1話 『冷たい牢の中で』
そこは冷たく暗い牢屋の中。
鉄格子のはめられた小さな窓から、ぼぅっと照らす一筋の月明かりが零れているのを、虚ろな瞳で眺める少年がいた。
少年は街の人々からはコザック、そう呼ばれていた。
数日後に処刑を控えた哀れな男、投獄されている囚人達にはそう呼ばれている彼は、深い溜息を吐き出すと冷たい石の床へと寝転ぶと、コザックは硬くゴツゴツとした不快な感触に顔をしかめる。
投獄されたのは自業自得だとは頭ではわかっていても、このままこの絶望しか待たぬ牢屋の中で死を待つのは御免だ。
だがしかし、脱獄する術を持たず、牢屋を出られたとしても見張りの騎士を相手にしたら、丸腰のコザックは無傷で済むことはまずないだろう。
さて、どうするか。
そう悩む彼の牢屋の前で、ジャランと金属が当たり鳴る音が響いた。
不思議に思い、寝転んだまま目線だけを音の鳴った方へと向けると、暗い牢屋の中には不釣り合いなほどの真っ白い長身の男がいた。
全身が真っ白のコートを着込み、目元まで深くフードを被り、手にした錫杖で地面を叩くと再び先程のようなジャランと金属がぶつかり合う音が牢屋の中を響き渡る。
「キミがコザックだね?」
酷く中性的な声で長身の男が、コザックにそう尋ねてきた。
「俺がお前の言うコザックだと思うぜ」
「そっかそうか!それはよかった、キミ達を見つけられてね」
「達…?」
コザックの返答に長身の男は突然嬉しそうにそう言うと、また錫杖で地面を叩く。
地を叩く度に鳴る金属の音が鬱陶しいのに、見張りの騎士がやってこない。
「そこの見張りなら、今は夢の中よ」
疑問に思ったコザックが疑問を口にを出そうとするよりも前に、1人の少女がコザックの疑問に答えて牢屋の前に、ぺたりぺたりと裸足のままで歩いてくる。
燃え盛る炎のような艶髪で同じように赤い赤い瞳の少女。
擦り切れていたりとボロボロの服を着込んだ少女は、手にした騎士剣を指先だけでくるりと回す。
「斬ったのか…?」
「そんなまさか。背後から叩いて気絶してるだけよ、多分…」
コザックは、その少女の容姿を見て目を見開くが、少女は彼のそんな反応には気付かずに白い長身の男に向き直る。
「それで、私"達”を探してた理由って何?」
長身の男は、その言葉を聞いてコザックと少女を交互に見てから、わざとらしく咳払いをしてこう言った。
「キミ達にはやってもらいたい事があるんだ。まずは手始めに、ある敵を相手に"宝玉”を奪い取ってほしい」
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