第二章 オカルトゲーム①

 ☆オカルト人生ゲーム☆



 フードファイト対決のその次の日の放課後。真希と希望はオカ研に正式加入した。

「さて、じゃあ人生ゲームを始めよう!」

「数あるゲームの中からそれを選んだか」

 涼太はそう言って人生ゲーム盤をテーブルにドカンと置く。

「2人は初めてだからしっかりとルールを説明するね」

 僕は人差し指を立てる。

「そんなの知ってますよ」

「何回かしたことある」

 2人はそう言うが、

「これは普通の人生ゲームじゃないんだ」

 真希は目をぱちくりさせている。

「オカルト人生ゲーム!」

 僕はその題名を叫んだ。

「「オカルト?」」

 2人は同時に首を傾げた。

 それに涼太と亀有さんは、

「俺らオカ研で開発した世界に一つだけの人生ゲームなんだ」

「ああ、題名通りただの人生ゲームではない」



「最初は僕だね」

「次が俺だな」

「……」

「希望の次は私だ」

「……最後……です」

 順番は僕、涼太、希望、亀有さん、真希の通りである。

 そして遂にオカルト人生ゲームが開始された。

 盤上は至って普通な感じだが、マス目に書かれている内容は普通ではない。

 僕はルーレットを回す。

「5か。1、2、3、4、5」

 僕は自身の駒を五つ進める。

「えーっと。空から魔法少女が降って来た。これからは行動を共にする」

 初っ端からラッキーマスだ!

「おお! 『魔法少女リリカルなのはだーれだ』だ! やった! えっと、ある日フェレットを救った女の子はビストロギア・ジュエルシートを集めていると、乱気流に揉まれて地面に落下。そんなときにとある男の子の上に落ちてしまった」

 僕が魔法少女リリカルなのはだーれだを引いて喜びながら説明文をひとしきり読み終わると、

「くっそー! 早速いい手を引きやがってー!」

「全くだぞ」

 涼太と亀有さんは何故か拗ねた。えー……まだゲーム始まったばかりなのに……。

「まあいい。じゃあ俺な……。って1かよ! んーとなになに? 空からおばさんが降って来た。これからは行動を共にす……ってコンチクショウ!」

 涼太はムンクの『叫び』の様な顔をして絶叫しながらおばさんカードをもらう。

 ちなみにおばさんカードはハズレカードで、後々何にも役立たない。

「いや、待てよ! こいつ、ただのババアじゃねぇーゾ!」

 涼太の声は非常に怯えていた。やがてガクガクと震えだし、

「UFOだ!」

『UFO!?』

 僕や亀有さんだけでなく、真希、そして無口の希望までもが叫んだ。

「UFOってまさかあのUFO……!?」

「嘘だろ! 初手でUFOなのか……!?」

「UFO!?」

「??」

 僕達4人に雷が落ちた。そして愕然とした。

「ああ、そうだ。そのUFOだ。」

 UFOまたの名をウルトラファイアーおばさんはただのおばさんではない。安い野菜を求めるが故に高い戦闘力を身に付けた戦闘民族スーパーサイヤ人なのだ!

「スーパーヤサイヤ人だと……! そんな! もう終わりだぁー!」

 亀有さんは頭を掻き毟りながら叫ぶ。言い換えれば絶望している。

「そ、そんなに強いんですか?」

 スーパーヤサイヤ人について何も知らない真希は大きな目をパチパチさせながら問う。希望も首を傾げてこちらを見つめている。

「強いなんてもんじゃない。チートなんだ! 魔法少女系の戦闘力はあまり高く設けられていないんだ。まあサイコロを振って力の増幅ができるけど、サイコロ獲得マスはこのゲーム盤には5つしか存在しないし、他の人に取られたら自分は獲得できないんだ。つまりバトルになれば負けるんだ」

「「サイコロ? バトル?」」

 2人はふにゃふにゃして頭上にハテナマークを浮かべている。

「バトルゾーンってのがあるんだ。そこの中で他のプレイヤーと同じマスになるとバトルになるんだ。戦闘力の大きな方がバトルに勝つんだけど、負けた方は手持ちの全てのアイテムを勝者に献上しなければならないんだ。サイコロはそのバトルのときに使うものなの。カードに書かれた戦闘力掛けるスサイコロの出た目プラスルーレットの出た数で勝負するんだ」

