scene48*「テレビ」
チャンネル争いは、仲良くしたいものだと思う。
【48:テレビ 】
「あ」
思わず眉間に皺が寄る。
何故なら、ちゃんと見てたのにテレビのチャンネルを勝手に変えられたからだ。 私はすぐにトモキに抗議する。
「見てたんだけど」
「え、だって雑誌読んでんじゃん」
「それでも見てたのに」
誰だってそういう時あるはず。
確かに雑誌のほうに集中してるから、テレビをちゃんと見てたわけではないけれど……それでも私はムキになってふてくされた。
トモキは、やれやれ、といった表情。
それでも番組を元に戻すことはせず見続ける。
しばらくたって、私は雑誌を読むのをやめて一緒に見始める。
お笑いの頂点を決めるバラエティ番組だった。
芸人の出すネタで、どっと観客がわく。 だけどトモキはちっとも面白そうに見えない。
……そう、面白くてもトモキは馬鹿みたいに大笑いしない人なのだ。
だから知らずにもし今チャンネルを変えてしまうと、きっとこう言うはずだ。
「なんで変えるんだよ。せっかく面白かったのに」
それならふきだすなり何なり面白そうなリアクションくらいしなさいよ、と言いたくなる。
最初の頃はちっぽけな事だけどその「チャンネル争い」でよくケンカしていた。
まぁ1年前の私ならすぐに意地になって自分の見てた番組に戻した事だろうけれど、今となってはさすがにしない。
それに どう考えても雑誌を読んでテレビも見てるなんて、明らかに私のほうが不利でもあるし。
お笑い番組を見始めてだんだん面白くなってきた私は、普通に笑い声をあげる。
すっかり夢中になってしまったところで、視線に気がついた。
ケラケラ笑う私を見て、トモキが笑っていた。
笑うというか、微笑みながら笑う私を見つめていた。
それに何となく恥ずかしくなって、私はじっとりと睨んでみる。
「ちょっと、なに人を見てニヤニヤしてんの」
「ニヤニヤしてないって」
「笑うならお笑い番組見て笑いなよ」
「いや、番組変えてよかったろ?」
「はぐらかさないのー」
「楽しそうなお前見て、そう思ったんだよ」
丸め込まれてしまったその一言。
その後、トモキの傍に体を寄せていったのは言うまでもないハナシ。
( つまるところ、あたしたちは仲が良いんです )
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