AIードルフの一票

濵明之介

第1話冷たい通告

一月半ば正月ぼけが治まりサラリーマン気分が戻ってきた頃

毎年恒例行事がはじまる


「2058年度最新アップデートの通知」


会社中に重たい空気がはしる

AIの進歩にともない 効率化と生産性が爆発的にあがり

毎年GDPは、上がるがそれにともない

離職率も跳ね上がる結果となった。


「おい、隣の部署、今年も半分減ったぞ」

「またかよ・・・・OSをアップデートするたびに毎年これだな」

「クビになったやつ・・・去年子供が生まれたやさきだぜ」


聞き耳を立てながら脇目もふらずにひたすらパソコンにキーを打ち込んでいく

中小企業の管理部に背筋が凍るような会話が広がる


正直他人事では、ない


2浪してやっと就職できたころには、二十四歳

その頃には、社会は、人を必要としていなかった。

雑務や経理 などは、もちろん


「飛び込み営業だってぇ・・アポイントなしじゃ自動ドアすら 返事もしてくれない・・」


モニターにむかってツッコミを入れる 最近は、ずっとこれだ。


うちの会社は、もう一昨年から新入社員を採用してない

代わりにマシーンが一体、また一体と増えていく

ほかの会社でも一緒だ。

大手企業などでは、一般窓口業務は、完全無人化

会長や社長 ほか数名の役員と 各店舗に数名の役員が

会社の売り上げをチェックしているだけだ。


「双杯 ふたつき とおる様 人事部からおよびがかかっています。」


ぞくりと振り返ると営業部の管理マシーンがたってる

今では、こいつは、おれの上司だ。


役員がマシーンと言うのは、もはやどこの部署でもだ。


「は、はい・・・・・・・・わかりました。」


この時期で呼び出しの理由は、一つしかない


「っくそ・・・・・なんでよりにもよって あんなやつにいわれなきゃいけないんだ。」


小声であくたいをひとしきりつきおわるころには、

人事部のドアの前までついてしまった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る