わたしのサイダー Ⅱ

5th area

わからないことばかり



わからないことばかり

目の前でゆらいでいくので

なんの浪漫もへったくれもねえのです

アクリルのコップに麦茶をみたして

結局やっぱり現実ばかりおそってくるわりに

なにかの方程式があきらかになるわけではなくて

シェーバーはどこにいったんだろ

普段使ってるものさえ見失う始末で

そもそも夏はめんどくせえよ

女同士だからって

気軽にプールに誘わないでほしいんです

すげなくことわったからわからないままなのか

気合入れて剃刀つかうの痛いからいやだ

アンダーを処理しすぎると彼が残念がるのも面倒

気がつけば麦茶が半分になっていて

あれこんなに飲んだっけって

わからないことばかり


なにをどうこうしたって

麦茶は減っていく運命にあるし

アクリルのコップは透明になっていくし

それがとてつもなく理不尽におもえることがあって

結局なにもかもめんどくせえってだけなのか

なぜ男は電気をつけたがるのか


わからないことばかり

目の前でおよいでいく

それは生への葛藤とか高尚なものではなくて

シェーバーが部屋のどこにかくれているか

カップラーメンが健康にあたえる影響

つまらない罪のありか

あどけない呼気のゆくえ

そんなことばかりだから

なんの浪漫もへったくれもねえのです

そんな生きざまでも明日は来るし

剃刀を使うことは良しとできても

あなたをがっかりさせたくなかったから

プールには行かなかったのです

わからないなりに

そんなふうにあなたをすきでいるのです

ぼんやりと考えをただよわせながら

コップがからになっていて

わからないことばかり




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