賢者とお休み
よしっ、終わった!!
心の中で、僕は大きな達成感とともに呟きをあげる。
彼女を助けて四日目。
周りが太陽の光を浴びて目覚める頃の時間。
<
ぶっ通し三日三晩にも及んだ魔法の行使で、流石の僕も疲れ果てていた。
最後に改めて、彼女の肢体を確認する。
大小さまざまな傷は完璧に癒され、文字通り「傷一つついていない」状態だ。
その肌はまるで最高級の絹のような滑らかさと宝石のような輝きをあわせ持っていた。
その美しさを取り戻すことができたことが、以前の輝きを取り戻すことができたことが、なんだか僕にはとても誇らしかった。
まるで王様に命じられた大任を完遂したかのように清々しい気分だ。
……、実際には王様に会ったことなど一度もないので、僕の想像に過ぎない気分なのだが。
ともあれ、少女の傷は癒された。
僕は今にも意識が落ちそうになるのをグッと堪え、最後の仕上げに取り掛かることとした。
自室に戻り、机の右側最下段の引き出しを開ける。
簡易な用具入れとして扱っている引き出しからお目当ての物を探す。
ガサゴソと手を突っ込み、引き出しの中を漁る。
そして、そこから包帯を取り出すと、僕は眼をこすりながら再び寝室に戻る。
再び少女が眠るベッドの縁に腰かけた僕は、包帯に
僕が包帯に記述した
先ほどの<
簡単に違いを説明すると、<
それに対して、<
三日三晩起きない少女。
ここまで来るのに積もりに積もった疲労と緊張が、その原因だろう。
先ほどまでの<
だがその体には今だ、とてつもなく大きな疲労が残っている。
それを全て取り除いて初めて、彼女に対する治療は終わりになるのだ。
そうして、生まれたままの状態で横になったままの少女に僕は包帯を巻いていく。
包帯は癒しの光を身に纏い、彼女を優しく包み込んでいく。
水属性の魔法が苦手な僕が使う魔法でも、無いよりかはあった方が遥かに疲労の回復は早いはずだ。
そう思いながら、彼女の体を優しいベールで覆っていく。
特に、ここまで来るのに酷使されたであろう手足には念入りに念入りに。
彼女の体はとても小さく、包帯を巻き終わるまでにかかった時間はほんのわずかであった。
この小さな体を懸命に動かしながら、ここまで必死に来たのかと思うと、何とも形容しがたい感情が心の中で渦巻く。
包帯を巻き終わった僕は、彼女が最初に来ていたボロ切れを着させ、布団をかけた。
そのボロ切れは彼女を包むにはあまりにも分不相応だとは思ったが、今はとりあえずこれで我慢してもらうことにする。
今は使っていないタンスを漁れば、彼女の着れそうな服が何着かは出てくるだろう。
だが残念ながら、今はそこまで行動を起こす気力も体力もない。
久しぶりにここまでの長期の魔法を行使した僕は、身も心も稼働限界に近づいていたのだった。
幸いにして、時間はたっぷりある。
彼女の事。
彼女の為に必要な事。
彼女の為に必要な物。
そういったこれからの事は、目覚めてから考えるとしよう。
お疲れ様。
ゆっくりお休み。
そう、心の中で彼女に伝えると、僕は寝室を後にするのだった。
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