scene70*「ダンス」


伴奏者と演奏者は恋になんか落ちないってみんなは言うけれど、

もしそれが本当だとしたら、僕はやっぱり変わっているんじゃないだろうかと思ってしまう。




【70:ダンス 】




手と手を取り合いながら駆けてゆき、踊るようなメロディ。


そんなイメージがする課題曲。

自分がわりと得意な曲で伴奏できるかもしれないなんて思って、正直ホッとしていた。




「あ~あ、フユカはいいな~。だってリツ君が演奏者なんでしょ。私なんてあのスギタだからね!ほんと勘弁してほしい」


「まぁまぁ。それだけユアちゃんの腕を買われてるんだよ。スギタ君の伴奏でもユアちゃんならって先生が思ってるんじゃないかな」



教室を出るなり、ため息をつきながら悲観の声をあげる親友に、私はしょうがないなぁという気持ちで励ました。

それでもよほどショックだったのか彼女はうなだれたまま、さらなるため息をつく。


「あいつってほんっと主張強くてテンポ先走ってくるからこっちは大変なんだよ!見た目ヤンキーのくせに」

「あははは。でもスギタ君、ホント力量あるしね。たしかに伴奏者泣かせかも」



私の通っている高校は普通科の他に芸術科とスポーツ科のある大きな総合高校だ。

私はそこの音楽科ピアノコースに在籍している。

音楽科と言っても一般教科ももちろんあるので普通科と変わらなく、強いて言えば午前と午後に音楽の授業があるくらい。


そして先ほどから悲しみに満ちた言葉を口にしているのは、同じピアノコースに在籍しているユアちゃん。

ユアちゃんは入学する前からピアノ教室を同じくする、ずっと仲良しの親友だ。

今もまさに音楽室から教室に戻るまでのちょっとした愚痴大会といったところ。

専門的なレッスンは午後にみっちりとカリキュラムが組まれるので、逆を言えばこうしてゆっくりしていられるのも午前中の休み時間くらいなのだ。


原因は、先ほどの授業で発表された、5月の定期試験におけるバイオリンコースの生徒との伴奏組み合わせのことだ。

ユアちゃんは私の演奏者がバイオリンコースに在籍しているリツ君ということを本気で羨ましがっている。

なぜならユアちゃんの当たったスギタ君はクセのある奏者だし、リツ君はピアノコースからすると一番人気の奏者だからだ。


彼はバイオリンコースの主席入学者として代表演奏を務めたほど優秀で、人柄も穏やかだから女の子にも評判が良い。

その安定した演奏に伴奏経験がある子はみんな「また伴奏したい!」と口をそろえて言うほどだし、先生の評価も高い。


なので私としては、そんな彼と一緒に演奏ができるなんて本当はすごく嬉しいし楽しみだったりする。

私みたいな凡庸なピアニストなんてわんさかいるのに、一体どういう基準でこの組み合わせになったのか私が先生に聞いてお礼を述べたいくらいだ。


内心ウキウキしていると教室に入る手前でユアちゃんが「ゲッ!」と嫌な声を出した。

ユアちゃんの視線の先を見ると、さきほど噂していたバイオリンコースのスギタ君がこっちに向かってきていた。

そりゃあユアちゃんも悲鳴をあげるだろう。


マジメに制服を着こなしている生徒が多い中でスギタ君はとくに目立つ。

制服を着崩して、ブレザーじゃなくお気に入りの豹柄の派手なパーカー姿。

ズボンもだらっと履いて歩くたびにジャラジャラとアクセサリーが鳴るものだから先生にも「音を鳴らすのが好きなら打楽器に転向しろ!」としょっちゅう怒られている。

髪の毛も明るい色に染めてパーマをかけているし、とにかく派手で性格も強気だ。


けれど面白い事にそれが良い方向に演奏に表れて、出るコンクールの優勝総なめという結果も残しているのだから分からないものだ。

もちろんそれはそれで先生たちにとって悩みの種ではあるんだけれど。

そんなスギタ君はユアちゃんに会いに来たのか、嬉しそうに片手をあげて目の前にやってきた。


「おー!ユア、お前また俺の伴奏なんだってな!ちょーヨロシク!!」


どうやらバイオリンコースも組み合わせを聞いたようだった。

ズカズカジャラジャラと近づくスギタ君に対して、ユアちゃんは思いっきり嫌そうな顔を向ける。


「ちょーヨロシクじゃないし!冗談じゃない。わざと早く弾くの勘弁してよね!楽譜のペース守れっての!」

「高1の頃からの腐れ縁みたいなもんじゃん?いい加減慣れろって」

「フユカ!やっぱり私、先生んとこにこれから行って直談判してくる!リツ君ととっ替えて!」

「ええー!!??やだよ!!それだけはやだ!」

「なに、ユアの友達、演奏者リツなの?」

「スギタは黙ってて。リツ君はこれから私の演奏者にしてもらうし」

「おいおい。俺の伴奏者はユアしかいねーだろ。第一、俺他のやつと合わねーもん」

「あんたが合わせないからでしょうが!」

「もぉ~二人とも、教室の前でやめなよ」


この二人のやりとりは仲が悪いのか、それともまんざらじゃないのか良く分からない。

ユアちゃんは本当にスギタ君に手を焼いているけれど、スギタ君は絶対にユアちゃんのこと好きだと思うんだよなぁ。

それにユアちゃんも、コンクールで演奏しているスギタ君はちょっとカッコイイって言ってるし。

(コンクールの服もちょっとチャラいけど、それがやたら合っている不思議……)


