第5話

あれから2人で頭をひねったが、答えなんか出るわけなく。

まさかね……と最悪を想定しようとしていた。

最強間違って、魔王になろうとしているなら厄介だが1手間省ける。


私と村長、元世襲は嫁さんのお酌を受けながら飲み明かし、手料理に舌づつみを打った。



ところ変わって朝。

私は諦めて1人で次の村に行くつもりだった。


「1晩お世話になりました」


そう、頭を下げた私の頭にゴンッと物があたった。


「いたっ」


慌てて顔を上げると、目の前に少しダボついた初期剣士服を纏ったお子さまが自分よりデカい剣を危なげに担いでいた。


いや、待て。待ってくれ!


「心苦しいが、我が孫を頼む! 立派に魔王を打ち倒し、最年少剣士の名をあげさせてやってくれ! うう……」


みんなでハンケチ目に当てながら。

厄介でしかないんだが!


「あんたに着いていくウンメイらしい」


運命の意味わかってねぇだろ、お子ちゃま!

断るわけに行かず、私はガキンチョの手を繋ぎ、代わりに剣を担いだ。

私は女だぞ、三十路近くても女なんだぞ。


「立派に役目を果たしてこい」


目薬じゃないかと思うくらいわざとらしい涙で見送られた。


□□□□□□□□


……今の私はさしずめ、子連れ狼。


何もなければ恋愛して、結婚して子育てしてていい年頃。

引く手数多だったんだよ。(過去形)

どうしてこうなった? どうして他人の子の手を引いてるんだよ?

自慢じゃないが子どもは得意じゃない。

どう接したらいいかもわからない。

何も考えずに普通サイズの剣持ってるじゃん?

あれだよね? 私が買ってやらなきゃならないフラグじゃん?


「……い」


人生オワタ\(^o^)/な状況は未だ継続中ってか?

未来見えねぇよ。剣士って頼もしいんじゃないの?

モブ倒すより、ガキンチョの世話の方が大変じゃね?

コイツ何食うの? 私とおなじ物でいいわけ?

女子力ないから自炊期待すんじゃねぇぞ。

手持ちあんまないからモブのドロップで稼がなきゃならないし、当分は私1人で戦わなきゃならないのか?

……クソイージーモードのクソ親父、いつかぶっ殺す。


「おい! 」


下方からの声にやっと気がつく。

トリップしてたわ。


「あ? 」

「お腹空いた! 何か食わせろ、ババァ」


この時、私の中で何かが切れる音がした。

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