第6話 『人工衛星の供養』その4
乱暴くんのおじさんは、乱暴君から提示された目標衛星が、ちょうど上空に上がるのを待ったのです。
すでに、運用が終わって、あとは落下を待つだけになっている古い衛星さんを中心にして、壊れたがらくたなども、新たに合体してできたと思われる『幽霊衛星』です。
そうして、間もなくおじさんは、ぼくらが用意した電文を送信し続けました。
「だいたい、なんで現役じゃなくて、引退した衛星が犯人なんだい?」
ぼくが尋ねました。
「人間だって、自分が終わる日が見えたら、次第に信心深くなるものでしょうぞな? 衛星もまたしかりぞな。」
「まあ、そうじゃない人もいるけれども。」
「確かに。でも、晩年になると、写経したりし始める。これはいわば、心の準備ですぞな。衛星さんだって、きっとそうぞな。自らの終末を、このような運命を与えた人間に向かって、訴えているぞなもし。お前たちも、遠からずこうなる運命だとぞ、とも。」
「そうかなあ~~~~??? 余計なお世話の気もするなあ。人間だってそれぞれ必死なんだし。」
つまりは、こう、はっきり言い切られると、ずいぶんと怪しいもんだ。
だいたい、どうやって雨降らせてるんだろう、さっぱりわからない。
「まあ、相手が合体した幽霊衛星さんならば、コンピューター同士が協応して、想定外の超能力を持った可能性はあるぞな。任意の場所に積乱雲を発達させるぞな。きっとそうぞな。もしかしたら、どんどんと、現役衛星をも仲間に引き込む可能性もあるぞな。つまりは布教活動ぞなもし。そうなると、世界中がその、衛星さんたちによって気象操作されるぞな。政府も万策尽きてますから、こうなれば雨が降る『雨ごい』の逆の御祈祷したって、まったくおかしくないぞな。まあ、げんに、すでにやってるところもあると聞くぞなもし。『雨ごい』の逆は『日照りごい』とか『晴れごい』とかいうぞな。『てるてる坊主』は、その代表的な行いぞな。有名な『貴船神社』は水の神様を祭るぞな。」
「まあ、確かにニュースでは、そうのような事も聞いてるけどね。」
*** *** ***
しかし、送信し始めて、せいぜい30分後くらいのこと、なんと宇宙空間から、一本の電文が来たのです。
『ありがたや。うれしきかな。我は、『A』である。わが仲間は、地球周辺にすでに多数集結している。もし、人類が本当に『慈悲』を乞うものならば、人工衛星を打ち上げている各国の、『憐みの祈り』を、全宇宙空間に向けて、全周波で発出すべしなり。ただし、公共放送、緊急通信の波長は除くことを認めるものなり。なお、本文の証拠として、今回の『願い』の発信地点の雨を、1時間後に、1時間だけ停止するメッセージを、ここに送るものなり。もし、しかし、その後、祈りだけに留まらず、適切な環境対策が実際、なにも行われなければ、この災害はとめどなく連鎖し、さらには、他の宇宙ロケット所有国にも、ついには、全世界、全人類に恐るべき災いが及ぶであろうぞ。それは、各人類民族の古い伝説をも、はるかに超えるものとなるであろうぞ。』
「きた!」
乱暴君が言いました。
「うそだろ。これ、本物かい?」
「解析中。・・・・・・本物ですぞな。明らかに、その『幽霊衛星』が出したものぞな。」
「まさか。いかにも、うそっぽい! 『無料怪奇小説』みたいだ。」
「事実ですぞなもし。ほら、あとはあなたの仕事ぞな。データあげるから、官房長官なりと交渉するなりぞなもし、まはた、殴り込むなり、してください。ぞな。」
「あのね・・・・」
ぼくは、それでも、乱暴君から、そのデータを受け取りました。
そう言ってる間にも、こんどは、もう見たこともない、猛烈な雨が襲ってきていました。
雨では無くて、それはもう、ほぼ『滝』だったのです。
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* 再び台風が襲い、大地震が起こりました。このため、以降の章は下書きにもどし、しばらく中断いたします。
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