1章31話
置いて行ったことでキテンに怒られたが割と簡単に許してもらえた。なんでも出来ることなら早く素材の話とかもしたいらしい。病院を出てから唯達にリーネさんのことを聞かれたが、しっかりと説明出来たと思う。
「それで今回のダンジョンに行く目的はなんなんだ?」
「本を見れば分かると思うが無駄な説明はしない。今回、必要としているのはダンジョンの最奥に生えていると言われているルーン花だ」
村を出てからキテンに質問してみる。
ダンジョンの最奥というからには生半可な覚悟ではいけないよな。それに……最奥っていうイメージだと攻略まで進めなきゃいけない気がするんだが?
マップ内のダンジョンにピンを刺すと村の後ろの洞窟だけがヒットした。マップというだけあってレビューみたいなのもあるけど、かなりレベルが高いな。入口付近ではないが下層にはオークジェネラルもいるみたいだし。
「へぇ、他にはないのか?」
「あるがそれは準備した。森の中で見つけられるものなら俺達で十分だ。なんて言ってもドワーフは森の妖精と呼ばれるくらいだからな」
森の妖精、か。
それはエルフのイメージだけどそうではないみたいだ。もしくはドワーフとエルフは似た存在とかか? リーネさんを見る限りドワーフとエルフは険悪というわけではなさそうだし。
「エルフとドワーフは仲がいいのか?」
「あっ、いや、……リーネが特別なだけだ。エルフは誇りだけで生きているからな。人間族に攻められた時以外は手を貸したりしなかった」
「……悪い、聞いちゃいけないことだったな。それといいのか? 俺達は人間族だぞ?」
悪いことは謝る。それは人として当然のことだし出来ない人ほど嫌いなものはいない。老若男女問わず謝罪は必要最低限のマナーだ。
俺はキテンに謝罪をすると対してもキテンは気にした様子もなさそうに笑った。リサも笑顔で俺の片手を取ってギュッと握ってくる。
「……お前は特別だ。リサが信じられる存在なら俺も信じる。それが親として当然のことだしリーネも救えるかもしれないからな。それに……」
「それに?」
「いや、なんでもない。今、話すことではないからな。ほら、他には聞くことはねえのか?」
少し恥ずかしげに言葉を荒らげる。
そう聞かれると他にどんなことを聞きたいのかな。……特にないな。個人的には強くならないといけないし、魔物を倒さないと助けられないしな。後はパーティ分けとかをしておかないといけないくらいか。
いや、もう一つだけあった。
「ダンジョンの最奥にあるって言っていたがそれは攻略までいかないとダメなのか? あまり言いたくはないがダンジョン攻略と素材集めでは難易度が違いすぎるだろ?」
「安心しろ。ルーン花はダンジョンの攻略門の前に生息している。人がよく出入りしているダンジョンには見つけ次第取られるため生えてないだろうが、俺達の行くダンジョンは難易度が高くて人の出入りも少ない。ほぼ確実にあるはずだ」
「それでも十分難しいけどな。……とりあえずは乗り掛かった船だ。出来ることはする。リサのためにもな」
リサと繋がる手に力が宿る。
リサに軽く握られるだけでもそれなりに思うところがあるな。こんな小さな子……とはいっても見た目とは違って結構大きいか、そんな子が悲しむ姿は見たくないし。
「……お兄ちゃんらしいね。お兄ちゃんがやるなら皆、手を貸すから安心して!」
「手間をかけさせるな。まぁ、デパートの時みたいなことは減らすから安心してくれ。安全に少しずつダンジョンを攻略していく」
「……リサも手を貸す!」
「おう、頼むな!」
あまりいい事ではないけど楽しみになってきた。だってさ、画面でしか見た事のないゲームの世界が実体験出来るんだぜ。ゲーマーとしてはかなり嬉しいことだし何よりもダンジョンという言葉が俺の心を踊らせてくる。
「……盛り上がっているところ悪いが他には特にないか?」
「特にないな」
「そうか、それならついてこい。もう少しで到着する」
水を差されたとは思わない。
少しだけクールダウンしないといけないな。何事にも冷静さが必要だ。命を賭したものならば尚更、な。バトルロワイヤルゲームなら考え方に冷静さがなくなればすぐに負けるからな。一発二発の狙撃ミスでも焦らずに次のやり方を探る。俺はそれを友達と一緒に学んだ。