しかしそんな自分の気持ちにもスギタ君の気持ちにも全く気づいていないユアちゃんは今日も安定的にスギタ君を敵視している。


スギタ君を睨んでユアちゃんは言い放った。

「スギタ!とにかく今度は演奏中合わなかったらほんと辞めるし頭はたくから」

「ほーい」

「お前ほんとその返事むかつく!」

「ほら、次の授業始まっちゃうから教室入ろう、ユアちゃん」


私は今にもスギタ君に噛みつきそうになっているユアちゃんの肩をなだめて教室に押し込もうとしたら、「あ、おい、友達ちゃん」と、スギタ君が満面の笑みを向けながら今度は私を呼び止めた。

笑っていると言ってもスッキリした目元には隙があまりないような気がして、つい構えてしまう。

香水をつけているのか、ほのかに良い香りがした。


「リツの伴奏、弾きやすいって言われてるけどみんなあれでほんと満足なの?」

「……どういうこと?」


突拍子もない言葉にきょとんとすると、スギタ君はやっぱりと言ったように笑う。


「あいつの演奏ちょっとつまんなくない?そりゃ安定してるかもって思うけど、張り合いなくね?もっと弾けるって俺思ってんだけど、大人しくて無難な、弾きやすい小奇麗な演奏しかしないじゃん」

「……人と組むんだから暴走するほうがどうかと思いますけど」


私がそう答えると、ユアちゃんが私を守るようにしてスギタ君の前に出た。


「フユカの言うとおりだし。てかあんたが暴走しすぎだし」

「俺はいーんだよ、巧いから。それにどうせ組むんならつまんない演奏してた奴の、もっと別の演奏見てみたいなって興味半分なんだけど。コンクールじゃねーんだし」

「どうせあんたからすれば自分以外みんな退屈で礼儀正しい演奏ばっかりでしょうが」

「あ、分かっちゃった?」

「ほんっとあんたと組まされて最悪」

「もぉ!二人とも!……とにかく、私はレッスンどおりに試験の為の伴奏をするだけだから」


スギタ君の挑発にユアちゃんが再びヒートアップしそうになってきたから私は慌ててストップをかけた。

この2人を前にすると、もうほんと私の心が持たないよ……!

ユアちゃんを教室に押し込めながらスギタ君にきっぱりと言うと、スギタ君は面白そうに口笛を吹いて「あ、そ」と言い残して、また派手な音をさせながら自分の教室へと戻って行った。

スギタ君の姿を見届けるとユアちゃんは私に申し訳なさそうにした。


「フユカ、ほんっとにあいつがごめんね。嫌な思いしたよね?」

「うーん、スギタ君と話した事あんまりなかったし、色々と人柄の噂は有名だから大丈夫だよ」

「にしてもリツ君に対してほんとに失礼すぎ!真面目なリツ君と一緒にしないでほしいし天狗になりすぎだよね!」

「まぁまぁ、ユアちゃん落ち着いてってば。明日合わせの時にリツ君とどうせ話すし大丈夫」


ぷりぷりするユアちゃんと席について教科書を出したところで先生が入ってきた。

さっきの出来事がまるで嘘みたいに、静かに始まった授業。

ノートをとりながら、スギタ君の言葉を思い出す。


( もっと別の演奏が見てみたい……か……。なんとなく分からなくもないけれど、それを私がリツ君に求めるのは違うし、そもそも試験の為の組み合わせだし……。 )


とりあえず、これはあくまで試験の為の組み合わせなのだから、私は伴奏者としてリツ君に合わせなければいけない。

どんな演奏だろうが破天荒よりかは安定している方がずっといいもの。

それに、私は私、だ。

考えていても仕方がないと思ったところで私はやっと授業に集中しはじめた。






翌日、午後の実技授業はピアノコースとバイオリンコースのデュオ同士での練習となっていた。

課題曲である2曲のうちどちらかを決め、それぞれの曲の解釈を伝え合ってそこから練習に入るのだけれど、個室のレッスン部屋の順番が回ってくるまでの時間があるので課題曲についてリツ君と話そうと考えていた。