 そう、この人生ゲームは先程も言った通り、ただの人生ゲームではない。その命を削り、血で血を洗い、互いを陥れるゲームなのだ。

「じゃ、じゃあ戦うためのカードが必要なんですね」

「そういうこと」

 ちなみに魔法少女リリカルなのはだーれだの戦闘力一定360なので、戦闘力900〜1200のおばさんに勝つにはサイコロ(最初からプレイヤーに支給されている)では到底足りない。

「と、とりあえずカード来て欲しいです。えいっ!」

 真希はそんな可愛い声を出しながらルーレットを回転させる。

「やった! 10です! 道端に落ちていたヘビの皮を手に入れる? これなんか意味あるんですか?」

 真希はヘビの皮カードを入手した。

 うーんと、なんだっけな。作ったのだいぶ前だったから僕も忘れちゃった。

「はっはっは。ガラクタを拾ったな真希」

 亀有さんはそう言ってルーレットを回し、8マス進めた。

「よし! 当たりマスだ。ある朝、超能力に目覚める。ふはは。これは来たな……」

 亀有さんはそう言って額に手を当てた。そして特殊能力カードを無作為に抽出。

「力の大きさと向きの操作……! くはははは! 神は私に味方した!」

 亀有は天を仰いで叫んだ。

 力の大きさと向き……つまりはベクトル操作か!

「くっそ! 学園都市最強の能力だと……!」

 それまで鼻歌を歌っていた涼太の声音にも余裕がなくなる。

 特殊能力はプレイヤーの戦闘力(100)に能力による戦闘力をプラスできるものだ。

 たしか力の大きさと向きを操作する(ベクトル操作)能力の能力値は900プラス200。つまり亀有さん自体は1000もしくは1200もの戦闘力を持つことになる。つまり戦闘民族・スーパーヤサイヤ人のおばさんといい勝負なのだ。

 続けて希望はマイペースにルーレットを回し、

「くるくるくる。7」

 希望は7マス進んだ所に駒を置いた。

「左隣の人と友達になる」

 希望はそう読み上げた。

「左隣ってことは、僕と希望が友達になるってこと?」

「うん」

 希望はそう言ってこちらに無表情を向けた。

「お友達。よろしく樹さん」

 希望は僕の顔をジーッと見つめている。

「え? 何? なんか付いてる?」

「ううん」

 希望は首を横に振る。

 ところで友達ってなんだっけ? えっとたしか金銭とかの貸し借りができたんだっけか?

「そ、そっか。じゃあ僕のターンだね」

 ルーレットは8を示した。

「んーと、パートナーがいる場合は……。パートナーが入っていたお風呂を覗いてしまって1回休み。てかかなんでお風呂を覗いただけで休むの!?」

 僕達オカ研で作ったマスについつい文句を言ってしまう。つまりは僕は高町なのはだーれだがお風呂に入っていたところを覗いたわけか! ごめんなさい!

「じゃあ俺だな。……10マス進んで、突然竜巻に巻き込まれて2マス戻る。ウガーッ! なんじゃこりゃあ! おい、おばさん! どうにかできないのか!?」

 たしかに戦闘民族・スーパーヤサイヤ人のおばさんの手に掛かればどうにかなりそうなものだが、それがこのゲームなんだよな。

「うるさい黙れ!」

 亀有さんは吐き捨てるように言って、

「4……警察に変な容疑をかけられる。1ターン休み。ふっ!」

 笑い飛ばし、

「この学園都市最強様の行く手を阻むなどいい度胸ではないか。みんなまとめてぶち殺す! つまりは能力使用だ。舐めてんじゃねェーぞ、この三下がァー!」

 似ている。今の亀有さんのモノマネ、すっごく似ている。

「はわわわわ!」

「ひゃっ」

 真希と希望は可愛らしい声を上げて、怖がって僕の後ろに隠れた。たしかに怖いよなぁ。

「警察さん達って殺せるの?」

「の?」

 2人は僕の顔を背中側から見上げた。

 僕は2人の方を向いて、

「各マスにはそのマスの効果を回避する回避値ってのがあるんだ。回避値イコール戦闘力だから、戦闘力が回避値を上回って入れば、警察官を殺すことは可能だよ。ちなみにここの回避値は400だから亀有さんは余裕で突破できるね。あと回避は何回でも、自分の好きなときにできるよ。でもたまに強制マスがあるから、そのときは絶対効果を受けるけど」

