私の左目は蝶を観る 03(Σ348)
「ひ・・・酷い目にあった・・・」
「別に痛みはなかったじゃろうて。全くひ弱な小娘じゃのう」
肉体的な話ではない。
心の問題、メンタル面のダメージなのだ。
MPとかSAN値とかそっち系がごっそり減る。
私何かこっちに来てから心の消費量多くないですか?
嗚呼、アンジェで回復したい。
アンジェと回復したい。
アンジェとしたい。
「おかげで色々と分かったことがある。まぁ余計分からなくなった事もあるがの!」
何故だろう。むしろ不安要素が増えているのにこの猫ちょっと楽しそうである。
猫じゃらし見つけた猫みたいな顔で言われても何1つ嬉しくない。
また鼻にこより差し込んでやろうか・・・
「おぬしの記憶を見た限り、まぁ案の定、その左目が色々と厄介事の一因になってしもうとるの」
「あっけらかんと言ってますけど、そもそも左目の説明がまだです」
厄介事の根源。
要するに左目の責任の所在を申し上げてください。
少なくとも先ほどの質問と、左目をグリグリされた時点で、この左目がテト様がらみの何か余計な細工を施されているのは間違いない。
いい加減罪を認めて楽になりましょう神よ。
「先に言っておこう。すまぬ、今回の事の3割・・・いや2.5割くらいはワシのせいじゃわ」
この猫畜生、ポロリと言ってのけましたよ!
あっさりと認めたけど、割合が微妙に減ったのは何!?
ここまできてまだ見苦しい言い逃れをするつもりなのかー!
「根本的問題ではないのじゃが一因なのは間違いない」
一因でも担っている時点でギルティです。
「全部吐いて、今すぐ。さぁ、知っている事を毛玉と一緒に全てぶちまけてください!」
「わ・・・わかっておるわい。そう怒るでない。あと毛玉など吐かぬ。ワシ神じゃよ?」
「キュっといきますよ? キュッといきますよ?」
「フギニャ!? お主マジ神に対するリスペクト低すぎじゃろ・・・」
締め上げた猫畜生の自白によると、こういう事。
まず私の左目は、転生時にテト様が私を見張る為、テト様自身の左目と交換された。
つまりこの左目は神の左目であり、この目がテトさまとの因果を維持しているらしい。
私の知らぬ間に勝手に眼球の交換とかされていた・・・
闇の臓器密売組織でも、もう少し当人に説明があると思う。
でもって、左目は私の3個もらった能力の保管場所でもある。
左目がストレージ代わりってどういう構造なのか。
元来、普通の人間に3個も特殊能力をそのまま渡すと、これまた発狂するという。
なので私の監視と能力置き場として、この左目は設置されている。
だからちゃんと説明を最初にしてください。
テト様に「制限」がかかっているというのは、この左目の交換というかレンタルが原因らしい。
神が人に己の一部を貸し出すのは基本的にNGである。
存在の次元が違いすぎて、借りた人間がこれまた発狂する。
過去に神の腕とか神の目とか神の道具とかを手にした人は、大体最後に狂って死んだそうだ。
その人達にちゃんと説明しました?って聞きたくなるよねここまで来ると。
マジ神様いい加減にして。
もう発狂要素が自分の中に多すぎて、発狂すると言われても気にならなくなってきた。
人間の慣れる能力ってすごいね。
今回に限っては、私とテト様の因果がそもそも結ばれてた事。
加えて私の因果が異世界で何かやらかさないか、死ぬまでの間見張る事。
その間、テト様自身の次元を何段階か落とす事で私に貸し出す事を可能にした。
故に今のテト様は、神ではあるが相当人に近いレベルに落ちているという。
私を見張る為に左目わざわざ設置したのに、案の定、私の意志ではないにしろ問題が発生しているのだから私の因果って相当手に負えないのではないだろうか。
だからって消滅とか御免被りますけどね?
てか、私が死ぬまで貸すって長くないですか? と聞いてみたが「神にとって人の一生など夏休み程度」と言われてしまった。
「じゃあこの人生っていう宿題テト様が片付けて下さいよ」
「お主、小学校で宿題は自分でやらなければならぬと教わらなかったのか?」
至極全うな事を言われているのに何か腹がたつ。
人間に与えられた宿題のハードルが高すぎるんですよ。
もっとイージーな世界にして欲しい。
とにかく。
今回の事件というかループをテトさまがゴッドパワーでパパッと解決!
とはいかない理由がこれだ。
つまり私に合わせてレベルを下げているのでやれる事が少ない。
そもそも、私を見張る為に貸しただけなので、左目が何かを起こすとは考えられていなかった。
その辺りの見積もりも、やっぱこう、雑なんだよなぁ・・・
だが今回は事実、いくつかの想定外が発生している。
一つ目の想定外はステータス関係。
本来隠蔽されているはずの「神の祝福」やら「異世界人」がモロ出しだったのは因果関係が現状不明。
能力によるステータス上昇も、元来ならば「CかD程度」に改ざんされて表示されるはずだった。
運気のあの謎の式とか意味不明な上に「耐性SSSとか超ウケるの!何じゃSSSって!どこの●んだ世界戦線じゃよw」とか楽しそうに笑っていたので、もう一度キュッと絞めておいた。
ゆ●っぺに謝れ。
これについては要調査ということで保留。
次に私が感じた痛み。
これはループによって記憶が溢れた私が、徐々に発狂へ向かっていた事への危険信号だという。
左目が「このままだとヤバい」と私にサインを出していたのだが、気づけるはずもない私は案の定発狂。
あの最後の激痛はテト様への「宿主がヤバイ」という救難信号だったそうだ。
もうちょっと他にやりようなかったの?って思う。
最後に見たぐるぐる景色は、時が巻き戻されているのを左目が見ていたから。
時間が回り巻き戻る様を視覚として左目が捉えてしまったのだ。
人間に本来無い感覚の為、それを見てしまった私は気絶したのだろう、という事。
左目のせいでSAN値がどんどん減っていく。
「というかですね、知らない間に監視カメラ仕込まれてたみたいで凄く嫌なんですが」
「それはすまぬ。と同時に仕方が無い。そもそも左目を交換しておらんかったらお主、今頃ブラックホールじゃぞ?」
確かにそうなんだけど、何か納得したくない。
もうここまで来たらブラックホールになって困るのこの猫なんだし別にいいんじゃないですかねって気持ちすら沸いてくるわけですよ。
吸い込んでやろうかこんにゃろうめ。
「で、最後―――お主が観たあの蝶。あれも左目が観ておる「何か」じゃな」
時々私が目にしていた蒼い蝶。
テト様曰く、私の右目、つまり人間の目の方はあれを捉えていないという。
カトリーヌの所で、左から右に漂っていた蝶が彼女の頭を隔てて右側に来るタイミングで見えなくなったのはそういう事だったのか。
神の目のみが視認している何か。
つまり、あまり宜しくない類の蝶なのは間違いなかった。
正直あの蝶が一番得体が知れなくて不気味だ。
「ぶっちゃけ、あの蝶が一番分からん。あれ―――そもそも何なのじゃ?」
神様に分からない事が、私に分かるわけもないでしょう。
何度も言いますが、文学少女は万能の天才じゃないのです。
何でもは知らない。知っている事だけ。
良い言葉ですね。
目の前の神にも是非覚えておいて欲しい名言です。
「分かってたら聞いてませんよ・・・」
「む。それもそうじゃな・・・ワシも知らぬ蝶か。気色悪いのう」
――――――蝶。
実はその言葉に思い当たる節が、無いわけでもない。
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