1999.08 BR 「におい」の心理学

「におい」の心理学 足立博 弘文堂 1995年


REVIEW


 匂いについての本。

 嗅覚を破壊されたメスマウスは、子供を育てず、食べたり放棄したりする。動物はお互いの匂いを尊重し、その存在に経緯を払っている。

 足立氏は、匂いの喜びを失うことは、神経症など心の病の発現に関係あるほど大きな損失なのではないかと言っています。

 匂いは味と密接な関係をもっています。匂いがなければ、味の微妙なニュアンスがわからなくなるそうです。

 にほふとは丹穂経。ことのほか赤く秀でてある、という意味だそうです。

 自己臭症の男の患者は男らしさに乏しい人が多い。

 「フィクションとしての子供」(本田和子 新曜社)では、無臭愛によって連帯する子供たちは、微妙なにおいにことごとく反応し、その発生源を探し出して駆逐しようと躍起になると述べています。

 視覚優位な社会のなかで、においは衰退しようとしています。においを失うということは、情緒を失うことでもあるのかもしれません。

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