待ち時間で使用する大きめのレッスン室は普段使う教室同じくらいの広さで、シンプルに言えば普通の音楽室だ。

同じレッスン室は隣にもあり、どちらも室内に小さな個室が2つほど入っている。

また、その他にも廊下を出ればそれに面して個室のレッスン部屋がいくつもある。



今回の課題曲の難易度はそれほど高くなくアンサンブルを楽しむような選曲からして、きっと今回の試験で評価の高い組が春の学芸祭で演奏を披露することになるんだろう。

うちの学芸祭は学校の規模が大きいので毎年盛大に行われる。


普通科やスポーツ科は模擬店だったり出し物をメインにするけれど、音楽科の生徒は構内のホールでの演奏会が定例となっている。もちろん選ばれた生徒による演奏だ。

受験生も対象にしないでほしいのが本音でもあるけれど学校側からすると、入学して高3になればこのくらいは弾けて当たり前になりますっていう、志願者へのアピールでもあるからしょうがない。

それにしても個室のレッスン部屋って狭いし、窓がない部屋が1つだけあるのでそこに当たったら嫌だなぁ。



実はリツ君とは1年の時、委員会が一緒だった。その時はちょっとした会話をするくらいだったし、彼と話をしたのもそれっきりだからもしかしたらリツ君は私の事を覚えていないかもしれない。

それでも私の記憶のリツ君は礼儀正しくて優しかったから、スギタ君と組むよりかはずっとやりやすいに決まっている。


そんなことを考えながらレッスン室についたら既にリツ君がいた。

どうやら楽譜を読みこんでいるようだ。その真面目な姿に安堵する。

スギタ君はなんであんな変なことを言っていたんだろう。

スギタ君の昨日の言葉が一瞬浮かぶ。

けれどそれを打ち消して、私はリツ君へと声をかけた。


「あの……リツ君、今回伴奏することになりましたノギです。よろしくお願いします」


挨拶した私に気が付いた彼は楽譜から顔を上げると笑顔を作った。


だけど一瞬、私はその笑顔に違和感を覚える。

何だかぎこちないような気がする……?

妙な気持ちでいるとリツ君が挨拶を返してくれた。

「ノギさん、久しぶり。1年以来だよね。またよろしくね」


委員会が一緒だった事を覚えてくれたんだと思って正直ホッとした。この分ならいくらか話せそうだ。

しかし、口調は前と変わらず穏やかそのものながら、どこか元気がない気がした。

何かあったんだろうか。

私は様子を見ながらも課題曲について聞くことにした。


「リツ君は課題曲、モンティの『チャルダッシュ』とベートーヴェンの『春』のどっちがいい?どっちが得意とかある?」

「うーん……『春』のほう弾きたいかも。……そっちなら何とかなりそうな気がする」

「?……そっか」


そんな風に言われて、私は何となく返せなくなってしまった。

浮かない表情に『何とかなりそうな気がする』と言った理由を聞いてもいいのか、そうして戸惑っているうちに私たちのレッスンの番がきた。


リツ君と必要最低限会話を交わしてそのまま先生の指導のもと合わせたけれど、お互い『春』は弾いた事がある曲なだけに無難な演奏になってしまった。

ピアノとバイオリンの息を合わせて始めるけれど、どうしてもスッキリした始まりにならない。


リツ君の音は前に聴いた時よりどこか固く、すこし寂しそうに響いた。

私も平常心で弾いているつもりだったけれど響きが沈んでいたのか、二人して全然うたってないとまで言われてしまうほど。

……これじゃあまったく春じゃない。


ポイントをいくつかさらって最後に一度合わせた。

結局、叱られはしないものの褒められもしなかったレッスンは終わり、私たちはどこか沈んだまま部屋を後にした。


もしかしたら自分はリツ君にとってはすごく弾きにくい伴奏者なのでは……と思い謝りたくなってしまった。


「リツ君……あの、」

「今度合わせる時はもうちょっとマシにしとく。ほんとごめん」

「え、いや……私こそ……」


どうやら伴奏は問題なかったみたいだ。

けれど次回も今日のような演奏じゃさすがにまずい。

技術はたぶん問題ないのだ。気持ちが入っていなかったってだけで。

やっぱり少しリツ君と話をしたほうがいいかもしれない。


そう考えて提案しようとした矢先、リツ君のほうから急に思いもよらない事を告げられた。


「……もしノギさんがムリだと思ったら、いつでも先生に変更申し出ていいから」


……は……??


何て言ったの、いま??


あのリツ君に限ってありえない単語が聞こえたんですけど……?