 初めての人には色々ルールが難しいと思うけど、

「まあ、なんでもありって感じかな?」

「そ、そうなんですか。あたしも頑張ろっと」

 続いては真希の番。

 目を輝かせてルーレットに注目している。健気で可愛いな……。

「わーい! また10です! どれどれ? あれれ? ストップだ」

 どうやら真希はストップマスに辿り着いたようだ。普通の人生ゲームでは結婚となっているが、キャラクターの設定が高校生となっているので、そうではない。

「ああ、誰もが必ず通らざるを得ない定期テストマスだな」

 涼太が説明すると、

「この世界でも定期テストってあるの!?」

「テスト好きじゃない……」

 亀有さんの情報だと2人ともあんまり勉強が得意じゃないみたい。

「そうだ。だが心配するな。これはあくまでゲームだ」

「定期テストってワード聞くだけで頭が……」

「……ずきんずきんする」

 真希と希望は揃って頭を抱えながら台詞を割って言った。

 こりゃ重症だな……。

「そこまでだったのか。済まなかった。だがルールとて説明させて頂く。まず10回ルーレットを回して、その合計によって得られるものが変わるんだ。全部で2つの場合がある。1つ目は合計50以上だった場合。5マス先の無記入マスに進む。2つ目が50以下なら追試で2ターン休みだ」

