2020.07 TEXT It's not my business.

■2020.07 It's not my business.


 創作のなかに、ボーイズラブ(BL)というジャンルがある。男同士の恋愛を描いたフィクションで、オリジナルから派生した一次創作と、既存の物語から派生した二次創作がある。

 腐女子と呼ばれる女性たちが男性同士の恋愛を描いている。お話を読むのも書くのも女性である(たまに男性)。なので描かれる恋愛は女性の嗜好や願望、女性たちが置かれている現状などを反映している。

 腐女子たちは本物のホモセクシュアルの恋愛を描きたいわけではない(そういう人も中にはいる)。腐女子たちが理想とする恋愛や世界を構築していく。腐女子たちはそれを自らの「ファンタジー」と呼ぶ。ホモセクシュアルのファンタジー。以前松浦理英子は作中に出てくる女性たちのボーイズラブ的妄想を「ホモセクシュアル・ドリーム」と呼んだ。


 私は男同士の恋愛を描きたいのだが、それは実在のホモセクシュアルの恋愛でもBL の「ファンタジー」でもない。

 異性愛者だと思っていた男性がある日同性を好きになったことに気づく、葛藤やホモフォビア(自分がホモセクシュアルであることを嫌悪する思い)、その地獄を描きたい。

 同性を好きになった葛藤、業、地獄を味わったうえで、それでも相手を好きだと思う絶望と希望を描きたい。

 それが私にとってのリアルであり、そのリアルな絶望に自分が救われるからだ。

 それは現在のBL業界とは真逆の路線であろう。なので、私は自分の小説の紹介には必ず「暗くて」「重い」とつけている。小説を一度公募に出してみたいとは思うが、どこへ出せばいいのか見当もつかない。

 「ファンタジー」のBLを描いている人たちは楽しそうだ。その軽やかさ、発想力をうらやましく思うこともある。

 でもその軽やかさは私には一生身に着かないものだろう。It's not my business.

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