キテンのその言葉通り数分後にダンジョンの入口に到着した。洞窟と言っても崖みたいなもので、かなり大きなものだから村から出てすぐ入口とはいかないようだ。
中は漆黒とまではいかないが陽の光が少しだけ届いていて何も見えないわけではなさそうだ。だが、まだダンジョンの外から眺めてみただけなので入れば考えは変わるかもしれない。
入口前まで歩く。
よく分からない遠吠えが聞こえた。マップの情報から考えるにウルフ系の魔物だと思う。他にも色々な魔物がいるらしいから油断は出来ないな。
「ここから中には入れる。それじゃあ、今から行こうか。……と、言いたいところだがリサがいる手前、そうはいかない」
「ああ、俺も今日はやめておこうと思う。外から見て分かったが準備無しではいけないだろうな」
「よく分かっているな。このダンジョンは下に続く形で大きくなっているんだが、俺達も地下三階までしか行ったことがない。その下は松明すら付けていないから火の準備も必要だな」
なるほど、三階までは光があると。
それだけでも十分だ。地下三階まではチュートリアルだと思えばいいし、何よりも習うより慣れろ、だ。何事もやってみて慣れていくしかない。
「それで頼みがあるんだが」
「おう? なんだ?」
「薬草の生えている場所を聞きたい。薬を作るとするならばそこら辺の慣れも必要だし、それにここを攻略するのにポーションがいるだろ?」
実際はマップを使えば分かる事だが今回はキテンに花を持たせておく。ここを攻略一歩手前まで行くのであればキテンの協力は必要不可欠だからな。それにキテンは信用出来る存在だ。珍しく俺の第六感がそう叫んでいる。
「……それならリサに頼め。ここら辺の薬草類なら薬師になるって言って努力していたリサが一番適切だ」
「分かった。付き合わせて悪いな」
「俺のためでもあるからな。それに俺はお前を信じる。だから見せてみろ。良いだけ俺を惑わせるぐらいに大層なことを言ったんだからな」
人を失望させない。
一度、築き上げた信用ほど壊れやすいものは無いからな。そして再生するにしても最初に築き上げた時間の数倍はかかると思った方がいい。少なくとも俺はそれを被害者として実感した。だから俺はキテンに強く言った。
「任せておけ!」
「……頼んだぞ! さて、俺は先に帰らせてもらう。お前のせいでやらなきゃいけない事が山ほどあるからな」
キテンは嫌そうに言うがどこか嬉しげだ。
俺はこの笑顔を知っている。どこかで見た仲間達の笑顔、そして今は近くにいないアイツの笑顔。……これだけで信用されていることが分かる。それなら俺も信用し返して応えるだけだな。
「……後はリサがやるから任せて」
「おう、じゃあ、頼んだ」
「うん……」
キテンは先に戻っていった。
リサは繋いだ手を強く握って俺の顔を見つめてくる。小さく「リサのこと勝手に言って」と恥ずかしそうにしているが、そこがとても可愛らしい。誰にも壊されてはいけないものだ。
「道を教えてくれるか?」
「……いっつも取れる場所に行くね。無かったらごめんなさい」
「無かったら次の場所に行けばいいだろ? 敵はこの筋肉が倒すから安心しろ」
「どうも、筋肉だ」
アレスを指さして冗談で言った。
それなのにアレスは少し苦笑いでマッスルポーズをとりピクピクと上腕二頭筋を動かしていた。俺では出来ないから普通に凄いと思う。
「ふふ、面白いね」
「アレスは……馬鹿ですか」
リサは素直に笑ってアテナは軽口を叩きながらニッコリと笑う。何も言わずに全員が笑う今がとても好きだ。俺はこの仲間達を守りたいと素直にそう思った。
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以下、作者より
というわけでダンジョン攻略、リーネ救出、ドワーフの村編が始まりました。多分、最後のサブタイが一番ぴったりだと思います。最初の予定とは違いますがここで一章が終わるかもしれませんね。続きは書きながら考えようと思います。
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