 亀有さんは2人にそう説明する。

「なるほど……です。理解しました……」

「わかっ……た」

 2人とも頑張って耳を傾けていたみたいで、すごく疲弊している。

 そんな中、真希は懸命にルーレットを回した。

 1、5、9、3、7、2、2、8、10、6が出た。合計で53。つまりは1つ目のケースである。

「5マス進むんだね」

 真希は、5マス先の無記入マスに駒を進めた。

 続いて希望はルーレットを回した。

「……4。1、2、3、4。目の前のおじさんが百万円を落とす。届けてキラキラした宝石を貰うか、そのまま百万円をゲットするか。どっちにしよう……」

 希望はやっぱり無機質で言う。

「うーん。迷う……。樹さんはどっちがいい」

「え? 僕!?」

 希望は悩んだ結果、僕にその決断権を委ねてきた。あまりに突然だったから少しビックリした。

「これはゲームだよ? 1人で考えるべきだと思うけど」

「でも、樹さんと私は友達……」

 希望は悲しそうにそう言って、無表情だが整っている可愛らしい顔を向けてきた。

「そ、そっか。そうだなぁ。でも実際このゲームってお金をとかあんまり必要ないし、それにそのきらきらした宝石もきっと何か役立つ……。よし、届けてあげて」

「うん、わかった」

 それにより希望はキラキラした宝石をゲットした。



 3ターン後。

 色々ゴタゴタしていたけど、全員が無事に最初のストップマスを通過。

 暫定順位順に全員の進度を説明する。

 真希はどんどん大きい数字を出していくので、スタートから35マスの位置にいる。

 僕は53でギリギリ追試にならなかったので、今はスタートマスから28マス進んでいる。

 次は亀有さん。60と全然追試になることなく25マス進んでいる。現実みたい。

 次は希望で、追試を50で回避して亀有さんのすぐ後ろに付ける感じで24。

 最後は涼太で、何度も後ろに吹っ飛ばされ、ようやく着いたストップマスでも追試を食らっていた。

 僕、涼太のターンは特に何もなく終わり、希望のターンが来て、ルーレットをくるくる言いながら回している。あら可愛い。

「キラキラした宝石の持ち主の『鹿目窓からこんにちは』に出会う。これからは行動を共にする」

 おお、ここで魔法少女か。だけど戦闘民族・スーパーヤサイヤ人のおばさんとか、亀有さんのベクトル操作とか、ギル亀ッシュには到底及ばないね。

「ふんッ! たかが魔法少女風情がッ!」

 亀有さんはそう言って希望に魔法少女鹿目窓からこんにちはを渡し、ルーレットを回す。

「空から隕石が降ってくる!? そんなもん壊すに決まってんだろォーがァ!」

 亀有さんは再びかの人物の声モノマネをする。

 結構ストレス溜まってるみたいだね。

 続いて真希のターンだ。

「えーっと、聖遺物を持っている人は英霊召喚の儀式を行って、英霊を呼び出す? 聖遺物ってなんですか?」

 真希は首を右左に傾げたところに、亀有さんは説明を入れる。

「そのヘビの皮だ。右下に聖遺物って書いているだろ?」

「本当です。見落としてました」

「ええっと、ヘビの皮によって召喚される英霊は……ま、まさか!」

 亀有さんは目を見開いていた。

「おい、何なんだよ一体」

「どうしたの? 亀有さん」

「?」

「??」

 涼太と僕は尋ね、真希と希望は怪訝そうに亀有さんの顔を見る。

「え、英雄王ギル亀ッシュだ!」

『なぁーんだとぉー!?』

「ギル亀ッシュって、あのシュメール神話における古代メソポタミア・ウルク第一王朝第5代王あのギル亀ッシュか!?」

「そ、そうだ」

 涼太に亀有さんは怯えたように頷き、真希にギル亀ッシュカードを渡す。

「同じ亀属性なんだからこの私が持つべきもの……」

 亀有さんの目は虚ろだった。てか亀属性って何やねん!

「わぁー! なんかこの男の人金ピカですね。ピカピカ〜」

 真希は黄金男を好奇的に眺める。

 英雄王ギル亀ッシュは涼太のおばさんや亀有さんの能力である力の大きさと向きの操作に匹敵するものだ。戦闘力は一定1100で、宝具展開には一定の条件が必要だが、展開されれば戦闘力は2000にまで登る。

  そうなればこのオカルト人生ゲームに出てくるキャラクターの中でトップランクになる。まあ、宝具展開確率は10パーセントなんだけどね。

 そんな真希を見て亀有さんは親指の爪を噛む。

「ギル亀ッシュめ……! ここで最強格が3体揃ったか……」

 たしかに今まで何度かこのオカルト人生ゲームをやってきたが、このような展開になるのは初めてだね。

 絶望的な僕だけど、まだ負けたわけじゃない! こっから巻き返してやる!

「カレイドステッキを手に入れて、入谷スフィール・フォン・アイツベルリンに出会って行動を共にする」

 入谷スフィールの戦闘力は初撃が500で、次からは260。少し特徴のある魔法少女だ。

「貴様らこれで3体目の魔法少女か……。ふッ! 所詮ガキだろォ? 三下がァ!」

「だがしかし、これで戦力だけで言えば俺らと並んだな」

 涼太の言う通り、僕と希望は友達関係にあるので、もし2人の最大の戦闘力を出せたとしたら、ギリギリ勝つことができるレベルだ。




 その後、何ターンかが経つ。

 涼太は前に後ろに吹き飛ばされ、真希はギル様と楽しくグングン進んで行き、亀有さんはたくさんの人を殺して、希望は人にたくさんの親切して遂にバトルゾーンに全員が到達した。

