第3話 自動販売機は180cm
月丘高校は、わたしの家から約1時間半程かかる。バスと地下鉄に乗り、駅から自転車で帰っている。
もともと通う予定だった黒陵高校は、徒歩や自転車で通える距離だった。だから私の中学から黒陵高校に行く人はかなり多かった。そこまで頭は良くないが、普通といった感じのため、幅広い学力の人が揃うらしい。
現に、頭の良い響も、普通で距離が近い黒陵高校に通っている。
月丘高校はブレザー、黒陵高校は学ランだ。
中学も学ランだった。だから響の学ラン姿は飽きるほどに見ていたはずだけど
「響、なんか大人っぽくなったね」
「…は?何急に、気持ち悪いんだけど」
死んでいる目でさらに蔑まれる目線をプレゼントされる。
「これは素直に褒めたんだけど…ほら、多分背とか伸びたしょ?」
「あー、この前測ったら180くらいだったかな…」
「え!?!?デカ!!!巨人!!!」
「お前からみたらそうだろうな」
「あ!ちょ!ねぇこっち来てみ!!!」
私はいいことを思いついた。駅から家までの間の、自動販売機が沢山あるところに響を連れて行く。
「隣立ってみて」
「ん?あぁ…」
響が自動販売機の隣に立った。やっぱり…
「やっぱり!!!一緒じゃん大きさ!!!あはは!!!」
「おおマジだ。これ結構な発見だな」
「読みが当たってた〜!響見上げた時思ったんだよね!」
「自販機見てるみたい、ってねぇ」
「お前それ褒めてねぇよな?」
「私は基本響のこと褒めないよ、普段たくさん褒められてるからいらないだろ」
「まぁな」
「あー!!!本当にムカつくなぁ色々!」
つべこべ、あべこべ、ぐだぐだ喋っていたらお互いの部屋の前まで着いた。
「じゃあなー」
「響!」
お互いにドアノブに手をかけたまま、お互いを見た。
「ありがとう、私ちょっとホームシックだったみたい」
「…あーそう、俺も」
同時にドアノブが回り、ドアが閉まった。
「ただいまー!!!ごめんね遅くなっちゃったや!!!」
「お帰り〜〜」
焼き魚の匂いがした。やっぱり、ちょっとだけホームシックになっただけだ。
明日からは、理由もなく頑張れる気がしている。私は私らしく、ちゃんと頑張らなきゃ。
たまに頼っちゃうかもしれないけど。
***
自転車を駅に置いたところで、葉月ちゃんを見つけた。
「葉月ちゃん!おはよー」
振り向いた葉月ちゃんは、ふらふらのおばあちゃんを見るような目で私を見た。
「ねぇ、昨日大丈夫だった?」
「あぁ、そのことなんだけどねー。結構連れまわされた後に偶然さ!響から電話来て」
「おー!響くん!」
「今しかチャンスはないと思って、用事あるので帰らなきゃ〜〜ってフリをしたの!ただ1つ問題がありましてね…」
「問題ねぇ、何々?」
「いや、付きまとわれてムシャクシャしてたっていうか、嫌だったから…響が彼氏です!みたいな振る舞いした後に暴言吐いて来たぁ」
あはは、あはははは、しかも相手は男子の先輩だ。
「それは先輩に吐いていい内容だったの?」
「んーーとねーーーー」
入る部活は私が好き勝手に決めるんじゃボケェ!!!年上のくせして集団で囲うようなセコイ真似しかできねぇのかてめぇら!!!
「…ダメだねぇ!!!!」
「アホなの!?!?!?」
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