scene49*「仲直り」



俺は、ちょうどいいと思ってるんだけどね?

お姫様は納得いかないみたい。



【49:仲直り 】



急に余所余所しくなったと思ったら、突然、鳥のから揚げを毎日お弁当にいれるようになったり、大嫌いなはずの牛乳をまずそうな顔しながら無理に飲んでみちゃったり。

あと、休み時間のたびになんか両手を胸の辺りで押し合って力んでたり。

巨乳の女の子に話を聞きに行ったりして……。


あぁ、そういうわけね。わかってないなぁ。

彼女の最近の不可解な行動を思い出して、点と点が繋がった。

ま、その原因は俺なんだけど。


『俺さ、実は巨乳すきなんだよねー』


休み時間にクラスメイトのやつらとそんな話をしていて、ヒナは違うクラスだしまさか廊下で通りかかってたなんて思いもしなくて、だけどその日からヒナはある行動に出始めた。

そう、それがさっきのやつ。


うん、ぶっちゃけ俺巨乳のほうが好みよ。

男には無いからきっと恋しいんだろうなぁ。

あのむにゅむにゅした何ともいえないのが、しかも大きいサイズなんて触りたくもなるだろ。

一度は顔埋めてみたい!とか思う俺はひょっとして馬鹿か?いや、でもロマンだ!


でも夢は夢、現実は現実。

現実のほうで満足してたら夢で言ってたことなんて、ぶっちゃけどうでもよくなるんだよ。

ヒナはまぁ、おっきいほうじゃないけど、かといって貧乳なわけじゃあない。

俺は隣で頑張ってパックの牛乳を飲んでいるヒナの胸元を、ちょっと見た。

巨乳はあくまで男の理想、ロマン、夢。

だから、本気で好きな女の子ができたら、それってどうでも良い事なんですよヒナちゃん。


そろそろ、ちゃんと言ってあげないとまずいかな。


嫌いなのに無理してまで牛乳を飲ませるわけにはいかないし。

あ、だからよく「甘い」って言われるのか。



「ヒナー。牛乳嫌いって言ってなかったっけ?」

「……成長にはカルシウムが必要でしょ」

「毎日鳥のから揚げ食べてるとお腹に肉がつくよ」


お腹に肉がつくという脅し文句にビクっとさせながらも、強がりな顔をしながら口をとがらせる。

だけどこれは俺の嘘。ヒナは細いほうだから逆にちょっとついたほうが抱き心地はもっと最高なんだけど。


「ダ、ダイエットしてるからいいもん」

「ダイエットすると胸も痩せるって分かってる?」


そう言うとヒナはバッと顔を赤くして立ち上がった。

その拍子にちょっとだけパンツも見えてしまって(お、ブルー)なんて思ってしまった。


「し、知ってたの!?つか知ってて言ったよね今の!!???」


「バレバレ。ヒナ~……だからあれはごめん。あくまで理想論だって。あくまでファンタジー。あくまでフィクションですってやつ」


「……もぉ!わかってるよ!!……それくらい」

「え?じゃなんで」

「もぉ!察してよ馬鹿!乙女心だっつーの!」

「てことは……ひょっとして俺の理想に近づこうとしてくれたわけ?」

「そう言うこと言わないでよ~~……っ。恥ずかしい……」


やばい。かわいい。ちょうかわいい。

頬の緩みがとまんない。


「ないよりかは、あったほうがいいでしょ」

「俺は無いなんて言ってないじゃん」

「ないんだってば!」


女の子って変だ。

女の子の思考は男の子の理想と真逆の事をする。

女の子は細くなりたい、細いほうがいいって言う。

でも男からすると多少ぽっちゃりした方が女の子らしくて可愛いと思う。

女の子は綺麗な人を目指す。

綺麗って言われたいって言う。

でも男からすると、綺麗も捨てがたいけど「可愛い」ほうが好きだ。

たとえ大きいと言えるような胸じゃなくたって、本人がいくら「無い!」って言っても俺からすると充分だ。



俺はにっこり笑ってヒナの手を引いて、すっぽり収まるように抱きしめて言ってやった。



「見た目は、まぁでかいほうがいいかもしんないけど、でも触り心地に関しては手の平サイズのほうが、俺としては好きなんだけど」




そんなわけでこの瞬間から、ヒナの努力はあっけなく終わりましたとさ。




(  正直に言った結果です  )

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