1章8話 事実
「さて、行くか」
食事も程々にして俺たちは自室を後にした。その際に拠点化することも忘れていない。
朝食では朝からステーキとハードものであったが、空腹や唯の腕によりをかけた工夫によってそこまで胃への負担はない。最悪胃薬をと思っていたのだが拍子抜けだ。
マップを確認したが西園寺や陽真たちの行動はない。拠点に戻ったような感じだ。
西園寺の方のオークナイトLV34はまだ生きているし、体育館に向かった時のパーティメンバーも全員生きているようだ。
なんのために向かったのかは不明だが、それでも今は自分たちのことだ。俺自身、陽真と戦った時に少しだけ力不足を感じた。
オークナイトの低レベルとならサシで戦える。でも高レベルか数体来てしまえば倒せる各省は格段と落ちてしまう。
グングニールは確かにチートだし、ポイント制も周りに比べたらチートだ。ただ運営に消されるレベルではないような気がする。
時々ある最初っから強いエリアに入れて、道具を駆使すれば最強武器を手に入れられる、そんな穴に近いと思う。まあ、卑怯な手ではあるだろうが。
ちなみにだが転移の前にオークナイトは回収していた。なので売ってみたのだが、これが驚きの値段をたたき出す。
一体三十万だ。通常のオークの三十倍。命をかける理由はある……よな。じゃないと死に物狂いで戦った理由が見つからない。
よって総計百万ちょっとのお金を持っていることとなる。前の世界なら宝くじに当たったレベルのお金だろう。
大学資金にもならないだろうが。本当に大学前で世界滅亡が起こってよかった。まあ、来年は唯が高校進学する予定だったからその晴れ姿くらいは見たかったな。
「あっ、オークじゃない敵がいるな」
「えっ? どんな敵?」
「いや、うーん、ゴブリンだからオークより弱いと思うけど」
思いのほか食い気味で近づいてきた唯に仰け反る俺。仰け反った体に乗っかかってくるあたり、俺を苦しめにかかっているのかもしれない。
唯の胸は小さい、故に圧迫感などは感じないのだが。
「ちっちゃくてごめんね、お兄ちゃん」
「普通に口に出てますよ」
「私は大きいので大丈夫みたいですねお兄さん」
「……すまん」
そんな返答をしたが、唯一胸の大きい、といってもCカップくらいだが、唯や菜沙と比べれば格段に大きい莉子が二人を敵に回した。
唯もどこから出したかわからないがハンカチを口で噛んで、いーってやっているしな。
まあ、だからといって大きい胸が好きなわけではないのだが。俺のモットーは『見るなら巨乳、揉むなら貧乳』、つまりは触るなら貧乳の方がいい。
「なんか真面目な顔で変態的な言葉を並べていますね」
「……この中で胸が大きいのは……莉子だけだからね。かわいそー」
「唯ちゃん! 私の胸をあげるよ!」
立場が逆転したからか、唯は莉子に対して冷たい視線を向けている。心做しか、菜沙も同じ視線を向けている気がする。
「まあ、そんなことは置いておいて。どうする?」
「んー、多分だけどゴブリンってオークよりは弱いけど、数は多そうだよね」
「大概、Gと同じだとゲームには書かれていたよね」
例えが虫か。あまり好きじゃないからな。小学生の時はあんなに好きだったのに。
毛虫とか触って湿疹ができ始めて、そして妹と一緒に皮膚科に行ったのは良い思い出だ。
「……虫系の敵もいるのか」
「ファンタジー、だねぇ」
感慨深げに空を見上げる唯の頭を乱暴に撫でる。それでも喜ぶあたり本当にドMだと思う。
にしても虫系の敵ということは大きいのもいそうだよな。名前的にビックワームとかその類いだろう。
それならユニコーンとか麒麟とか、厨二心をくすぐる敵もいそうだ。そいつらを仲間にしたい。
バレないようにそれらしいスキルを獲得する。得たのは二つだ。『調教』と『召喚』というスキルで簡易説明にはこのように書かれている。
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調教〜魔物との親和性を高める。スキルレベルが高ければ高いほど魔物との従魔契約が成立しやすくなる。
召喚〜召喚士専用のスキル。自身の魔力によって心の中に枠を作る。そこに従魔や道具などを入れ、インターバルなしで外に出すことができる。
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召喚の説明が曖昧でよくわからないが、多分、武器の投擲などでの空白の時間はなくなりそうだ。
異次元収納の仲間を入れられるようなものだろうか。そして収納量はその分少なくなりそうだが。
魔物は敵のことだろう。ゴブリンとかオークで間違いはないだろうし、従魔は仲間にした魔物かな。
あー説明書が欲しい。
俺は万全を期すために、そういうものは絶対に見るタイプだ。攻略サイトとかは極力見ないけどな。
でも今は見たい。リアルとゲームではやっぱり違いの差が大きすぎる。グングニールの能力も扱いきれてはいない気がするし。
値段を見たら小国の国家予算並の金額だし。本当に上手く扱えれば龍も倒せるんじゃないだろうか。……怖いから戦いたくもないけど。
ゴブリン以外にも魔物がいないかとマップ内を詳しく見てみる。
「……あれ?」
「ん? どうしたの、お兄さん」
「……ここの国の名前って何だったかわかるよな」
「日本ですね」
そう、日本のはずだ。でもマップ内での俺たちのいる国の名前が違う。
「倭国……」
「倭国ですか。……昔の日本の呼び名ですね」
そして他国の名前も変わっている。殆どがなんとか王国や帝国となっているし、聞いたこともない国名ばかりだ。
異世界転移……したわけではないよな。マップの縮小をしてみたけど日本の形のままだし。他も大して変わらない。
国土が少し増えたのか。……いや、そうか。
「地球が異世界と混同し始めているんだ」
そんな俺の声が路地裏で響いた。
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以下、作者からです。
胸の件で次から気をつけようと言っていたのに、またやらかしてしまった洋平でした。
次回あたりからオーク以外との戦闘も出てきますし、異世界の原住民?も出てきます。早く森の中に入りたいですね(wktk)。
余談ですが1章は3から40話くらいの量を予定しています。おおまかに前半、中半、後半の三つくらいに分かれるかなと。
(ただ、予定は変わります)
以上、作者からでした。
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