第6話
「……糞ガキ、甘い人生はおしまいだ。剣士ってのは前に出て戦うってこと忘れんな」
「え……、えー? なにそれメンドクサイ、あんたがやればいいじゃん」
睨みを効かせた。我ながら大人気ないがババァよわばりしたことをクドグド言わなかっただけ頑張ったはずだ。
ガキンチョは、怖かったのか目を逸らしながら答える。
ヤル気ねえじゃん、このガキ。
「……子どもは守られて当然か? だったら女も守られて当然だろ? 私はあんたの姉でも母親でもねえ。甘やかされて育ったことを呪え」
私は自分の人生さえ呪っている。
恨め、憎め。自分で動かなければ何も変わらねえ。
私だって、ちやほやされてたって母さんの手伝いしてたさ。
洗い物や洗濯物、料理に至るまでな。
姉貴は隣で花嫁修業の為と、刺繍やら編み物やらに勤しんでいた。
「わからねえなら教えてやる。やる気出さねえと餓死するのはあんただ。覚悟しとけ」
「やーだやーだ! もう歩けない! お腹すいたよおおお! 。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。ウワァァァン」
……聞けよ。ホントガキは言葉通じねえな。
「……わかった」
パッと泣き止む。嘘泣きなのはわかっていた。
「じゃあ、そこで野たれ死ね」
……空気が凍りついた。
彼も1回はダメとは言われ慣れていただろう。
駄々を捏ね続ければ相手が折れる、折れるべきだと、それが当たり前の世界で育った生粋のワガママな糞ガキなわけだ。
胸糞が悪い。私だってそこまでじゃなかったわ。
よくあるよな、何でも思い通りにならないと相手が折れるまで騒いで、周りの迷惑になるからと相手も折れること。
だが、私には通用しない。従って、彼は次の一手が無いまま沈黙が続いた。
……これが出発から僅か5分の出来事だ。
「……見てるなら何とか言ってくれ」
視界の片隅。数少ない樹木に隠れきれていない人物に向かっていう。
ビクッと反応した。が、更に往生際悪く隠れようとする。
冷たい視線を送り続ける。
「……!? じいちゃん! 」
糞ガキが流石に気がつく。歩けないと言ったくせに走り出した。
そう、そこにいたのは心配性のジジイ、基村長。
しかし何故か私に発見された時より以上に慌てて、逃げ出した。
「じいちゃん! じいちゃん! じいちゃん! あのババアがあ……って何でにげるの?! 」
全力で追いかけっこをしている祖父と孫。
傍目からは微笑ましいが、現実は顔面蒼白のジジイをチビ助が追い掛けているシュールな光景だ。
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