第3話 闖入者
「どうした、『メアリー』?」
「お久しぶりね、『夜空』! 今日はみんなでお食事なの?」
現れたのは、太陽を思わせるような眩しい笑顔を3人に向ける少女『メアリー』。まだ幼く見える彼女もまた、『夜空』たちと同じく物語である。ただ、その性質上少女とその手を引く中年男性のふたりが揃った姿で顕現しているところは、ある意味で特殊とも言えた。
「あぁ、まぁな。『徒花』の姐さんがもう沈みきっちまってよ……、ってか『メアリー』、その展開を誘導するってのは何だ?」
「そうねぇ……、えっと、おじさん、説明してくれる?」
『メアリー』の輝きに満ちた瞳を向けられて、「あぁ、わかったよ」と応じたのは、通称おじさん。物語の擬人体という本来の在り方に沿えば彼もまた『メアリー』と呼ばれるべきなのだが、少女の『メアリー』と区別するためにおじさんが通称になっている。
そのおじさんが語るには……。
「と言っても私たちにできることはあまりないからね、大したことは言えないよ? だけど、話し方を意識してみることかな、と思うんだ」
という、非常にあっさりしたもの。
どういうことかと尋ねる『徒花』。彼女にとってはこの問題は自身のメンタルを保つ上での死活問題のようなものだし、それを解決できるのなら願ってもない話だった。
「どうやら、書き手――と呼べばいいのかはよくわからないけれど、書き手はかなり行き当たりばったりな進め方をしているようだ。
実際に書いてみてから、『この話し方をする登場人物ならこういうことをしそうだ』だとか、『それならこの展開の方が面白くなるかも知れない』だとかね」
「………………」
思わず目を丸くする一同。
メモを取る『徒花』に、「そういうもんかな」と
その様子に決まり悪そうに「あくまで可能性の問題だけどね」と頭を掻くおじさんに対して、『メアリー』の方は「これわたしたちで考えたのよ、凄いでしょ!?」と得意げに微笑んでいる。
「どうすんだ、姐さん? もしやるんなら手伝いくらいはするけど」
「一理あるかも知れないね、たとえば僕のヒロインが快活な言動の女の子なら、たぶんああいう物語にはならなさそうだ」
「……アリかも知れない」
そう呟く『徒花』の様子を、窓の外から見つめる者がひとり。
紙片舞ウ夜宴 遊月奈喩多 @vAN1-SHing
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