1章5話 集団戦
「ブアァァァ!」
目的地にいたオークたちは、すぐに俺たちを捕捉した。そしてその瞳を唯たちを汚すような醜悪なものへと変え俺を苛立たせる。
本当は俺が殺してしまいたいところだが、そうも言ってられないだろう。
今回のメインは俺ではなく唯と莉子だ。
視線で二人へ合図を送り、それを見た二人は首を縦に振る。
「行くよ!」
「わかった!」
最初の戦い方は唯が前衛に立ち、後衛からパイソンを莉子が撃つと言った形だ。
悪くはないし現にオークの足にあたって行動力を削いでいる。だがそれは相手が低レベルだからだ。
莉子がそこまで考えているのか、それともいないのかは分からないが連携自体は悪くない。
「せいっ」
莉子のナイフがオークの腕に当たった。
そこをチャンスとして唯が腕を切る。鋼の剣は思いのほか良い武器だ。初心者が使えるものではない。
ゲームの中の話だが。
そんな時だった。
「ブルァァァア!」
一つの大きな声が背後から響いた。
視線を向けるとそこにいたのは鎧を着た腰に剣を刺す、一回り大きめのオーク。マップの確認ミスか、思ったよりも近くにいたみたいだ。
目の前にいるのがオークナイト。レベル自体は1だがオークとは明らかに雰囲気が違う。
「菜沙は莉子と唯の方に回れ、俺はこいつと戦う」
「……大丈夫ですか?」
頭を縦に振る。グングニール有りなら負けはしないはずだ。
渋々といった感じだが菜沙も「わかりました」と返してきた。許可は得られたのだろう。
菜沙が二人の方へ向かったのを確認してから俺はオークナイトの方へ駆け出した。
「雷舞」
地面の上を走らせてしまうと威力は激減してしまう。ただのオークならそれでいいが、こいつにはダメだ。だから直でいく。
周囲に数個の黒い雲を作り出し黄色い雷のエフェクトがかかる。瞬間、オークナイトの体を数個の雷撃がぶち当たる。
やっぱり効かないか。
オークナイトに傷も麻痺した様子もない。わかってたことだけど、ここまでだと落ち込むわ。
雷魔法では倒せないと早々に見切りをつけ、グングニールを持つ手に力を込める。
「シュッ」
グングニールの貫通力もさることながら切断力も高い。雷によって構えられたオークの剣ごとオークの左腕を切り落とした。
倒せる、そんなことを思った瞬間、体へと激痛が走った。腹への殴打、それに気づいたのは吹っ飛ばされた後だった。
でもダメージ自体は思ったよりは低い。小さなダメージという訳でもないが。
「雷束」
MPの消費が激しい。頭痛が酷いな。
それでも想像通りの魔法の使い方はできた。
最高レベルだけあって想像とは大差ない、それなりの本当の魔法だ。
雷がオークナイトの体を縛り付け、というよりも亀甲縛りをされている。しかも電気の力は消えていないためビリビリとしているのか、少し痙攣している。
だが、俺の体も限界に近い。早めに戦いを終わらせよう。
グングニールをオークナイトの頭に突き刺す。瞬間、起こった爆発によってオークナイトの頭は弾け飛んだ。
そのままオークナイトを倉庫に入れてから唯たちの方へ視線を向ける。大丈夫だ、今オークの頭が飛んだ。
そして再度、自分の周囲の方に移った。
「マジかよ……」
「ブルァァァア!」
オークナイトが三体、俺の目の前にいた。
普通にやばい、冷や汗が止まらなくなってきた。その時、一体のオークナイトが動きを見せる。
突撃、俺の体へぶち当たり中学校の壁まで吹っ飛ばした。背中に嫌な感触がする。骨の折れた最悪な感触だ。
なんとか間にグングニールを入れて、ダメージをいくらか逸らすことには成功した。でもダメージが少ないわけがない。
「お兄ちゃん!」
「ゲッハ……」
俺の目の前に血の水溜りができあがる。
汚いな、自分の血ってここまで汚かったのか。こんなものが体を流れていると思うと笑えてくる。
まだ剣で叩き切られたわけではないからマシかもしれないが、体へのダメージは大きい。それを狙ってやってたのか、と思うくらいだ。
ただ怪我を追わせていたぶろう、そんなことをオークナイトが考えられそうもないが。
体を起こそうとするができない。血を大量に出してしまったせいか。
目の前に迫ろうとしてきたオークナイト。それを抑えたのは菜沙の氷だった。
目の前に大きな氷壁ができ、莉子はヘイトを稼ぐためか銃弾をすべて撃ち込んだ。
そんな時だった。
「
聞き慣れた声がその場に響いた。
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以下、作者からです。
少し短いですがここで区切らないと変に話が伸びそうだったので区切らせてもらいました。
また1章1話の中にグングニールへ刻印を打ったことを書き足しました。把握よろしくお願いします。
以上、作者からでした。
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