1章56話 飯を作ろう
帰宅してすぐに食事の準備を始めた。
もちろん、調理場は俺の家をモチーフにした拠点の中だ。リサの家でもいいけどキテンの目につくのはあまり良策じゃない。
「それを小間切れに、こっちは味付けして焼くから三センチくらいの厚さで切っておいてね」
「これですね。お任せを」
今回は手伝いとしてアテナに来てもらった。
暇があるかなって聞いたら食い入るように今から行きますって……アテナらしいよね。外の文化について興味があるらしい。異世界のというよりも地球の文化って感じだけど学ぶのが楽しいんだってさ。
ぶっちゃけ調味料は揃っているんだよね。加えて何かを作るって気もないから肉じゃがとかの味付けでオークジェネラルの肉を煮込もうかなって思っている。角煮みたいな感じになれば万々歳だね。
アテナに包丁練習も兼ねて切ってもらっている間に野菜の準備をする。まずは角煮とは言ってもタレは肉じゃがだ。唯も好きだったから野菜を一緒に煮込むつもりなんだよね。
まずは人参、その間に玉ねぎの皮を剥いて軽く電子レンジにかけておく。もちろん、アテナは不思議そうな顔をしていた。
「これ、豆知識ね。この野菜を切ると涙が出るんだ。詳しい話は忘れたけどこの機械で少し温めるとそれもなくなる……らしい」
「なるほど、博識ですね」
鬼人だから尻尾なんてないはずなのに見えない尻尾がフリフリしている気がする。少しだけ額から生えている角が赤くなっている気がするけど、これは完全に気がするだけだよな。
ってか、今更ながらにピンクのエプロンを付けているアテナをマジマジと見てしまった。なんというか……中は薄い服だから胸のあたりが綺麗に浮き上がるんだよな……。貧乳派のはずなのに見入ってしまうのがコレの魔力だ。
「……見苦しいですよね。大きいだけで」
「いんや、俺は好きだよ。別に大きくても俺みたいな奴が喜ぶだけだし」
「ですが、ヨーヘイ様は唯様のように可愛らしく小さな方が好みと聞きました。私のように色んなところが大きければ見苦しいだけです」
「身長が大っきいのもいいと思うけどな。それにアテナは他の三人から比べれば大きいだけで俺よりも身長は低いだろ」
さすがに手を動かしながらアテナに反論する。何を言っているのだか。別に色んなところが大きくても小さくてもどっちでもいい。よくある女子の太ももが太いか細いかみたいな問題だろ。俺は太い方が好みだ。細いのも嫌いじゃないが折れそうで怖くなる。……その点で言えば莉子の太ももが丁度いい。
何というか、ふにふに感のない太ももに価値などない。筋肉があってもいいし脂肪があってもいい。頭にフィット、するのがベストだと思う。俺は何を考えているんだ。
「……太ももを見つめてどうかしたんですか?」
「いや、良いなって」
その点で言えばアテナの太ももはいいと思う。まぁ、そういう感じでそのまま膝枕とかしてもらおうとは思っていないけど。
「この話は無しで。別に今のままの方が好きだから気にすんな」
「……このままの体型を維持していこうと思います。命にかけて」
「いや、そこまで思い詰めなくてもいいからね!」
別にそこまで規制する気なんてないしな。
アテナの髪を軽く撫でてから再度、手を洗って野菜を切り始める。ぶっちゃけ、やる必要なんてない。でも、体が勝手に動いた以上。
「……頭触るの好きなんですね」
「嫌いな人はいないでしょ。アテナの髪とか柔らかいし」
そんな雑談を続けながら野菜と肉を切り続けた。人参は角切りで、玉ねぎは肉じゃがに使う感じで切った。一応、ジャガイモも角切りにしておく。普通にこの切り方の名前が分からないから想像に任せることにする。
タレはよくある砂糖、みりん、酒、醤油で作る簡素なものにしよう。まぁ、作り方に関してはよく料理アプリとかにあるやり方のままだね。
