砲弾少女―Hyper Explosive Girl
暗黒星雲
第1話 女子力が高いのは?
ここはミリタリー学園高等部。
世界中の火器と弾薬が集う学校である。
中庭のベンチに温子(成形炸薬弾)と餅江(粘着榴弾)が座っておしゃべりをしている。
「ねえねえ温子。女子力ってさ。あんたと比べたら私の方が上よね」
温子に餅江が話しかけてきた。
「何言ってんのよ。貴方が勝っているのは胸のサイズだけ。女子力=おっぱいって誰が決めたの?他は私が勝ってます」
「自信満々ね。ちょっとぜい肉が少ないからって威張らないでくれる。胸元が一番大事だって事は明白だわ」
温子と餅江がにらみ合う。
そこへ一人の少女が通りかかった。
少女というよりはプロレスラーと言った風の全身筋肉ムキムキな体型をしている。
名前は滑子。ラインメタル家の滑腔砲である。
「あらあら、何かもめてるの?」
「滑子先輩こんにちは。今、女子力についてどっちが上かって話をしてて、意見の相違があったんです」
と餅江がいう。
「餅江は胸のサイズが女子力に比例するっていうんですよ」
温子も黙っていない。
「あら、女子力が胸のサイズで決まるなら、私が学園で一番ね。120㎝のJカップよ」
滑子が胸を張った瞬間に巨乳がぶるんと震える。
「ごめんなさいね。わがラインメタル家はそういう事に興味が無くてね。私、全然わからないの。でも、胸の大きさと女子力は関係ないと思うわ」
この一言で勝負はついた。
女子力と一番縁のなさそうな人が一番胸が大きかった。そして、その人に女子力と胸の大きさは関係ないと宣言された。言い出しっぺの餅江が一本取られた格好である。
「じゃあ仲良くね」
手を振りながら滑子が去っていく。
「じゃあ次の勝負は……」
「まだするの」
「考え中だ」
そこへ今度は生徒会長の速美が通りかかる。
乙女ララ家のご令嬢、127㎜速射砲だ。
何もない空間なのに百万本のバラに囲まれているかのような、凄まじい女子力を発散させていた。
「あら、お二人さんこんにちは。何をなさっているのかしら?」
「こんにちは先輩。今、女子力について話してたんですけど……」
温子は返事をする。
「いやー先輩見てたら圧倒的な力の差を感じてしまいました」
温子と餅江はしょんぼりして小さくなっていた。
「あら。女子力ですか。そうですね。我が乙女ララ家では幼少時より厳しくしつけられますから。もうオシャレやダイエット、社交ダンスに茶道に華道に戦車道。もう寝る間の無いくらいしごかれてきましたわ。その厳しいしつけをくぐって来れた自信かもしれませんね」
「なんか厳しそう」
温子の言葉に先輩は頷く。
「遊ぶ暇もなかったわね。そう言えば、ラインメタルさんの所は我が家とは随分方針が違うようですけど、厳しさは同等だと言われてましたよ」
「やっぱり体育会系かな?」
「そのようですね。私は生徒会の仕事がありますからこれで。温子さん、餅江さん、ごきげんよう」
手を振りながら速美さんが去っていく。
「よし決めた」
唐突に餅江が宣言する。
「次の勝負はどっちが徹君をものにできるかだ」
「え、マジ?」
「大マジ。この片思いをどうにかしよう!!」
二人は同じ男子が好きだったのである。
「勝負は一週間後、二人で告白してうまくいった方が勝ち。二人ともダメなら引き分け」
「分った。受けて立とうじゃないの。はっきり結果が出るから公平ね」
こうして二人の告白勝負が始まる。
[用語解説]
成形炸薬弾:対戦車用に開発された砲弾や弾頭の事。対戦車用の砲弾やミサイル、対潜水艦用の弾頭として用いられる。モンロー/ノイマン効果を利用して戦車の装甲を貫通する。第二次世界大戦時には既に実用化されており、米軍のバズーカ砲やドイツ軍のパンツァーファウストにも用いられている。対戦車用の砲弾は対戦車榴弾(HEAT:High-Explosive Anti-Tank)と呼ばれる。
粘着榴弾:HESH(High Explosive Squash Head)と呼ばれる。鋼板に密着した状態で爆薬を爆破するとその衝撃で裏側が剥離する性質(ホプキンソン効果)を利用して内部破壊する砲弾。弾頭が装甲にへばりつく形で起爆する事から粘着榴弾と呼ばれるが、とりもちのようにくっつくわけではない。
HEATもHESHも爆発反応装甲や複合装甲には効果が薄い。
ラインメタル家:ドイツのラインメタル社(Rheinmetall AG)の事。西側の主力戦車に搭載されている120㎜滑腔砲(Rheinmetall 120 mm L/44)の開発製造メーカー。滑子はそこのご令嬢。
乙女ララ家:イタリアのオートメラーラ社の事。艦載砲で圧倒的なシェアを誇る名門メーカー。日本の護衛艦にも多数採用されている。速美は127㎜速射砲。
徹君:徹甲弾の徹君。最速最強の徹甲弾APFSDSのイケメン男子。
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