第10話 『最終豪雨』その1
携帯電話が鳴りました。
それ自体が、すでに、奇跡に近いことがらでした。
有線電話回線は、とっくに途切れておりましたから。
『すまん、放送施設が動かないんだ。どうにも、ならないんだ。』
官房長官さんが、静かに言いました。
「そんな・・・ぴゅるるる・・・困ったな・・・」
乱暴君が電話機を奪いました。
「思い出したぞな。新しい、『日本アルプス国立天文台』に、未公開の強力な『情報収集用送受信機』があるんでしょう?。その話し、聞いたぞな。そこから全周波で、めいっぱいの出力で宇宙空間にメッセージを出すんですよ! もし欧州が協力してくれるなら、そこらあたりからも出せないの?」
『データが間に合わなかったんだ。もう他国には、つながらないんだ。』
「じゃあ、とにかくまずは、新しい天文台からなんとか、送信してくれぞな。」
『むむ、やってはみるが、あそこは・・・・・プツ!』
「ああああ、切れたぞな。くそ。」
「ダメですなあ。やっぱ、ぼくの集めたデータでは、内容がちょっぴりだったしなあ。相手さんには、もの足りないんだろうなあ。・・・衛星さんたちには。」
「出力が小さいから、多分、あまりこっちの声が届いてないぞな。まあ、権威もないし。新しい天文台には、恐ろしく強力な送信機が出来てると、先日、昔の同僚から秘かに聞いたぞな。いったい、何に使う気だったのかは知らないけど。どうせ、この間の『いくら実験』の続きぞなもし。しかし、我が国の『人工衛星』さんが、もしも協力してくれたなら、地球上空のたくさんの『衛星』さんに、生きてるのにも死んでるのにも、きっとメッセージが伝わると思うぞな! 」
「まあ・・・そりゃあね、・・・そう期待したいものですなあ。」
「こっちはこっちで、このまま放送するぞな。おじさん、がんばれぞな。」
「ああ、あああ。・・・あ、電気。停電した。自家発電に切り替える。あまり持たないぞ。他の住民のこともあるから、ここだけでは使えない。」
「それは、そうぞな。でも、まずは、いま、何とかしなくちゃぞな。何とか送信出力を、機械ぶっ壊してでも、上げるぞな」
「無茶、言うな。くそ、わかったよ。ぶっ壊す。」
乱暴くんのおじさんは、そう叫び、送信機の回路をいじくり回しはじめたのです。
「よっしゃ、これで、出力は倍になるはず。ただし、どっちにしろ、あまり長くは持たないだろうな。」
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