何となく、挨拶の時に感じたぎこちないと笑顔とリンクした気がしたのだけれど、やっぱりリツ君の事がよく分からなくて聞き返してしまう。


「リツ君、それってどういう……」


私が言いかけるのと同時に終業チャイムが鳴り響いた。

そのせいで私が言おうとしたことはタイミングが悪かったのかリツ君に届く事なく……彼はそのまま教室から出て行ってしまった。


一体何がいけなかったのか、私とは組みたくなかったんだろうかとか、ぐるぐる考えて立ち尽くしていると、ちょうどよくユアちゃんとスギタ君が相変わらず口喧嘩しながらレッスン部屋から出てきたので、私は半ばパニックになりながら二人に泣きついてしまった。


「ユアちゃん!!!私っ、どうしたらいいの!?何か怒らせちゃったかな!?」

「おぉぅ、どした、フユカ」

「何もしてない!何もしてないけど、何かやっちゃったかもしれない!」

「ちょっと落ち着いてよ。何かあったの?」

「……ちょうどさっきリツ君と音合わせしたばっかで……そしたら急に、ムリだったらいつでも交代しても良い的な……元気もないしわけわかんなくてどうしたらいいのか……」


本当にどうしたらいいのか分からなくてパニクっていたら、スギタ君が「やっぱなぁ~」と愉快そうに笑った。

それが不快だといち早く反応したのはユアちゃんで、きつく睨まれたってどこ吹く風なスギタ君は少し楽しそうにした。


「あいつ最近スランプだから。ここんとこ実技ダメだしばっかされてっし。さしずめ、お利口さんな演奏が行き詰ってるんじゃね?」

「お利口さんな演奏……」


私が呟くとスギタ君はニヤリと笑って「ま、安定安心が一番なんでしょ」と私の心を突くような言葉をわざと残して行ってしまった。相変わらずじゃらじゃらと派手な音が響いていた。


