Act2,トーキョー・キチジョージ
不思議な能力『
「玲二くーん!」
「おはよ、黎香ちゃん。今日は寝坊しなかったんだね。」
「うっさいなぁ。私だって遅刻したくてやってるワケじゃないんだって。」
彼女は
「昨日うちの前で何やってたの?戸塚君と二人で。」
「戸塚?」
「別のクラスの同級生だよ。あの前髪立てらせた人ね。二階から様子見てたんだよ?それで何してたの?教えてよ。」
言えるわけがない。バケモノと戦ってたとかヒーローになってたなんて易々と言えない。
「教えてよ?誰にも言わないからさぁ。」
こういう人に限って口が軽いと思う。何があっても教えるわけにはいかないぞ。そう感じたボクはとにかく断りまくって黎香ちゃんを説得させた。
学校に着いたボクはいつもの様に授業を受け、休み時間にラノベを読み、お昼は一人で購買部の弁当を(たまに黎香ちゃんと)食べた。午後の授業、僕が普通に受けてる後ろで黎香ちゃんがいつもの様に居眠りしていた。この後高確率でノート貸して!て言われるので渋々貸してあげている。
そして放課後、帰宅部なのでそのまま帰ろうとした時だった。
「ちょっと待ってくれよ。」
どこかで聞いた声がする。後ろを振り返ると昨日ボクが助けた人がいる。彼が黎香ちゃんが言ってた戸塚なのか?
「やっと見つけたぜ。なに、昨日助けてくれただろ?礼が言いたくてな。それと昨日のアンタのアレについても聞きたくてよ。」
「礼なんていいよ。苦しんでる人を放っておけなかっただけだし、それとアレについてはどうしても言いたくないんだ。」
「アレって夜腕だろ?」
「!?」
なんで夜腕を知っているんだ!?この事はボクと陽介さんとしか知らないはずだ。確かに昨日彼はボクの腕を見た。それを夜腕と知ってるのは何故だ?僕が聞こうとした時だった。
「ここじゃ話しにくいだろ?場所変えねぇか?」
そう言われ、ボクは人通りの少ない場所に彼と移動した。
「自己紹介忘れてたな。俺は
「えっと、一ノ瀬玲二…よろしくね?戸塚君。」
「君付けやめてくれよ、なんか気に入らねぇんだ、個人的に。」
「でも、ボク呼び捨てするのがどうもできなくて…それよりもさっきの、どうして夜腕を知ってるの?」
質問すると彰宏君は、バッグから一冊の雑誌を取り出す。どうやらオカルト誌のようだ。そしてページをパラパラめくってある誌面を見せてきた。
「夜腕関連の特集がこうして毎月載ってるんだ。ネガシャドウとか、関連事件とかな。それで昨日のお前を見てピンときたんだ。安心しなって、誰にも言わねえし、言ったとしてもみんなピンとこねぇよ。んでお前に折り入って頼みがあるんだ。俺に夜腕の手に入れ方を教えてくれ!」
この頼みに答えられない。気持ちは分からなくないが、一歩間違えたら死んでしまう事だってあるんだから。でも本気で頼むってことは何か深い理由があるのだろう。質問すると彰宏君はさっきより真剣な顔になってこう答えた。
「昨日のネガシャドウ、俺一人でも倒せると思った、でもあの時お前が助けに来なかったら俺はバケモノになってたかもしれないだろ?もう真人間に戻れなくてもいいから戦って借りを返してぇんだ。俺も一緒に戦いたいんだ!」
こんなに熱い思いを持ってたなんて知らなかった。でもやっぱり彰宏君を危険にさらしたくない。…ごめんね、彰宏君。
その日の夜、ボクは疲れていたから早めに寝ようと部屋のカーテンを閉めようとした時だった。
「あそこにいるのは彰宏君?何かを探してる?…まさか!?」
そのまさかだった。向こうからネガシャドウがやってきた。それに対して彰宏君は逃げようとしない。本気で夜腕を手に入れたいようだ。でもこれで失敗したら…ボクは彰宏君を止めようと外に出ようとした。しかし玄関を開けたとき、すでに取り憑かれていた。間に合わなかった…と思ったら彰宏君の様子が『違う意味で』おかしい。
「彰宏君!」
「へへっ、見てろ玲二…俺にもできるってとこ…証明して…ぐぅっ‼」
「待ってて!今助けるよ!」苦しんでる彰宏君に反応したのか、周りのネガシャドウが近づいてくる。このままだと危ない!
「お前にばっかいいかっこされてたまるかよ…俺だってお前みてぇにかっこつけたっていいだろ…それに恩を返さねぇのは罰当たりだろぉがぁぁぁ!!!!」
絶叫とともに彰宏君の身体が変貌していく。まるで狼男のようだ。そしてその左腕でネガシャドウを一振りでまとめて切り裂いた。
「…これで文句ねぇよな?俺もお前と同じように戦えるぜ!」
「彰宏君…無茶しすぎだよ…けど心強い味方ができてうれしいよ!残りも一緒に倒そう!」
「おう!いくぜ!相棒!」
「えっ?」
一瞬戸惑ったけど、『相棒』…いいかも!夜腕を手にした彰宏君といっしょにネガシャドウを掃討することに。一体ずつ的確に倒すボクと多少荒っぽいけどまとめて切り裂く彰宏君。やり方は違えどうまく倒せている。ボク達二人ならどんなネガシャドウが来ても勝てる気がする!
そうこうしてるうちにすべてのネガシャドウを倒すことに成功した。
「ケガはない?」
「俺はこのとおりピンピンしてるぜ。…にしてもすごいなこの腕、昨日の俺じゃ触ることもできなかったバケモンを倒すことができるもんなぁ。よし、決めた!玲二、俺もこれからバケモン退治協力するぜ!よろしくな!」
「うん!」
ガッチリ握手をして終わろうとした時だった。
「おりゃー!あっちいけー!」
向こうから聞き覚えのある声がしたので二人で行ってみた。そこには見覚えのある…というか完全に知り合い…なんで黎香ちゃんがネガシャドウ倒してるの!?なんで夜腕を持ってるの!?えぇっ!?
「ふぅ、これで終わったね…あれ?二人ともこんなところで何してるの?」
「ね、ネガシャドウ退治。ね?彰宏君?」
「俺たちも夜腕持ってるんだ。てかなんでお前も持ってるんだ?」
すると黎香ちゃんは笑顔でこう言った。
「えっと…ナイショ!」
いい感じにネガシャドウを倒したはずのボク達、しかしこのような形で新しい夜腕使いの黎香ちゃんと出会ったことでさっきの達成感がどこか飛んで行ってしまった。黎香ちゃん、ネガシャドウを消滅させるのはいいけどボク達が作ったシリアスな展開まで消滅させないでよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます