Act3,トーキョー・ドーゲンザカ

 いろんな事をきっかけに夜腕を手に入れたボクと彰宏君と黎香ちゃん。いつもの様にネガシャドウを見つけては倒す日々。彰宏君と黎香ちゃんは何も気にせずネガシャドウ退治をしているけど、ボクはこの能力を持つにあたって不安なことがあった。それは『夜腕とネガシャドウの情報が不十分な状態のまま戦って大丈夫なのだろうか?』ということである。陽介さんに簡単なことしか教えてもらえてない状態で手に入れたボク、オカルト誌からの知識のみでやってる彰宏君、そして何故か持ってる黎香ちゃん。実力は十分でも知識が薄い(一人は無い。)からこの先いろいろ心配だ。

 翌日、二人を呼んでこの事を話してみた。

「言われてみたらそうだな。俺もほとんど知らずに振り回してるから何かあったたらヤバいなって考え、分かるぜ。」

「難しいこと覚えるのは苦手だけど、玲二君の言う通りある程度知っておく必要あるかもね。」

 二人とも同じことを思っててくれて少し安心した。気にしないって人がいたら話が進まないし、この先にも支障が出るからね。この話の流れでボク達は彰宏君の家でオカルト誌のバックナンバーを読み漁り、夜腕のことを少しでも知ろうとした。そうして数時間後、すべて読み終えたが街で見たネガシャドウの情報がほとんどで夜腕のことは陽介さんが言ってた変身法や所有者の目撃写真しか載っておらず、有力な情報を得ることが出来なかった。今日のところは諦めて帰ろう。これからどうしようか考えながら歩いてると、

「ん?おーい!」

 どこかで聞き覚えのある声がする。声のする方を向くと陽介さんがいた。

「久しぶり!元気してた?」

「はい、それなりには。今日も営業ですか?」

「そうだね。ちょうど終わって今から帰るとこ。君も帰りか?」

「はい。実は今日…」

 ボクはこれまであった事と今日の事を陽介さんに相談した。

「なるほどなー…この辺でネガシャドウの目撃が減ってるのはそういうことか。それと夜腕のことをもっと知りたいか…確かに子供が容易く手に入れていい能力ではないけど、持ってしまった以上はいろいろ知るべき必要があるな。んで、オカルト誌読んで情報を掴もうとしたの?…だったら直接聞いてみる?編集部に?」

「えっ!?聞けるんですか!?」

「聞けるよ。俺そこの編集長と飲み友達だし、夜腕のエキスパートでもあるからいい話聞けるかもよ?よかったら俺からこの事言っとこうか?そんで交渉成立したら編集部連れてってあげるよ?」

 思わぬ形でチャンスがやってきた。オカルト誌に載ってない夜腕事情をいっぱい聞き出せるいい機会かもしれない。陽介さんと連絡先の交換と交渉のお願いをして家に帰って吉報を待つことにした。その夜、陽介さんからLINEが来た。どうやら編集部との交渉が成功したようだ。来週の日曜日に来てほしいとの事で、そこまで陽介さんもついてきてくれる。普段の仕事だけでなく、ネガシャドウ退治や交友関係、陽介さんどんだけ有能なんだ…そう思いながら彰宏君と黎香ちゃんにも連絡しておいた。彰宏君はちゃんと来てくれそうだけど黎香ちゃんは絶対すっぽかしそうだから面倒だけど朝迎えに行こう。

 そして当日、みんなと集合しようと思い、家を出ると彰宏君が待っていた。案の定黎香ちゃんは寝坊していたので迎えに行くことに。本人は「ごめん!」と何度も謝ってるが、ほぼいつもの事なので「あ、反省してないな。」って思ってしまう。数分後、陽介さんが車で迎えに来てくれたのでそれに乗り込み編集部のあるドーゲンザカへ向かう。