「まったく、ほんとあいつ感じ悪い。天狗になりすぎて嫌になっちゃう」


スギタ君の後ろ姿を見ながら、ユアちゃんはレッスンが相当疲れたのかため息をついた。

それでも私たちの演奏よりもずっと完璧だったに違いない。

学芸祭に選ばれるのもユアちゃんとスギタ君なんだろうなとどこかで思った。




帰り道、バス停まで私はぼんやりとスギタ君の言葉とリツ君の様子を頭に思い浮かべていた。


お利口さんな演奏かぁ……。


それでも正確に演奏することが正解だと思ってきた私からすると、それの何がいけないのか分からない。


勿論スギタ君だって、身勝手なイメージだけれど当然ながら誰よりも正確に弾けるソリストだ。

きっと彼が言っているのは正確に弾くその先にある表現力のことだろう。

それだけ自分を楽器に乗り移らせることができるか、そういう気持ちの面での話をしているのだ。


そうなるとスギタ君は抜群に巧い弾き手だし、勝ちに行くつもりのコンクールは絶対的な凄みもあってこちらがゾクリとするほどの音を出す。

かと思えば、胸が破けそうなくらいに切なくて哀しいほどの繊細な表現力も兼ね備えているから先生が唸ってしまう理由も分かる。

けれど、そういった音をリツ君も奏でられるのだろうか。

リツ君は静謐としながらも穏やかで、深い音色が心に響いてくるような温もりを音に感じる。

スギタ君とはあまりにもスタイルが対照的すぎて、スギタ君の求めるようにはいかないとは思うのだけれど……。


……もしかしてリツ君もスギタ君みたいに大胆に弾いてみたいのかなぁ。


「……やっぱり話してみなきゃ分かんないよ」


ポツリと窓に呟くも、届いてほしい相手はどこにもいなかった。







「え?今日リツ君、学校来てないの?」


あれから二日経ち、合わせの授業前の昼休みに、スギタ君情報でユアちゃんからリツ君が欠席である事を知った。

それじゃあ合わせはほぼ個人レッスンみたいなものだなと思い、それはそれでため息が出る。

こんなことならリツ君とメッセ交換すればよかったと後悔した。

そんな私にユアちゃんは「スギタ、メッセ知ってるみたいだから聞こうか?」と聞いてくれたけれど私は首を横に振った。


「大丈夫。さすがに次回は来ると思うから、その時に改めて聴いてみる」

「……そう。リツ君、どうしちゃったんだろうね」


今日は雨だった。こういう天気の時にする演奏は、どこか重苦しいものになってしまって嫌だ。

体もスッキリしないし、頭も何だか痛んできそうだ……。


…………そっか。

その手があった。



「ユアちゃん!」

「なに?」


閃いた私はユアちゃんを引っ張って廊下の隅に行くと、祈るようにしてユアちゃんの手を握った。

珍しい私の行動に訝しがるユアちゃんをじっと見つめる。


「ユアちゃん。私、ものすご――――く頭が痛いのね」

「……そう?」

「うん。ものすごく痛い設定だから、保健室に行って早退するね」

「うん……って、は!?え、設定ってちょっと……あ。もしかして……」

「真面目な私の一世一代の嘘、合わせてくれる!?」

「一世一代って……ふっ……。フユカらしいけど。今から嘘って言ってたらだめでしょうが。ホントにするんでしょ?……早く保健室、行ってきな。で、早退届も貰ってきな」

「えへへ……」

「リツくん家、分かる?たしか電車で都心方面の路線で4駅先だったと思うんだけど、えーと、キリハラ音楽教室だったような。お母さんが講師やってるって話聞くよ」

「ありがと!……リツ君が本当に具合悪いなら諦めるけど、元気そうならちょっと話してくる」

「保健室で具合悪そうに頑張るんだよ。先生には私から話しておくから」

「うん!ありがと」


ユアちゃんと少しだけいたずらっぽく目配せをして、そのまま急ぎ気味に保健室に向かった。

保健室に入る前に緊張で高なる胸を抑えるように一度深呼吸し、意を決して嘘を演じに扉を開けた。






彼の自宅である音楽教室はスマホで調べたらすぐ出てきた。

地図を頼りに歩くとすんなりと着いたけれど……インターホンを押す指は戸惑いを見せる。

来たは良いものの何て説明すればいいんだろうと今更ながら気付いたからだ。


だってこの時間は明らかにレッスンの時間だし、早退したって言ってもどこからどう見ても私は元気そうだし……。

それに話したいって気持ちも私の一方的なもので、下手したらストーカー扱いされてもしょうがないんじゃ……。


リツ君宅兼音楽教室へと入る足が進まない。

インターホンを押す手を引っ込めて、どうしようかとウロウロ迷っていた時「もしかして、ノギさん?」と、思いがけなくも話しかけられた。


声の方を向くと傘を差した私服姿のリツ君がそこにいた。

一方の手にはお菓子の入ったコンビニの袋を下げている。

いつもきちんと制服を着てる彼しか見た事がなかったから、ラフなパーカーで洗いざらしのデニムとスニーカー姿が何だか新鮮だった。


「……どうしたの」


彼は少し怪訝そうな顔をしながらも傍に来た。そりゃそうだ突然押し掛けてきたんだから引くに決まってる。


「えっと……あの……」

「もしかして、組合せ変更したくて?」


私が言い淀んでいると、少し自嘲するようにリツ君が見当違いな事を言ったので、それがなんだか悲しくなって私は全力で否定した。


「ちがう!全然違うし!……話をしたくて、きたの!」

「話?」

「うん。……ちゃんと、話したくて……」

「……とりあえず、教室のほうで良い?今日たまたま休みだから。ちょっと待ってて」

「……はい」


リツ君は家に入りしばらくしてからまた玄関のドアを開けていざなった。

広く取られた玄関脇にすぐ通路があり、どうやら離れの音楽教室に続いているようだった。

何となく奥のリビングのほうから人の気配がする。

お母さんがいるのかな。そう思って「お邪魔します」と遠慮がちに言いながらそろそろとリツ君の後をついて行った。


音楽教室は大きなピアノに楽譜の本棚、オーディオセットに譜面台があって小さな音楽室だった。

リツ君も小さいころからここで色々教わったりもしてたんだろうか。


リツくんに促されピアノ横にある椅子に座る前に、突然尋ねた事のお詫びをした。

リツ君は「こっちこそ心配させちゃってごめん」と言ったけれど、少し素っ気ない声からして本当はそんな事少しも思ってないことはいくら私でも分かった。


「ノギさん、学校どうしたの」

「……仮病使って早退してきた」

「なんで。今日レッスンじゃん」

「リツ君にそのまま返すよ。……なんで今日来なかったの」

「風邪気味だから」

「嘘。風邪気味なら元気そうにコンビニのお菓子買ってこないはずじゃん。……本当はリツ君は私とやりたくないんじゃないの」


本当は怖かったけど、ここで濁したら来た意味がないと思い、正直に聞いてしまおうと思った。


「……リツ君こそ、組み合わせ替えたいなら先生に言えばいいじゃない……」

「そういうんじゃないよ」

「じゃあ何なの。……課題曲だってあんな言い方したし……リツ君は本当はどっちがやりたいの」

「正直どっちもやりたくない」


即答するように、そんな言葉がリツ君の口から出るとは思わなかった私は何て答えるべきかわからなくなって、黙ってしまった。


こうして見るぶんには今までのリツ君と変わらないように思えた。

品行方正そうな、礼儀正しそうな。

それなのに……なんだろう。どうしてこんなに寂しさが付きまとっているのか全然わからなかった。

リツ君は私の心を見透かしたように「俺っぽくないって思ったでしょ」とちょっと困ったように笑った。


「どうせスギタから何か聞いてるんでしょ。俺の調子があんまりよくないの」

「…………」


何も言えない私を見て、リツ君は少し自嘲したように言った。


「俺も何でうまく弾けなくなったのか分かんないよ。……俺らしいって何?

ノギさんやみんなは俺の何を知ってるの?何を思って俺らしいって思ってんの?


