第6話 タヌキんど一世

 黄色い狸は二人を抱いたまま草原の中で異様な光を華っている赤レンガの家に入って行きました。

 家に入ったら、黄色い狸は自分が助けたやつらがどんなやつらかを確かめるために、昼間太陽の光でたっぷり充電しておいた電気をつけました。部屋の中が一気に電気で溢れました。

 黄色い狸は、その電気を頼りに二人が何かを確認しました。それは狸と馬でした。そいつらはぐったりとしていて、全く動く気配がありません。

 しかし、息はしているため死んではいないようです。黄色い狸は部屋の片隅にある小さな押入れを開け、客用の白い布団を二枚出してきて、畳の上に載せました。それを綺麗に敷き、その上に二人を載せ、上から華やかでカラフルな虹色のバラの模様が入った掛け布団を掛けてあげました。

 黄色い狸は、二人が起きてくるまでゆっくりくつろいでいようと思って、隣の茶色い板が敷いてある板の間(台所)の戸棚から白いカーテンの掛かったような形状の茶碗を出してきて、それに白いティーポットから出した煎茶を優雅に注ぎます。それを手に持ち、板の間にある丸いテーブルの所に行き、紳士に飲んでいます。

 お茶は、花のよう和やかになってしまうような香りをはなっています。とってもおいしそうです。

 「う~うまい。いつ飲んでもこの茶は天下一品だなあ。やっとくつろげるぜ。この狸と馬は何であの異様な黒い光りを放つと言われている暗(くろ)森(もり)にいたんだろうな。う~ん、わからん」

 CSまんとひひはまんとひひの森と言っていましたが、この惑星に住んでいる住人たちは、その森を暗森と呼んでいるようです。聞く人によって違うという個性の現われと言いましょうか。なんと言ったらいいんでしょうか。まーそういうもんです。

 では、話しを元に戻します。

 そのころ二人は何を考えていたかと言うと、全く起きる気配も無く、どちらも異様な夢の世界を彷徨っていたのでした。

 

                    ▲


 では、一度狸と馬のことは置いておいて、ゲーテの元に向かった赤龍のところに耳を向けてみることにしましょう。

 赤龍は、やっとゲーテの所に着き、さっそく自分が悩んでいる二人のことを話してみたのでした。

 すると、ゲーテはこう言ったのです。

 「二人はこの地球にはおらん」

 「おらんとはどういうことだ」

 ゲーテは、厳しい形相になり、手の代わりに他の雲を使って腕を組むような形で考えました。

 「では、そいつらは誰かと一緒にはいなかったか?」

 「あーいたと思うが、白い衣を羽織っていたことぐらいしか思いだせん」

 「たぶんそいつは、この世界で神と呼ばれている方の神じゃろう」

 「神と呼ばれている方の神ということは、他にもいるのか」

 と赤龍は、不思議そうな顔をしながら聞きました。

 「いるが、そいつのことは今は関係ないので話さぬ」

 「そうか、話したくないか。なら聞かぬ」

 「では、話題を変えよう」

 ここで赤龍は、一呼吸置いて息を深く吸い込みました。心の中を整理するためにね。

 「では、そいつら(地球にはいない二人)に会う方法はあるのか」

 ここで、またゲーテは考えるポーズをとりました。

 「それにはおまえがもっと小さくないとだめだ。そうじゃないと、それに乗ることはできん。しかし、遅かれ速かれ後で二人に会うことになるじゃろう。今度会う時は、二人は見違えるほど強くなっておるため、強力な仲間を用意しておいたほうがよいじゃろう。そして、その仲間を用意する旅に我も一緒に連れて行ってくれぬか」

 「おーいいぞ。お前がいれば百人力じゃ。ではゲーテ、用意はいいか!」

 「いつでもいいぞ!」

 「南アメリカのイグアスの滝に向かって、レッツゴーステーション!!」

 そう言うと、赤龍と積乱雲は、夜の暗い空の中をゆっくりゆっくりと漂うように進んで行ったのでした。

 「おい、ゲーテ。もっと速くは動けねーのか?」

 「おい、我は積乱雲という雲の一種じゃぞう。無理を言うでない」

 

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