第2話 モンロー効果で悩殺しちゃうわよ!
告白勝負すると決まってから数日後。
中庭のベンチで一人座ってブツブツと呟く女子。
「やっぱりアレね。私のスキル、モンロー効果で悩殺。これしかないわ」
モンロー効果でどう砲弾を悩殺するのか甚だ疑問なのだが当人は必死である。
温子はおもむろに立ち上がり人差し指をさし叫ぶ。
「この、モンロー効果で悩殺しちゃうわよ♡」
突然、一人の男子が胸を押さえて倒れこんだ。
「ああ、僕、温子さんに悩殺されちゃいました。胸に大穴が……ああん♡」
喜び悶えるその男子は量産型均質圧延鋼装甲(RHA)だった。
「ああ、私ったらまたやっちゃった。でも引っかかるのは均質圧延鋼シリーズばっかりね」
さもありなん。
そこへ爆発反応装甲と複合装甲の男子二人が通りかかる。
「おい大丈夫か?」
「温子ちゃんやり過ぎだろ。こいつ弱いんだからいじめちゃダメだよ」
装甲同士仲間意識があるようだ。
「私がモンロー効果の練習中にそいつが勝手に通りがかっただけよ。悪かったわね」
「わかったよ。まあ俺達には通用しないけどね」
爆発反応装甲がニヤニヤ笑う。
「ふん。タンデム型ならあんただってブチ抜けるわよ」
「グッ。知ってたか」
「当たり前じゃない。そういうの専門なんだから」
そこへ通りがかった餅江が複合装甲の背中に抱きつき豊かな胸をこすりつける。
「オラオラ。ホプキンソン効果だ。内部破壊しちゃる!」
複合装甲はアヘ顔になってくねくねと悶え始めた。
そこへAPSFDSの徹が来る。
「何してるんだい?」
餅江は複合装甲からぱっと離れた。赤面している。
「いやー。こいつが生意気だったんで少しヤキ入れてたんだ」
「うん。確かに熱くなってるみたいだね。悪ふざけもほどほどにしようね。じゃあ」
さわやかな笑顔を振りまいて去っていく徹だった。初速ナンバー1らしい高速移動だ。
「俺たちも行くよ。いたずらもほどほどにな」
装甲版三人組も去っていった。
おもむろに温子が口を開く
「餅江。あんたね。あれホプキンソン効果じゃないわよ。ただの乳テロ。若い男子には効果てきめんだけど」
頭を掻きながら餅江は笑う。
「あはははは。まあいいじゃん。でも温子もすげえ勘違いしてるよ」
「何?」
「あんた。モンロー効果のモンローって、セクシーアイドルのマリリン・モンローだと思ってるでしょ」
「え?違った?」
「あのモンローはおっさん。チャールズ・E・モンローって名前。モンロー効果は19世紀末に発見されたのよ。覚えときなさい」
「あ」
大口を開けて唖然とする温子だった。
[用語解説]
均質圧延鋼装甲:全体が均質な圧延鋼板で作られた装甲。APFSDS、HEAT、HESHには十分な防護性能が得られない。現在では対戦車兵器の貫通能力をその厚さで表している。
爆発反応装甲:爆薬の詰まったケースを装甲版に多数ボルト止めしたもの。着弾時の高温高圧で爆破しAPFSDS、HEATの侵徹を阻害する。
複合装甲:2種以上の材質を積層させた装甲。セラミックを使用した場合はAPFSDSやHEATに対して有効。
モンロー効果:19世紀末に発見された。円錐形のくぼみを持つ爆薬を後方(円錐の頂点がある方向)から起爆すると、反対側の前方に強い穿孔力が生じる現象。
ホプキンソン効果:鋼板に密着した状態で爆薬を爆破するとその衝撃で裏側が剥離する現象。もちろんおっぱいとは無関係。
徹:さわやかなイケメン男子。APFSDS(Armor-Piercing Fin-Stabilized Discarding Sabot、装弾筒付翼安定徹甲弾)
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