1章82話 呆気なく

一言で表すとあまりにも味気ない。

もっと大きなファンファーレでも鳴り響くかと思ったが、そんなこともなかったしな。五十という節目の数字まで上がりきった実感も、付与師を付けたことによる違和感とかも何も無い。軽く得物を振ってみたがやはり何も変わらないな。


とりあえずステータスを開いてみる。



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カナクラヨウヘイ

種族レベル 50

ジョブ 1.勇者 2.召喚士 3.付与師

HP 19750

MP 33540

攻撃 2350

知力 2550

防御 2150

精神 2650

俊敏 2650

魅力 500

幸運 500

スキル 身体強化10、経験値増加10、ポイント増加10、異次元流通5、異次元倉庫10、槍術10、マップ10、拠点10、付与10、鑑定10、召喚10、調教6、追跡5、気配遮断6、不眠5

固有スキル 神殿

魔法 刻印10、拘束10、空間10、火7、水7、雷10、生活

ポイント 102893

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ステータスを見て初めて分かった。

かなりステータスが増加している。もちろん、ファーストジョブが勇者だからって言うことも関係しているだろうが、それだけのおかげとは思えない数値の高さだ。


まぁ……だが……。

言い方が悪いが少しだけもの足りなさはあるな。勇者をジョブにした時のような大幅な強化は得られなかったみたいだ。だけど……それでも全ステータスが二千を超えたのは間違いなく凄い。特に俊敏や魔法系統の上がり幅が大きかったな。MPだけ上がり方がおかしい気がするが……これも俺だからなのだろうか。


戦闘において強みが伸びるのは良い事だ。

例えば俺なら雷魔法を多用する。速度を上げたり、隙を作ったり、得物に付与したりなんかでも使うからな。付与強化を行う場合、効果を高くしたいならそれに応じた魔力が必要になる。持続させようものなら余計にかかるだろう。それを踏まえればMPの上昇率が異常なのも個人的にはありがたい。いや、言ってしまえば全ステータスが異常に高くなったとしても困ることはないんだけどな。


日常生活で困ることはあるのか?

アニメとか漫画とかでは筋肉ムキムキの男が家の扉を壊してしまったり、蛇口を回し過ぎたりとかって話があったからな。もしかしたら俺もそうなってしまうのかもしれない。一番に起こって欲しくないとすれば……握力が強くなり過ぎて手を繋げなくなることとかだな。その時は力を抑制するバンダナとかでも買って付けておこう。唯達と触れ合えないのは死んでもゴメンだ。


まずは一つ目の目標達成か。

となると、次は何をするべきかな。このまま次の階層へ行ってみるのもありだが……それは少しばかり早計な気もする。なら……まだ戦っていないマンティスとやらに戦いを挑んでみるか。それは割と良い気がする。倒せるのかどうかは微妙だがオーク種ばかりを狩っていたせいで、森の中にいる魔物がマンティスばかりになってしまったからな。狩れるのならば平等に、おし、次はマンティスを倒すことを目的にしよう。


マンティスを狩るのなら……。

まずは相手が使いそうな手を考えておこう。蟷螂が相手なんだから一番に危惧すべきは鎌だろうな。戦ったことがないから何を使ってくるかは分からないが、まぁ、それは仕方ないか。予想するなら鎌を使った攻撃、羽を使った上空戦、そして風魔法とかがありえそうだ。少なくとも羽を使った上空戦はここでは出来ないだろうな。となれば、残りの二つを何とかしないといけなさそうだ。


「確実にオークジェネラルよりは強い」


これは間違いない。

オークを狩っている最中に見たがオーク種達は明らかにマンティスを避けるように動いていた。あのオークジェネラルでさえも戦おうとしていなかったからな。……まぁ、一度だけマンティスを近場で見たがその時だって狩ろうとしていたオークジェネラルを真っ二つにして喰らっている時だった。傷を負っていたようにも思えなかったし一撃の下に伏したと考える方が得策だ。


もしも一撃を貰っていて無傷だとしたら。

それはそれですごく怖いな、さすがにグングニールで切れないってことはないと思うが……過信はよくない。俺だって少し強いだけの人間なんだ。体を真っ二つにされれば簡単に死ねる。それでも戦わないって選択肢は取れないけどな。倒せないとレベル上げに時間がかかってしまうし、下の階層へ降りることも出来ない。ここよりも強い存在が下にはいるわけだからな。


