EP7. *Followed by clouds《選抜対抗試合》
EP7-1 LEAD研
山の一部を切り崩して隠すように建てられた、コンクリートの巨大な建物――最先端兵器開発研究所、通称
クロエらが強化合宿に行っている間、
深夜――
その体は自身の温度をリアルタイムで周囲に合わせて温度感知を無効化し、光や音に対しては真球の胴体に触れた瞬間に、それと完全に同じものを対角に発生させることで実質的な透過を可能にしていた。更に別の観測手段――例えば殊能や魔法のようなその亜世界特有の感知方法に対しては、何も無いという情報を返す『情報迷彩』が働いている。
観測機という特性上、自身が環境に与える影響は限り無く小さくするという
警備の人間や監視カメラや対人対物センサーといったセキュリティを難無く
部屋に生体反応が無いことを確認すると、
「………………」
無人の静寂と暗闇の中で、所狭しと立ち並ぶ大型のショーケースの様なコンピュータ。製作途中の銃火器や分解されたアーマード――。輸送コンテナ数個分の大きさであるその空間に置かれた物体を、
「……………………」
コンピュータが起動を終え、真っ暗な空間に四角い光が浮かぶ。『PASSWORD_?』の表示が現れた瞬間にはそれを解き終えた
「……ァ……ナァ……ト……」
誰一人いないはずの部屋の中で、不気味な声がした。
「――?」
ガラス玉のように砕け散った
***
広大なネスト第一校の野外演習場周辺には、そこで行われる試合が見渡せるよう階段状になった臨時の観覧席が500席設けられた。そしてその9割は既に埋まっている。
神堂クレトを筆頭とし過去最多優勝を誇る学園ネスト第一校は、今年も予選を一位で通過。それに続くのがネスト第三校と国際殊能学院高校。各地で行われた予選を勝ち抜いたこの3校が、今日ここで雌雄を決するのであった。
この全国選抜対抗試合は未成年殊能者の一大イベントとはいえ、娯楽やエンターテインメントの類の
残りの200席には
演習場の隅には会場警備の拠点となる臨時の屋外指揮所――常駐している民間企業の警備隊とは別に、軍の対武力警備のエキスパートであるスペシャル・セキュリティ・フォース、略称『SSF』の一個小隊が派遣されていた――。
彼らの派遣を要請し、同時に指揮所を管理棟内の防災センターではなく屋外に設置するよう指示したのは、他ならぬクロエであった。その理由は、2日前の夜遅くから
(アイオードを知る人間はこの世界にはいない。それに仮に知り得たところで、
規制官レベルの強力なアルテントロピーを持つ転移者のみである。
(つまりディソーダー以外にはあり得ない。そしてアイオードが自発的に連絡を怠るなどということもあり得ない。何らかの方法で機能を停止させられているか、或いは破壊されたか)
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