小品 Ⅰ
シーソー
サイダーの缶を片手に、シーソーを平均台の代わりにして歩いてみた。それは私がお気に入りのスカートを履いていたからだし、私の他にはここに誰もいないからだし、そして、私が大人になったからでもある。
夏の公園は夜に澱む。夏蝉は鳴りを
私がこのまま遅々とした歩みを止めなければ、いつかシーソーは、持ち上げている頭を地面に打つ。それが楽しみのようでもあり、訪れてはいけない瞬間のような気もする。
あの人は、ここへは来ないだろう。
よしんば追いかけてくれていたとしても、私が逃げこむ場所など、見当もつかないと思うのだ。そして私も、あの人が探しに来るかもしれない場所を、何ひとつ思いつけなかった。
膣が疼きます。あなたのせいです。
シーソーに乗る心持ちを忘れ、なまじ恥じらいなど意識するばかりに、こういう活かし方しか思いつかなかった公園に、私はひとりでいて、サイダーの甘味に辟易しながら、精神の苦味を押し殺して、なんとなくあの人を待っている。生半可に経験など積んだばかりに、ここに現れないことなど百も承知で。
胸の拍動はなにゆえのものでしょうか。
反対側にあなたがいれば、つまらぬ恥など忘れるでしょうに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます