11th area

夜の色、冬の匂い



肌に覚えのある

夜色の秘めやかな空気

明るみはつつましく減じて

香気かざの導くところの虚ろな彩り

どこに行こうか

ひとりきり


寂しさを寂しさと認めうるのであれば

もういくらかは賢しくなれたのかもしれない

どうということもなく

つまらない見栄を張りすぎる

さりとて

肌に覚えのないぬくもりを探す気にもなれず


いのちの重みに

震えることにしたって

そうそう意力の保つはずもなく

さりとて

その重力圏から逃れることも望めず

記憶を起こすうちに

それに抉られもしながら

冬に身を切る

相変わらずの進歩のなさで


寂しいと叫びましょうか

それで何が得られましたか

傷痕を見せびらかしましょうか

それで何を失いましたか

夜の痛みに塗れながら

それでいて浴してはいませんでしたか

かの向日葵が咲く野は遠くにあれど

いまだに内側に飼っているのではありませんか

畢竟のところとして

誰かと共に生きることを望むのですか


寒気になずさうことは易く

冬に熱を生むことの難儀ゆえにさすらう

夜の気配に忍び込むのに相応しいものを

どうにか探そうとして

傷痕の奥底に手を伸ばしてみても

いつか触れられたところにはもう届かない


烈寒の中にあればこそ

あなたの熱を感じることもまた容易い

どこへ行こうか

夜の色

冬の匂い

肌に覚えがありすぎる




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