1999.09 BR 家畜人ヤプー 第一巻
家畜人ヤプー 第一巻
沼正三 幻冬社アウトロー文庫 1999年
REVIEW
ドイツに留学中の日本人、瀬部麟一郎と恋人のクララは、二千年後の世界から来たポーリーンの円盤に乗って未来の世界イースへ連れていかれる。その世界では白人の女性が主権を握り、ヤプーと呼ばれる日本人が、白人の奴隷として使役されていた。
三島由紀夫と澁澤龍彦らが絶賛した「戦後最大の奇書」最終決定版(本の裏面解説より)。『奇憚クラブ』という、SMの専門誌に連載されていたSF小説です。全五巻。
ヤプーというのはスウィフトの『ガリヴァー旅行記』の畜人ヤフーを元にしています。奴隷として、というところがミソで、本文では、黄人たちの身体を便器や女性用○ッ○○イフや召使い用の小人に改造する様子が細かく細かく書かれています。特に一巻ではイースの排泄文化、肉便器(セッチン)の使用法と歴史に力を入れて書かれています。
早い話がス○トロなんですが、この説明を読み切れない方は多分先には進めないという関門になってるような気もします。
白人(ホワイト)のものが黒奴(ニガー)と黄畜(ヤプー)の口に、黒奴のものがすべて黄畜の肛門に、この三色逐次間の摂食連鎖(トリコロル・フッドチェーン)は、イースの社会構造を具象し、三色間の価値の序列を固定する作用を営むのみならず、排泄を知らぬヤプーにすべてを消化させることによって、イース世界を前史時代のような不便・不衛生な便所の使用とか、厄介至極な汚物処理・塵芥焼却の問題とかから完全に解放された「便所のない世界」(no lavatory world)にしている。(P127)
ヤプーが排泄をしない理由というのも文中にあるんですが、ここでは割愛します。
奥野氏の解説にもあるんですが、日本人の勤勉で従順な要素が、自分を家畜化していくのではないかという予言のような文章があって、すごく不気味な感じがします。
「ヤプーは服従本能の旺盛な動物だと誰でもいいます。奴らの遺伝子(ジーン)の中の家畜人因子(ヤプーン・ファクター)が白人に対する絶対的劣等感を醸成し、それが自由意志を抑制するのですね」(P294)
日本人の白人へ対するコンプレックスをここまで不気味に表現したものは他にないでしょう。読んでいて気持ち悪くなります。でも読んでいくうちに慣れていくところが一番怖い(笑)。主人公のクララがヤプーに慣れていくのを同じように、感覚が麻痺していくような気がします。
個人的にはヤプーのギミックが面白くて読んでいるんですが、三島由紀夫は『マゾヒズムの快楽の極致』 (解説より)と言っています。
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