……スギタだって……わけわかんねぇよ」


呟くようにした最後のセリフは、自分自身に投げ捨てたようなものだと思った。

弾き手が自分の演奏スタイルでつまずくことは珍しくない。

けれどこうして迷走したまま長いスランプは本当に苦しい。

その時ふと、自分の中で何かが閃いた気がした。

私は、もしかしたら……と自分の経験から何となく感じて、思いきって尋ねた。


「……先生から、何か言われたの?」


口にした瞬間、リツ君は少し体がこわばった。やっぱりと思った。

私たちにとって指導者の一言はすごく大きいものだ。

すぐに理解できることもあれば技術やメンタルが伴わなくて苦しむこともある。

それでも自分を高めてあげられるのは自分だけだし、良いようにも悪いようにも転ぶのも自分自身なのだ。


お互いしばらく黙っていると、リツ君が観念したようにぽつりと打ち明けてくれた。


「自分の中では、すごく調子が良くなかったんだ」

「え?」


「2年最後の試験。シベリウスのバイオリン協奏曲だったんだ。

……2年の後半くらいから……あんまり調子がよくなくて。弾き方が分からないというか……音符をなぞっているだけに思えてきてて、その時はいつもより気持ちがすごくざらついてたのは分かってた。だから弾きながらもすごく嫌で、終わった後も自分の中ですごく気持ち悪かったんだ。なのに、先生の一言は違ってたんだ」


「……褒められたの?」


「“リツ、お前もやればスギタみたいにさらけ出せるんだな”って。その次の時は調子が戻っていつもの自分で弾いたんだ。そしたらダメだった時とは一転して……なんかそれで、俺、自分の弾き方が分かんなくなって」


「……そうだったの」


「その後から何だかどれ弾いてもだめで、そしたら皆言うんだよ。『俺らしくない』って。……何が俺らしいのか、俺が聞きたいっての」


そう言ってリツ君は下を向いた。


きっと調子が悪いと言ったって、多分普通の子よりかはずっと上手な弾き手なのだ。天才型じゃないかもしれないけれど、努力で自分のスタイルを作り上げてきたに違いない。

正直、目の前のリツ君は他の子の評判通りでもなく、いつも廊下で見かけたりするような安定している様子でもなく、見た事のない彼だった。


……でも、だからってこのまま沈んでも、リツ君はますます落ち込んでしまうだけだ。



「リツ君。……ピアノ、使わせてもらえる?」


「え?……別に大丈夫だけど……何?暗い曲とか弾くんだとしたらやめてよね。マジでどん底になるし」

「違うよ。一緒に弾こう。どうせ自分のバイオリンのスペアくらいここにしまってあるんでしょ」

「そりゃあるけど……本気で言ってんの?」

「本気。大マジ。こうなったらウサ晴らしで思いっきり弾き飛ばすしかないじゃん。それにサボったらその分だけ忘れちゃうんだよ。どうせ学校以外じゃろくに触ってもないんでしょ、バイオリン」


図星だったのか、リツ君は返事をしなかった。

それでも棚に置いてあるケースに手を伸ばしたのだから、了承してくれたと思って私はピアノの前に座ると鍵盤蓋を開けた。



「リベルタンゴ、できる?」

「できるし一応暗譜もしてる。楽譜あるけど出そうか?」

「言いだしっぺだから暗譜くらいしてますー。ちょっと前まで練習してたし」


さすが音楽教室の息子で音楽科きっての優秀成績者だ。

きっと他にもたくさん色んな曲が弾けるんだろうな。

私は軽く指をさらっていたら、チューニングしているリツ君がどこかホッとしたような感じで言ってきた。


「なんかノギさんにしては意外。もっと王道なの弾くイメージ。バッハとか」

「本当?バッハ、難しくて好きじゃないんだけど弾くと評価高いんだよね。シューマンとか好きだけど、私ほんとはモーツァルトが好き。音が遊んでるみたいで楽しくなってくるから好きなの」