 ~ドーゲンザカ~

 落ち着いた住宅街であるキチジョージと違い、オフィスや飲み屋が集合した働く大人の街。仕事出上手くいかない人にネガシャドウが取り憑きやすい街でもある。

「こんちゃ~っす。モト君ごめんね時間作ってくれて。」

「いいよいいよ。能力者からいろいろ話聞けるんでしょ?いーじゃない。」

「編集長、じゃなくてんだが?」

「おっとごめんごめん。」

部屋に入ると陽介さんとメガネをかけた陽介さんの友人っぽい人と外国人らしき女性が楽しく会話を盛り上げる。

「紹介するよ、こっちがこないだ言ってた編集長の豊元元就とよもともとなり、でこっちが…」

「クロエ・アランソンだ。元米軍だったが、いろいろあって今はここで働いている。よろしく。」

「みんなのことは陽介からいろいろ聞いてるよ。まぁ立ち話もアレだし、座ろ?」

編集長に言われるがままにソファーに座るボク達、まずネガシャドウの事を聞いてみた。

「ネガシャドウは自然に湧いて出てくるタイプと人工的に出てくるタイプがいるのは知ってた?自然的なのは動物とか壊れた物の邪念から生まれてくるやつ。人工的なのは自然的とちょっと似てる所もあるんだけど生きてて深く傷つくことがあったりものすごく怒りたくなったり、とにかくネガティブになることがあるよね?その負の感情から生まれるのが人工的ネガシャドウなの。残念だけどネガシャドウを完全に撲滅するのは不可能なんだよ。ネガティブな感情から生まれてネガティブな人や物に寄生しておっかない存在に生まれ変わる…その後夜腕に倒されても元に戻れる保証が無いに等しいんだ。ずっと意識不明になるかあるいは死…あんまり考えたくないだろうけどこれが現実なんだ。」

次に夜腕の事を聞いてみる。この質問にはクロエさんが答えてくれた。

「ネガシャドウの力は極めて強大で取り憑かれたらひとたまりもない。しかしネガシャドウにはどうしても勝てない『最大の弱点』がある。それは『それを超えるポジティブ』だ。聞いてる限り簡単な事かもしれないが、ポジティブの強さには個人差がある。自分はすごいポジティブだと思っていても取り憑いたネガシャドウの強度もそれぞれ違うから必ず勝てるとは限らない。負けた場合魔物になってしまい、仮に君達のように勝てた場合、取り憑いたネガシャドウは力を残し死んでしまい、姿を変えるそれが夜腕だ。どんな姿、能力になるかは手に入れるまで分からない。その能力が使える時間は、夜の七時から早朝五時までだ。これはネガシャドウも同じでその時間外は夜腕は使えないし、ネガシャドウも活動できなくなり姿も見えなくなるんだ。それにこの能力の消し方はまだ判明されていない。手に入れたからには一生この能力と向き合わないといけない。これが夜腕だ。」

ネガシャドウも夜腕も実に興味深い細かい話を聞くことができた。本題はここからだ。

「で、君達は夜腕を手に入れたけど自分の能力を把握しきれてないんだっけ?」

編集長の質問にボクが答えた。

「はい。これからもネガシャドウと戦っていく、その上でもっと心も力も強くなってみんなをネガシャドウから守れるようになりたいんです!」

「玲二、俺も同じことを考えてた。そういう面で強くなれるならいろいろ教えてもらいたいぜ!」

「私も大好きな友達のために…夜腕を使いこなせるようになりたい!」

ボク達の夜腕に対する気持ちは強かった。それを聞いた編集長とクロエさんは納得したのか、こう言った。

「んー、話は分かった。これに関しては話すよりやった方がよく分かるはずだから、夜の七時前にまたここに来てくれる?」

「遅刻厳禁だ。陽介、お前にも付き合ってもらいたい。」

「え?俺も?…しょーがないなぁ。分かったよ。ガキンチョ達のためだ、俺も一肌脱ぐか。」

編集長のこの提案…一体何をするのだろうか!?

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