日記 その2
今日は魔王さまのはじめての修行の日だ。
毎回ラピスを通じて話すわけにはいかないので、ラピスが魔王さまの心を読んでいるときの魔力の波動を参考に魔道具を作成した。天才だ。
言葉を話せない魔物向けの翻訳機を少しチューニングしたら実はできた。
魔王さまはステータスを覗く方法すらわからなかった。
トウコと同じで、魔法についてはまっさらみたい。
でも知識に貪欲なのでOK。
私の年齢に対しても貪欲なのはNG。
◆◇
魔王さまがへコんでいる。
絶対にゴブリンの隊長……ガ……何とかの作った薬湯が原因だと指摘したら、
アンブロイド殿の厳しい特訓のせいではないですか? ときた。
殺し合いになった。
あのゴブリン魔術耐性持ってるのナメてる。
◇◆
ラピスが最近魔王さまを見てそわそわしている。
どうしたの、と聞いたら
「!?」
逃げていった。
思春期だろうか。
はやいか。
◆◇
ラピスが打って変わってほくほくしていた。
ラピスは最近魔王さまと一緒にいることが多い。
どうやら魔王さまも気持ちを持ち直したようだ。
大人が醜く言い争ううちにも子供は育つ。
魔王さまにお姉ちゃんと呼ばせているのを見た。
微笑ましい。
◇◆
魔王さま、それなりに強くなってきた。
なのに奢ることなく特訓を続けてくれて、とてもやりやすい。
普通は調子に乗ってしまうものだ。ラピスでさえ一時期そうだった。
それどころか、ゴブリン達の畑に魔術で水やりしているらしい。
神か……いや、魔王さまか。
◆◇
魔王さまはたまに私の事をアンちゃんと呼ぶ。
トウコと同じ呼び方でびっくりする。
最初はびっくりしきりだったが、慣れるとうれしくなってきた。
昔を思い出すみたいで。
それにしても魔王さまやトウコの居た世界ではアンブロイドという名前をアンちゃんと略す文化があるのだろうか?
二人がそもそも同じ場所からきたのかどうかわからないが。
◇◆
魔王さまに魔道具の作り方を教え始めた。
打てば響く魔王さまの優秀さには関心しきり。
なかなか質問も鋭く答えがいがある。
実際、魔道具の有無で生か死か左右されることもある。
トウコにももっと教えていれば……。
いや、やめよう。
新しいカリキュラムとしてコボルトの村への貿易をお任せした。
「アンちゃんならベストだと思ったならやるよ」
ですって!
ですってー!
◆◇
今日は3アンちゃん
◇◆
1アンちゃん……
◆◇
7アンちゃん!!!
◇◆
忙しくなりそうだ。
しばらく書けなくなりそうなので、少しまとめて書いておく。
魔王さまは勤勉であられる。
しかし魔物に対し、心で壁を作っているところが見受けられる。
ラピスを除いて、誰に対しても警戒が見られる。
まぁさみしい。
寂しいが、その慎重さは何よりも代えがたい。
そういうところが私も良いと思っているから。
魔物なんてロクなもんじゃない。
信じるに値しない。
ただ……最近少し思う。
私はトウコを失ってしまった時、魔物全体に強く失望した。
それは私自身も含めてのことだ。
みんなが打算に満ちている。
だから、魔王さまはこれからも慎重で居続けるのが正しい。
しかし近頃の魔王さまの周囲にある雰囲気は、かつてトウコが居たときに似ている。暖かな空気で満たされている。
一度殺し合ったがガドルクは信頼できるし、コボルト族の面々も悪くない。
もしこの面々で、再びトウコの居た頃のように生きていけるのなら、それは魔王さまにとって、とても幸せなことなのかもしれない。
なんて、私が魔王さまと仲良くなりたい言い訳だろうか。
……ただ一つ言えることは、私は二度と失いたくないということだ。
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