「へぇ。たしかにモーツァルトって調子っぱずれなやつとかあるから面白いよね。……バッハと言えばスギタが何気に上手いんだよな。ああ見えて」

「ああ見えて、って言葉すごく似合うよね、あの人。じゃ、弾くよ」

「どうぞ」


一呼吸置いて、弾きはじめる。

勢いに乗って、流れるように、なめらかに。それでいて激しく鮮烈に。


一人で弾く分には何とかできるようにはなったけれど、人と合わせるなんて初めてだし呼吸が合うか内心不安だった。

けれどリツ君はそんな私の緊張に気付いたのか、力強いながらも落ち着いた深い音色で合わせてきた。


ジャズ色の濃いこの曲はリズムが独特だ。

リズムを追いかけ過ぎて走りそうになる私の音を、支えるように響くリツ君の音はやっぱり安心感があると感じた。そしてやっぱり弾き手としては巧いなとも。

けれど、もっともっと奥にあるリツ君の気持ちを見せてもらえたら。

良い部分も、悪い部分も。


その拍子にリツ君と目が合った。

まるで合図みたいに、どちらともなく試すような気持ちになる。



もっと、 もっと、 もっと。


求めるような気持ちで弾くと、リツ君はいつもと打って変って、エッジをきかせるように音を轟かせた。

しなやかながらも激しい弓の運びに、私も負けたくないと思う。

入り混じる主旋律。一人で弾くよりもずっと集中した。


ほんの5分くらいの曲だけどすごく濃厚で濃密だ。

本当はこの曲はユアちゃんが得意な曲だ。

リズムが難しくて、ユアちゃんの演奏を聴きながらいつか私も挑戦したいと思っていた。

けれどそれを合わせる相手がリツ君だなんて考えた事がなかった。


弾きながらもこんな状況信じられないし、人の気持ちを抉り出そうとする演奏も初めてだし相手もそれに応えてくれる。

それなのに、こんなにも楽しいなんて。

そして彼も自分の気持ちをすごく乗せて演奏している。

この間の合わせとはまったく別の人みたいだ。


こんなにも、強く、叫び出すように、そしてどこか色っぽいような音色を紡ぐなんて分からなかった。


この勢いで弾き終えてしまいたいような、まだ弾き終わりたくないような。


自分の心が燃えるようだ。


そんな風に思えるのは初めてだと思いながらフィナーレへ向かった。







全て弾き終えると、お互い心が飽和状態なのか言葉がすぐに出てこなかった。


リツ君も少し興奮しているのか頬が赤く上気している。

私も気持ちは今すぐにでも口から飛び出しそうなのに、何て伝えたらいいのか分からない。

単純だけど、音楽一つでこんなにも気持ちが動くなんて不思議だ。


いくらか胸を落ち着かせると私は立ち上がってリツ君と向き合った。

落ち着かせると言っても充分に胸はドキドキしていたけれど。


「リツ君、すごいよ!私、気持ちが先走り過ぎてミスタッチしちゃったけど……でもなんか、すごかった!あとやっぱりすごく上手だね」

「いや、俺もなんか、びっくりした……前にも弾いた事はあるけど、今日のほうが全然良いっていうか」

「ほんと?私は人と合わせるのは初めてだけど、すごく良いなって思ったかも」

「……俺今まで自分の演奏に対して、どこかつまんない音だなって正直思ってたりしたんだけど冒険できたっていうか……」

「そんなことない!リツ君の音はつまんなくなんかないよ!」


リツ君の言葉に、私は弾かれたように反論した。

だって、本当に私にとってはつまんなくないし、リツ君がそんなことで自信を失っていたら本当に勿体なさすぎる。

私はたまらずに打ち明けた。


「私、高1の時の主席入学者の演奏でリツ君が弾いてたの聴いて、すごくドキドキしたの。上手さにも驚いたのはもちろん、なんていうか……音に艶があるっていうか……本当にドキドキしたの。ほんとだよ。『タイスの瞑想曲』、今でも覚えてる。伸びがあってどこか甘くてで……照れくさいけれどいつか伴奏できたらってずっと思ってた」


好きだと告白しているわけではないのに、まるで好きだと言ったのと同じようだと思った。

そんな私にリツ君は少し照れくさそうにして、それでも逸らすことなくわたしの目を見て伝えた。


「……俺、今のノギさんとの演奏、ものすごく楽しかった」


「……私も。……ありがとう、リツ君」



その言葉だけでものすごく嬉しいのに、リツ君は私に手を差し出した。握手だ。

私も手を差しだそうとした。

そうしたらいきなり部屋がノックされて、思わず二人して手を引っ込めた。


間もなくドアがあくと、何とも優しそうなリツ君のお母さんが入って来た。

片手にはジュースが入ったグラスを乗せたトレーを持っている。

私は驚いて、思わず姿勢を正して恐縮しながら頭を下げた。


「あの、すみません。勝手にピアノ使用してしまって。……私、」

「ノギさん、でしょう?リツから聞いてます。リツがお世話になっています。ピアノのことなら気にしなくて大丈夫よ」

「いえ、本当に勝手してしまいすみませんでした」


リツ君のお母さんは印象に違わず、穏やかな声で優しく微笑んでくれた。

私のピアノ教室の先生はちどちらかというと厳しいタイプだから、リツ君のお母さんは絵にかいたような「ピアノ教室の先生」といった柔らかな雰囲気で、ピアノの先生には色んなタイプがいるんだなぁと感じた。


ドリンクをミニテーブルに置くとお母さんは、「リベルタンゴが流れてきたからビックリしちゃった。あんなリツの音、初めて聴いたから廊下で立ち聴きしちゃった」といたずらっぽそうに笑ったものだから、思わず力が入っていた私の肩がゆるんだ。