気配遮断で近付いて殺すか。

いや、それだと仮に不意をつかれた時の対処が出来なくなってしまう。安全性は低くなるが出来れば敵の手の内を目で見て知り、それでいて完封出来るようにしておきたい。相手について知っておけば一撃を貰ったとしても死んでなければ対処出来るだろうからな。


なら……気が乗らないが正々堂々戦うか。

他の魔物が近くにいない場所で、それでいてマンティスが一体だけいる……ああ、ここにあったな。ここに行くしかないか……ヤバいな、本気で気が乗らない。一応、ポーションとかはあるから簡単には死なないだろうが……久しぶりに感じるな。この死ぬかもしれないって恐怖。


マンティスに近づく。

近付けば近付くほどに怖いな。鎌がものすごい恐怖を抱かせてくる。そして、何よりも怖いのがその物怖じしない姿だ。それだけ自分の強さに自信があるんだろう。こういう時に相手のステータスを見られる能力があればって思うが……まぁ、甘えか。


ただ後々、手に入れよう。

ここから先の戦いで相手のステータスを知らずに挑むのは危険過ぎる。ポイントや金はそれなりには獲得しているしな。悪いが俺が死んだら唯達が悲しんでしまう。昔の俺とは違ってお金よりも命の方が大切なんだ。


「ギィ!」

「さすがにバレるか」


気配察知に関しては優れているようだ。

二百メートルは離れているんだけどな。それも自信のある理由か。だが……この攻撃は躱せるのかな。俺も久しぶりに使う最高のスキルだ。


「拘束」

「イィ!」


高い喚き声、躱すことすらしなかった。

倒すと決めた以上は本気で行かなければならないからな。雷魔法と拘束魔法で悩んだが相手を動けなくさせる分には後者の方が明らかに上。確実に麻痺させられるとは限らないからな。それに駄目だったら次の一手に賭ければ良いだけのこと。


「まぁ、これで動けなくなるのなら尚更よし」


あまり使わないが拘束魔法は強い。

いつかはそれすらも効かない相手が出てくるかもしれないのだが、効いてしまえば相手は何も出来なくなるからな。現にマンティスだって鎌ごと輪で締め付けられて攻撃すら出来ない、飛ぼうにも胴が締め付けられているせいで羽も出せない……割とチェックメイトに近いが手は緩めないよ。


「雷扇」


動けないところに雷魔法を撃ち込む。

まずは地面から相手を痺れさせて完全に動かなくなるまで待つ。動けなくなりさえすれば後は楽勝だからな。早く倒れてしまえ、助けを呼んだとしても今の感じなら何とでもなるぞ。まぁ、痺れ始めて声すら出なくなってしまったようだけど。


「じゃあな」

「ギ……」


首を跳ね落としておいた。

まだ体は動いているが……死んですぐだから勝手に脈打っているだけだろう。気にする事はない、だって……異次元倉庫の中に入ってしまったんだしな。俺が入れた場所では生きたままでは無理だし、これで死んだことは証明出来る。


問題は……おお、これはいいぞ。

かなり倒す旨味がある。経験値も然ることながら売った時の値段も悪くない。寧ろ簡単に倒せるのであればオーク系を狙うよりも良いんじゃないのか。ただ……もう少しだけ手を抜けばよかったって今更になって思うな。マンティスの動きからして拘束を躱すことは出来ただろう。それをしなかったのはマンティスの慢心故だ。


ましてや、俺が高く見すぎていたのもある。

拘束すら破ると思って本気を出したのにヒビを入れることすらままならなかった。これじゃあ、少しも戦闘経験になっていないじゃないか。……まぁ、他にもマンティスはいる。時間もあるし次の狙いを決めて戦ってみることにしよう。どうか、次のマンティスは俺を楽しませてくれますように。


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投稿が遅れてしまい大変、申し訳ありませんでした。他の作品を書きながら先の展開を考えていくうちにプロット内に大きな矛盾があり、直しているうちにプライベートの方が多忙になってしまいました。もう少し自分の言動に責任を持とうと思います。


次回はかなり遅れると思います。やらなければいけないこと、他にも書きたい作品があるのであまり時間は取れないと思います。未だに続きに対して若干の不満がありますし……。


後、タイトルをラノベっぽくしてみました。ちょこちょこ違和感を覚えたら変えていきます。


次回は気長にお待ちいただけると有難いです。

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底辺ニートの人生やり直し計画〜現実世界がおかしくなってしまったので大切な妹達と生き残りたいと思います〜 張田ハリル@伏線を撒きたいだけのオッサン @huury

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