幼少期

「まだ…」

「ほら、はやくしろよ! ビビ! 釣り出来なくなるぞ!」


「そんなに急がなくても魚は逃げないよ」


「時間は逃げるぞ! ほらはやくはやく!」


 そんな他愛ない会話が私の幸せだった。


 ヴィヴィアナ…つまり私は昔から無口で一定以上の仲の友達はいなかった。


 今慌ただしく走っているリアムを除けば…ね。


 私は別に釣りは好きじゃない、それどころかエサすらマトモに付けることが出来ない。


 それでも慌ただしく走っている少年と話…今盛大にすっ転んだ少年と話すことが何よりも好きなのだ。


 彼自身が私に好意を持って話しかけてくれている、それが嬉しかった。


 だから、私はこの幸せが大事だった。

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