第2話 解雇通知と望まぬ休暇
人事部の部屋は、通路を左に回ると 長い通路の真ん中の右側にある
入社した時に一度来ただけだ。
「コンコン」
「はーい どうぞ」
少し艶のある低い声あとドアノブに手をあて軽く深呼吸する。
「失礼します、第三営業部 双杯徹です。」
「・・・・・・・・・・・・・・・ん」
なんだこの間は、へんじすらしない
A4の資料の束をのぞきこみ顔が隠れてしっまっているが たしかにそこにいる
近くにいるわけでは、ないが上半身の姿勢から 足を組くんで椅子にもたれっかかているのは、わかる
じろりと こちらを紙の頭から見るや「っハアーーー」となんとも
つまらなそうに ため息をつく
「忙しい中ごくろうさまです。足を運んでもらったのはなんなんだけれども」
足を組み直しこちらにむくと 別の資料にしせんをうつす。
「は、はい」
目をとうしているのは、大方自分の資料だろう
ハッキリいって去年の営業成績は、最悪だった。取引先業者の半分は、大手企業などに吸収合併してしまったのだ。弱小の企業などは、そうやって時代についていくのだ。
どうやら会社と言うもの自体が効率化しているらしい
だが我が社の人事部の女王は、みかけによらずやさしかった。
「すまないのだが 我が社もこの通り年々苦しくなるいっぽうでな・・・・」
いがいなことに 優しい話口に驚いた。なんせこの人の表情は、式典などで団長の上で見る鉄面皮しかないのだ。この人に社内で会うと言うことは、道ばたでの偶然以外では、こうして人事部に呼ばれ昇格かクビの二択しかない もちろんブラックな我が社では、残念ながら後者しか存在しない それ故に この人の評判にも尾ヒレのついたものになったのだろう
(この人も大変なのだろう)
内心同情する 部下も持たず部屋に見えるのは、サポートマシーン 一台きり 実質一人で今まで何人もリストラ宣告をしてきたのだろう 表情もやや疲れ気味だ。
瞳を閉じて大きく深呼吸すると持っている資料を机に置いた
いよいよクビかと思ったら話は、そんな単純でやさしいものでは、なかった。
「正直に言うは、残念だけど うちには、あなたをクビにする余裕はないの」
言っている意味がよく理解できなかった。わたしをクビにできないのなら なぜわざわざ呼び出したのだ。
(褒めてくれるのかな(#^^#))
「現在我が社では、業務の約半数をマシーンでおこなっています。ですが大手では、すでに八割近くの通常業務をマシーンでおこなっています。それに対抗するには、我が社でも積極的にマシーンを取り入れてきました。ですが解決には、いたりませんでした。よって大規模な内部改革のため この度 各部署のマシーンの割合を増やすとともに 複数の部署の完全マシーン化に移行することを決めました。」
言われたことは、うすうす感ずいてた。 横の繋がりのないこの会社が
とる道は、早期の倒産か大幅な内部改革しかない 前者の選択をするなら
各部署にマシーンなど毎年右上がりに増やす必要は、ないのだ。
「残念だが 君のいる営業管理部もその一つだ・・・・・」
こちらの心情を察してか こちらの目を見据え話しを続ける
「いいにくいのだが 君には、この会社を辞めていただきたい」
私は、しばらく言葉を返せないでいた。十分な予測をしていたが
さすがに この言葉を直接聞くと 私も動揺を隠せないでいた。
彼女は、それを察したのか話しを続ける
「まあー待ってくれ 話を最後まで聞いてくれ クビといっても
君には、早期退職というかたちでのお願いだ。」
「自分 まだ30手前ですけど」
「わかってる その分十分な退職金は、はずむ 君のこれからにしたって
私たちも クビという名目で放り出すなどしたくない 」
それから続く話もかなり残酷なものであった。
私の退職を機に今年中には、社員の半分をリストラするというものだ。
残った半分という人員も自分がこの会社に入った時の半分以下だ。
(こんな会社でも 入社したときは、期待に胸を踊らせていたんだけどなー)
わかっていたのだ 所詮 底辺をホバリングしているような わたしには、
結局こういうのが 結末なのだ。
「・・・・・・・・わかりました」
その一言を言った瞬間 わたしは、少しだけ心が楽になったのを感じた。
正直この二、三ヶ月は、自分をすり減らす毎日だった。
新規のマシーンの搬入時期が近づくにつれ 休日に翌週の資料やら仕事をやり
平日でさえ 帰宅した後翌日分の仕事を少しでもと思い進めていた。
だがわかっていた 私のやっている仕事は、マシーンにかけると
ものの数分でできてしまうのだ。 わたしの仕事は、いわば
・・・・マシーンの手伝いだ。
退職金に対しては、わたしは、なにも質問などは、しなかった
会社の内情を潔く話してくれたこともあり とてもじゃないが
彼女に向かって 文句など言える雰囲気でわなかった。
彼女と事後処理と引き継ぎに関しての指示を二、三仰いだ後
軽く頭を下げ「いままでありがとうございました」と言いせめてもの
仕返しとして 自分自身に襟を正した。
「ああ・・・・」
という疲れた返事を聞いた後わたしは、部屋を退室した。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
退社に至るまでは、一ヶ月ほどかかった 正直死ぬほど気まずかった。
わたしがクビになったと言うことは、人事部に呼び出されてから
少したった後に広まった そのことに関しては、誰もわたしに聞いてこなかった
わたしも少なからず何年も務めたので みんなもどう言葉にしてよいか
わからなっかったんだろう 毎日少しずつデスクを整理しながら
最後に与えられた仕事をやり遂げた。
退社に向けて最初の頃は、意外と楽しかった 目の前にある仕事をこなしつつ
今までいつクビになるのでは、ないかと戦々恐々と過ごしてきた毎日が
うそのようだ
(入った当初は、こんな気持ちだったのになあ~~)
と少し悲しい気持ちになったがその気持ちは、すぐに冷め
いらだちに変わった わたしは、てっきり引き継ぎ要員に対しては、
話が通っていると思っていたが違っていたのだ
わたしが気を利かせて雇用法律に基づいて通達を受けた後二週間して引き継ぎの報告に行くと マシーンのやつは、
「最後までやっていいってください」
と言いやがった なんちゅうアップデートだ
(ふざけんな これじゃあやめるにやめれんでわないか てゆうか 引き継ぎ要員もいんのかい!)
わたしは、しぶしぶ引き継ぎをすることなく さらに二週間このなんともいえない空気の中 最後までやりきった
退職にいたって挨拶をしようと思ったがマシーンわざわざいうのは、なんだか
腹がたったのでやめた
こまめに整理してきたつもりだったが おもいのほか
(いやだいぶ(゚_゚;))
荷物が残っていたようで大きな手提げ袋二つに通勤で使っていたビジネスリュックに整理しながらしまっていった 最初のほうは、順調に見えたがしばらくして 終わるめどが見えてこず 大きなものは、先に入れて中くらいのものは、無理矢理ねじ込み 最後に小さなものは、わしずかみにして無造作に袋の上から入れた
かなりうるさかったと思うが周りの社員は、その様子をうかがうそぶりは、
せず 仕事をこなしていた 定時よりも早く身支度が終わり わたしは、背中越しに「おつかれさまでーす」と少しだけ軽いいつもの調子で別れを告げ 六年務めた会社をやめた そのときわたしは、三〇歳の誕生日を二週間すぎていた。
AIードルフの一票 濵明之介 @3647
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