1章9話 変わった世界

「異世界との混同ですか」


一番最初に反応を示したのは菜沙だった。

俺が頭を頷かせると菜沙は少し悩んだ素振りを見せ、「……意味がわかりません」とだけ言う。


「いや、俺も意味はわからないよ。でもそうじゃないと説明がつかない。まずは敵、魔物の出現だ。そして街の中央にそびえる森と建物、最後にこの国の名前や国土の広さだ」

「……? なんで国土とかもわかるの?」

「そういうスキルだと思ってくれればいいよ。まあ、俺がいれば地図とかは付けなくて大丈夫そうだしな」

「……それって、とってもすごいことなんじゃ……」


確かに周りの状況とかがわかるのはチートだよな。俺いれば戦力とか作戦を立てやすいし。


マップ持ちだからといって戦闘力が高いとも限らないしな。


「そんくらいでいいだろ」

「あっ、照れた」


唯に「うるさいな」と返しながら俺は顔を背けた。住宅街を抜け学校とは真逆の方へと向かう。


道中にはさほど魔物はおらず初日の喧騒が嘘のようだ。だがそれはなかったわけではない。そう証明するかのように道端に転がる死体の数。


十数ものカラスがその場にごった返し、死肉を、人としての弔いさえされない者たちを食らっている。


いつ、俺達がこうなるかわからない。

そう考えれば背筋が妙に凍えた。


「出た! レベル6のオークが4体、武器持ちがいるからそいつは俺が抑える!」

「遠距離は任せて! 菜沙ちゃんは唯ちゃんと一緒に二体のオークを抑えて!」


俺は転移を使うために得た空間魔法と一緒に得たあるスキルを発動した。特にエフェクトもないままで俺の視界にある情報が並ぶ。




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オーク

種族レベル 6

HP 150

MP 25

攻撃 95

知力 15

防御 95

精神 65

俊敏 25

魅力 5

幸運 15

スキル 身体強化1、棒術3

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相手のオークのステータスだ。俺が手に入れたのは鑑定、レベルも最高まで上げてある。


陽真たちにも鑑定を使ってみたが、さすがに時間がなさすぎて詳しくは見えていない。見えて覚えているのは??と書かれたスキルのみ。これは静にもあった。


ステータスは俺よりも明らかに低い。つまりは戦えば勝てたのだ。……やっぱり覚悟の問題か。


そんな暗い考えを消すためにオークをあしらいながら、三人の方を見てみた。


ステータスはオークの三倍ほどか。唯は知力方面にステータスが上がり始めている。菜沙と莉子は俊敏か。ただ莉子は知力が、菜沙は攻撃の方面の上昇量が高い。


莉子は戦い方がわかってきたのか、格段に動きがいい。いや、違うな。ゲームの時の立ち回りを思い出してきたのか。唯も同様。


危なげなく俺はオークの攻撃を逸らしていく。俺はオークを倒す気はない。できればその経験値は三人に与えたいからな。


にしても二対一でも案外戦えるものだな。それともオークがただただ愚鈍なだけか。


右にいるオークの剣をグングニールで下へと流し、左からのオークの剣は前に跳んでかわす。


「雷舞」


二体の足元を流れる電流はとても小さなものだが、オークたちの足を止めるには十分だった。


予想通り、相手の足を止められればいいのだからな。


「おっし、一体目!」

「まだです! 気を抜かないでください!」

「大丈夫、唯ちゃんは一度下がって!」


ちらりと見た三人は綺麗な連携でオークを圧倒していた。特に危機的な状況に陥ることもなく、二体のオークは息を引き取っている。


思いのほか三人の成長速度は早いようだ。ステータスに関してはそこまでではないから、戦闘に対する恐怖なんかが薄れてきたか。


そんな三人に麻痺して動くことさえままならないオークが敵うわけもなく、莉子のナイフによって首が飛んだ。


「ふう終わった」

「三人ともお疲れ様」


そんな簡素なねぎらいをかけながら、俺も自身のステータスを開いてみた。なんだかんだ言ってもオークナイトとかも倒しているからステータスは上昇しているだろう。




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カナクラヨウヘイ

種族レベル 17

ジョブ 1.見習い付与師

HP 3500

MP 4500

攻撃 355

知力 385

防御 355

精神 355

俊敏 355

魅力 500

幸運 500

スキル 身体強化7、経験値増加10、ポイント増加10、異次元流通4、異次元倉庫10、槍術1、マップ10、拠点10、付与10、鑑定10、召喚1、調教1

魔法 刻印10、拘束10、空間10、火5、水5、雷10

ポイント 2555

ログ 表示する

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「なっ」


ここまでだとは思っていなかった。ステータスの上がり方が半端ではない。ましてやMPの上昇率がおかしすぎる。


MPが空になったからだろうか。確かに使い切って倒れたから、なんてことはラノベでもあるしな。


あーやっぱり説明書が欲しいな。まあ今日から寝る前はMPを全部使い切ることにしよう。MPだけを充電できる道具なんかもあったからな。


今更だが異次元流通はとてつもないチートだった。えげつないよな、だって物を買ってここで売れば言い値で売れるだろう。


元のお金は生きるためには不必要だろうし、食料を求める人は多いだろう。そこは比例するだろうから俺からしたらぼろ儲けだ。


スローライフとかできそうだな。楽に生きれることはいいことだ。鍛冶師とかも目指してみようか。




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