リツ君はというと、照れからか少し居心地悪そうだ。

見た事がない表情に、何だかそれも新鮮だ。


「ピアノの先生にそう仰ってもらえると嬉しいです。でもリツ君が本当に上手で、リードしてくれたので私は何とかついてけたって感じですが……」

「そうかしら。どっちかっていうとリツのほうが音に焦りがあった気がしたんだけど」

「母さん!」

「やだ、何か照れてる?……でも、二人とも息ぴったりだったわよ。今度の課題曲なの?」

「課題曲じゃないよ。……課題曲はベートーヴェンの『春』だし」

「あら、じゃあ今度は軽やかに踊らなくちゃね」

「え?」

「さっきのはタンゴだったから、今度は手を取り合ってダンスするように弾けば大丈夫よ。二人なら」


手を取り合って踊るように奏でる。


お母さんの頬笑みに、私たちは何となく顔を見合わせた。

きっと私は呆けた顔をしていたに違いないのに、どうしてかリツ君は耳まで顔を赤く染めた。

その一瞬の出来事がまるで魔法みたいで、それが伝染したのか何だか私の頬も熱く感じ、思わず顔を逸らしてしまった。


リツ君はお母さんに「飲み物、ありがと!あとでノギさんのこと駅までちゃんと送ってくから。課題曲の事で話したいからちょっと出て」と言って、部屋から追い出すように背中を押しはじめる。

お母さんは「え、ちょっと」と興味津津のようにしたげだったけれどリツ君の勢いに負け「良かったらまたうちに遊びにきてちょうだいね」と私に笑いかけてくれ、部屋を後にした。


「なんか、母さんがゴメン」

「いやいや!私のほうこそ勝手にスミマセンって感じだし」

「俺、明日はちゃんと学校行くから。……本調子じゃないけど、頑張るから」

「……頑張るって言うより、私はそのまんまのリツ君の音で伴奏したいよ」

「え?」

「調子が良くても悪くても、今のリツ君なんだから。だから、大丈夫だよ」

「ノギさん……」

「それにね、『春』ならわりと得意なの。それこそ、手を取ってエスコートするよ」

「ぷっ……」

「え!何笑ってんの?リツ君の話をしてるのに~」

「ごめんごめん。いや、俺情けないなって思って。なんか、演奏でちょっとふっきれたかも」


笑いだしたリツ君は、とげとげしさも寂しさもなかった

そしてひとしきり笑った後に優しく微笑んで、素敵なお願いをしてくれた。


「ノギさんさえよかったら、『春』、一回合わせてもらえないかな?」

「……もちろん!」


今なら、この間の演奏が挽回できそうな気がした。

私が即答するとリツ君はほっとしたのか、よりいっそう笑顔が柔らかくなった。

それを見て、胸の奥がじんわりと熱を持つようだった。


そうだ。私は、この笑顔が見たかったんだ。


本当にふっきれたかは分からないけれど、リツ君が自分のバイオリンを諦めてしまう事が私にとっては一番悲しかったから。

だってずっと一緒に弾く事が出来たらっていう、誰にも話した事のない憧れだったから。


私は笑顔を抑えきれず再び鍵盤の前に座り軽く指をさらいはじめる。

けれどそのとき、何故かちょっとした疑問を思い出した。


「なんでリツ君のお母さん、すんなり私の事わかったんだろう」

「え。」

「私の事、聞いてますって」

「……えーと……それは、課題の事話してる、から」

「でも、リベルタンゴかって聞いてきたし……あ!!もしかして!」

「の、ノギさん、べ、別に変な意味とかじゃなくて……!」

「ピアノの先生ってくらいだからどこかの発表会とかで聴かれてたりしたのかな!?え、だとしたら恥ずかしい!自信満々に弾いちゃってたし!!」


自分の中でほぼ確信かと思ってリツ君に確認しようとしたら……無言だった。

ますます不安になる。


「違う!?」

「……ノギさんが天然でよかった……」

「え?何が?」


私が頭に?を浮かばせていると、リツ君は何事もなかったかのようにバイオリンを肩に当てながら小さくため息をついた。


「……何でもないです。さ、準備できた?」

「何でもなくないよー!え、天然てどういう事?」

「ほら、もう始めるよ」

「元はと言えばリツ君が原因なのにー!」



そう言ったところで、窓から光が差し込んだ。

いつの間にか雨が上がっていたようだ。

ピアノの黒いボディにオレンジの光が反射している。部屋がだんだん夕陽色に染まっていって、何だか綺麗だなと思った。

窓の向こうには、雨露で濡れた庭木がぴかぴか光っていた。



そして、差しこむ西日のおかげで照れた顔が分かりづらくて良かったなんて、

そんな風に思っていた事をリツ君から教えてもらえるのは、まだもう少しだけ先のお話。




(  さぁ、今度は僕が魔法をかけてあげれるように精進させていただきます  )



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