2nd area

マスカット



マスカット味のガム

手持ち無沙汰

乳房を撫でてみても

唇の痕は消えない

彼はまだ起きない

剥ぎ取られた服はすぐそこにあるけど

気持ちのうえで遠い

見え透いた駆け引きに負けたくなった昨夜も

同じく気持ちのうえで遠い

次第に味が失われていくガムに

自分の価値との相似を見たりもする


なめらかさが悪徳になって

私への自業自得

それを良しとはできなくとも

気持ち良いものは気持ち良くて

ガムよりはグミがよかった

彼のベッドサイドにはない

服は万里の向こうにあって

畳んでくれなかった

どうしても手持ち無沙汰


アップルではなくマスカット

レモンではなくマスカット

ブルーベリーではなくマスカット

必然性はひとつも見つけられない

ベクトルは漂い

カーテンの隙間から漏れ入る光だけが真っ直ぐ

マスカット


私を振り撒いて生きていくのに

いくらか疲れもする


味わい切ったガムを

紙に包んで屑かごに放る

昨日の行為の残り香の上に落ちる




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