6. 出動 — Taking the field

 散乱するガラス片/粉々に砕かれたオフィスのデスク/サイレンを鳴らした警察のガソリン車。

 市内に広まりつつある新種の麻薬—幸福感と引き換えに身体の部位を一時的に変化させる薬—変異性多幸薬ミュータント・ピル—の出所を調査中だった09従事者への恐喝=一発の銃弾。

 標的の代わりに粉々に砕かれたオフィスのウインドウを前に首を振る男=ドクター・イースター。

 デスクを砕き、そのままエントランスの床に突き刺さった銃弾を確認する男=ディムズデイル・ボイルド。

 銃弾=ヘルファルト社製の十二・七ミリ×九九ミリ弾。狙撃用ライフルで一般的に使われる弾丸。

 弾丸がディムズデイルに呼び起こすもの=遠い記憶/燃え上がる炎/耐えることのできない刹那の快楽と、その後に訪れた絶望の日々。

 目を閉じて苦い思いの残像ビジョンを振り切り、なすべきことに集中する。弾丸の発見位置とウインドウとデスクの破壊状況から射線は既に解析済み。狙撃ポイントの特定に成功。マルドゥック市郊外の廃ビル。

「まさか。ありえない。あそこからどれだけの距離があると思ってるんだ?」

 ドクターの言葉を尻目に、一人と一匹はエア・カーへと走る。

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