――ディソーダーの残りは?!]
話しながらも、次々と
[規制官ヴァンデレイの破壊によって、1866体が排除され――現在地球上に侵攻している残りのディソーダーの数は4645体に減りました。尚、衛星軌道から月にかけて約43億の戦闘機体と、200万超の母船が待機しています]
[マジかよ……クソッタレが。どうすりゃいい――? いっそ対消滅爆弾でも使うか?!]
[源世界理論に基いた破壊兵器を用いた場合、現在展開中のIPFが崩壊し、エントロピーの増大は寧ろ加速されると考えられます。――警告、
「(じゃあもうどうしようも――)って、諦められるわきゃねえだろ!」
両手を広げて宙に数千のタルワールを生み出すヴァンデレイ。それが四方に拡散飛翔してUFO群を貫き、空に爆発の津波が巻き起こる。彼自身も憤りながら空を駆け巡り、触れるものを片端から斬り伏せ続ける。しかしやがて
[間もなく予測値が100%に達します。――亜世界消滅に巻き込まれる可能性が高い為、次元接続を強制解除。源世界に帰還します]
[なにぃ?! ちょっと待て、このクソッタ――]
ヴァンデレイが悪態を言い切る前に、彼の姿は
***
――源世界/WIRA本部/統制室――
真っ白なその丸い部屋には、黒いスーツの集団。
真ん中の柱に組み込まれたインテレイド、ルーシーの斜め前には、栗毛を七三分けにした60代の男性――
最初に口を開いたのはジョルジュ。
「全員集まったな。概要は聞いていると思うが……フラッドが発生し亜世界コードDEー10、通称インベイジョンラインが消滅した。
全員が無言――。ユウが唾を飲んで喉を鳴らした。
「通常であればOLSで話し合うところだが、この件に関連した問題により、第二等以上の規制官のみによる直接会話となった。皆にはわざわざ出向いてもらってすまないが、
これは事前にも指示されていたことであったので、全員が既にOLSとのデバイス接続を解除していた。ルーシーが透き通った声でそれを伝える。
「――元素デバイスの通信状況を確認。OLSのアクティブ反応、ありません」
「……ではまずヴァンデレイから報告を」とジョルジュ。
ヴァンデレイは鼻で荒い溜め息を吐いて、頭を掻きながら前に出た。
「フラッドが発生したのは、
「マジかよ。一瞬じゃねーか」とアマラ。
――
「ええ。お陰で自分はほとんど何もできずに戻ってきたってワケですよ」
「原因は――?」とリアム。
「アイオードの解析じゃ、根本的な原因はインベイジョンライン全体の、情報粘度の急激な低下です。
「理由は?」とリアムが続けて問うと、クロエが口を開いた。
「――
その見解にヴァンが頷く。
「当たりです。――インベイジョンラインに存在する3名の
「だがその運命を覆した
「ええ。――持ち帰った情報から、唯一
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