 進度が早い順に近況を説明しよう。

 真希。英雄王ギル亀ッシュ(戦闘力1100または確率で2000)。

 亀有さん。力の大きさと向きを操作する(ベクトル操作)能力またの名を一方通行能力(戦闘力1000+200)。

 僕(希望と同盟関係)。なのはだーれだ(戦闘力360)、入谷スフィール・フォン・アイツベルリン(戦闘力初撃500、次撃以降260)。

 希望(僕と同盟関係)。窓からこんにちは(戦闘力350〜370)。

 涼太。おばさんこと戦闘民族・スーパーヤサイヤ人(900〜1200)。

 ちなみに型月作品が多いのは、僕や涼太、亀有さんが好きだからだ。あんまり気にしないでね。

 この通り非常に接戦で、誰が勝ってもおかしくない状況だ。

 バトルゾーン内のマスには攻撃力の一時増加(プラス値を戦闘力に足す)やクリティカルヒット(戦闘力を最大にする)などがある。

 どのマスで戦闘するかによって、勝敗が左右されるケースもあるのだ。

 そして全員がそこへやって来た。

 ――トルネードゾーン――

 バトルゾーンの中に存在する円形の道だ。この円は20マスで構成されていて、3周しなければ抜けられない道だ。

 そして今の進捗状況から考えて全員がこのトルネードゾーンに入ることになる。すなわち戦う確率が増えるのだ。

 ちなみに戦闘は全員のターンが終わると一気に開始され、戦闘力が更新される度、一番戦闘力が低かった人から抜けていくという戦い方だ。



 何度かターンが進むと、とある1つのマスに僕、涼太、真希、亀有さんの4人が集まったのだ。

 4人のバトルが開始されるのだ。

「フハハハハ! 雑種風情が。ってギル様言ってます!」

「ゴチャゴチャうるせえーェんだよ。この三下がァー!」

「みんな、用意はいい?」

 真希と亀有さんの寸劇(?)に僕も参加する。ちなみにこれは魔法少女達に準備確認してるって設定です。はい。

「樹さんを遠くからサポートします」

「おばさん! 行くぜ!」

 僕達は気合いを入れた。

 マスは何も書かれていないので、ここは基準値での対決となる。

 僕はサイコロとルーレットを回す。

 まずは希望の持つ窓からこんにちはの戦闘力を確定させる。350から370までを10刻みにして、1を350、2を360、3を370、4を350……としてルーレットを回す。

 ルーレットは6を示したので、窓からこんにちはの戦闘力は370に確定された。

 続いてボーナス戦闘力を確定する。サイコロの目は最大値の6。ルーレットは9だ。

 つまり僕・希望連合軍の総戦闘力はなのはだーれだの360+入谷スフィールの500+窓からこんにちはの370=1230。そしてこれにボーナス戦闘力の和を掛けるので、1230×(4+9)=15990だ。

 続いて涼太は1000×(6+8)で14000。

 真希は2000×(2+7)で18000。

 亀有さんは1000×(5+8)で15000。

「お、おばざぁ〜ん!」

 涼太はおばさんの死を嘆き悲しんだ。

「なんで、おばざんがじななぎゃならながっだんだ〜! あいづ、げっこういいやづだっだのに! うわぁ〜ん!」

 途中途中何と言っているか分からなかったけど、涙と鼻水を垂らしているから、相当悲しかったのだろう。たかがゲームなのに、感情移入激し過ぎだよ。

「フハハハハ! 我が乖離剣を受けてもなお立ち続けるとは、褒めて遣わそう。ってギル様が言ってますよ」

「悪ぃが、こっから先は一方通行だァ!」

「みんな怪我はない?」

 僕は盛り上がる最強2人に乗っかって、魔法少女3人の安否を確認する。どうやらみんな無事みたいだ。よかった。

 ここで涼太は脱落し、僕達のバトルが再開され――、

「――直四の魔眼を手に入れる」

 希望が淡々とそう言った。

 わ、忘れていた! 

 そうだ、バトルに参加していないプレイヤーはそのままプレイを続行することができたんだ!

『直四の魔眼!?』

 能力・直四の魔眼は亀有さんの力の大きさと向きを操作する(ベクトル操作)能力・一方通行能力に匹敵する能力の1つだ。

 確率で敵単体を即死で能力値400と、唯一即死を持つ能力である。

 確率即死は自分の決めた数字にルーレットが止まれば良いので、10パーセントの確率というわけだ。

 型月作品多いとか言わない。

「樹さん、数字は何がいい?」

 同盟軍である希望が僕に無表情を向けて無機質な声音で尋ねた。

「私達お友達だから教えて?」

「う、うーん。じゃあ7」

 ラッキーセブンって言うしね。

 もしここで7が出れば僕は真希のギル亀ッシュを殺して、戦闘力がプラス400されたので、戦闘力が更新されるので、必然的に亀有さんにも勝つことができる。

 緊張するみんなを他所にマイペースに希望はルーレットを回す。

 直四の魔眼により真希を殺せるのか!?

 ルーレットは7に近付いたり離れたりを繰り返しながら……。

 来い! 7来い!

 ――7!

「よっしゃ! 7だ!」「やった! 勝った!」

 僕と希望は同時にガッツポーズをして喜んだ。

 いやー、にしても快勝だ。まさか最強格の3体に勝てるとは思ってなかった。

 途中、僕は負けを悟ったけれど、実際最後になってみないと分からないものだね。やっぱり諦めないことが大事なんだね。「あきらめたらそこで試合終了」って名言があるくらいだもんね。

「三下ごときにこの俺が負けただとォ……?」

「おのれおのれおのれおのれェー! はわわわわ! ギル様倒れちゃいましたよ!」

「しっかり葬式あげますからね……」

 亀有さんはその場で倒れ、真希はアワアワして、涼太はハンカチで涙を拭っていた。

 ――カンカンカーン

 どこからともなく聞こえてきた試合終了のゴングが僕と希望の勝利を祝福してくれている。

 とかくしつつ、白熱のオカルト人生ゲームが終了した。



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