ただ角煮だけど紐で亀甲縛りみたいにしてからタレが煮詰まった鍋に入れて蓋をしてから火を止める。入れ忘れていたニンニクと長ネギを切ってから投入して弱火で煮た。
うん、どちらかというとチャーシューみたいだな。焼いてないから何とも言えないけど補正がかかってくれるはず。料理スキルとかが……ステータスにあるだと……。冗談半分だったけど上手く出来るようにおまじないをかけよう。
「アテナ、『美味しくなーれ』って言ってみて?」
「お、美味しくなーれ」
特に意味は無いけどこれで美味しくなるはずだ。うん、ご馳走様です。アテナの『美味しくなーれ』は俺の主食になります。ごはんが美味しいです。食ってないけど。
もう片方の鍋に水を入れて温める。温まったら野菜を入れて少し煮る。作り方は知らない。勘だよりだ。……ある程度、煮たらタレを入れた。よく分からないけど人参とジャガイモが柔らかくなれば肉を入れていいよね。
ちなみに野菜はキチンと入れ方を分けている。ジャガイモ、人参、玉ねぎの固い順に入れていって少し箸が刺されば次を入れるようにしている。さすがにそれくらいは常識だからなぁ。
「ん? 何?」
「……さすが、料理が上手ですね」
「まぁ、一人で暮らしていたし。この程度が出来ないのなら結婚した時に困る」
未だに女が飯を作るみたいな考えが理解出来ない。ってか、手が空いている人がやればいいだけで他にもやることあるでしょ。唯ばっかりに任せきるなんてしたくないしな。
何なら炊事、洗濯、掃除、全部を小学生の時に取得している。スキルも元からなのかもしれないな。いや、俺が忘れているだけで手に入れていたのか……?
「私のよりも美味しそうです」
「別にアテナの料理も好きだよ。味とかを比べているのかもしれないけどさ、アテナが料理を始めたのは進化してすぐだ。あんまり急いで上手くなろうとはしない方がいいよ」
「……怒られてしまいました」
嬉しいのか、そんなことを言いながら笑顔を浮かべている。この笑顔だけでもご飯がいただけそうだな。今度、やってみよう。本当にやったら変態でしかないからやる気はないけどな。
最後に肉を入れて弱火にする。だいたい五分間、煮込んでから火を止めてそのままにしておいた。時間は数えていないけどチャーシュー、もとい角煮の方も柔らかくなったので火を止めておく。
「……美味しそうです」
「後は夕ご飯の時に、ね。ご飯を炊いておいて……これで良しかな」
悪いけど焼酎に合いそうで怖い。俺自体はお酒を飲まない、ってか、こんな世界になってから忘れそうになるが未成年だ。それでも酒に合うか合わないかなんて匂いで分かる。これは確実に美味い。
莉子とキテンに気をつけながら夕ご飯を食べないといけないな。俺はそう思って火を止めたままでアテナと一緒に外へ出る。
拠点を出てアテナと一緒に玄関で外を眺めるとまだ暗くはない。唯や莉子はアレスの手伝いで少し外へ出ると言っていたので家にはいない。少し暇になったのでリサを呼んで庭でポーションを作り始めた。
そんな時だった。
「ヨーヘイはいるかい!?」
玄関に入っていくキュアさんの姿が見えた。
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以下、作者より
少し短めですが週二で投稿したので許してください。小さなイベントを書いていきながら1章の終わりを目指していきます。1章を百話ちょっとで終わらせることが目標ですね。もっと続きそうですけど……。
次回は来週の土曜日か日曜日に出そうと思います。
最後に総PV35000を突破しました。一年間と少し書き続けてようやくここまで来れたことに感謝の気持ちでいっぱいです。これからも応援、よろしくお願いします!
以上、作者からでした。
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