序章10話 謎とレベル上げ
ステータスは人によって変わるのかもしれない。俺だけ高いのか。
いや、ただ単に若干と付いていたとしてもこれだけの上昇なのかもしれない。
だとすれば勇者にしていればどうなっていたのだろうか。
「まあ、後々考えよう」
思考を放棄して唯と菜沙の元へと向かった。
米はなかったようで豚肉を塩コショウで焼いたものが皿に乗せられていた。さすがにこれだけじゃ足りないだろう、と考えたのか野菜炒めもあった。
とても美味しそうだけど、なぜ肉野菜炒めにしなかったのかは謎だ。
「これで足りるかな」
「足りるんじゃないかな。まあ、足りなかったらサンドイッチでも食べればいいから」
倉庫の中には三ヶ月分くらいあるし、炊けば食べられるご飯もある。パックご飯とかもあるし。
唯は俺の言葉を聞いて「わかった」とだけ返してきた。棚に入っていたナイフとフォークを水で洗い流してから布巾で拭き、皿の隣に並べる。
お腹が減っていたこともあり、すぐに食事を終え窓の外を見た。まだ暗くなっていない。
夕暮れまで一時間程度はあるだろう。
いっそ、レベル上げでもしようか。俺自体、あまりレベルは高くないしな。
思いのほか肉の量が多くて腹も膨れたことだしな。
ポイントをより多く獲得できるスキルが欲しい。それなら戦わないといけない。
どうやって言い訳して外に出ようか。俺はマップで周囲の状況を探りながら考えた。
一人の動き回る点が見つかる。青い点で俺と敵対することはないのだろう。
マップ内では菜沙も青なのだけれど。
個体名は、上川莉子か。
なるほどね、唯の友達だ。後ろからはオークが迫っているようだな。
ただのオークでレベルは5なのが四体。俺一人で大丈夫そうだ。
「唯、ちょっと行ってくる」
「えっ、どうしたの」
そんなことを聞いてくる唯に目配せして、
「ここで待っていてくれ、莉子を連れて戻ってくる」
そう言って俺は調理室を出た。唯が「えっ、莉子」と頭が追いついていないようだが、菜沙がいるから追ってはこないだろう。
莉子がいるのは三階だ。少しずつ追い詰められているようで、レベル1のオークが一体加わった。
「ブアァァァ」
俺を見つけたことで雄叫びをあげ、向かってくるオークもいたが全てグングニールのサビとなっている。
レベル1のオークを三体殺したので、ポイントもいくらかは増えた。個体差があるようで大きくポイントを得られる時と、そうじゃない時で分かれているようだ。
コンピューター室に莉子は逃げ込んだようだ。だがそこで動かなくなっている。
嫌な予感がした。オークも迫ってきているというのに。
そう思って着いて早々、扉を蹴破った。
そこで見たものは数人の男子生徒と、尻餅をついた莉子の姿だった。
「莉子!」
「……えっ、お兄さん……」
俺を見たからか安心して抱きついてくる莉子。
莉子は小学生の頃からの付き合いで、長女としての立ち振る舞いに疲れを感じて、俺に時々甘えてくる。
そんな所は今でも変わっていないようだ。頭を撫でて「安心しろ」と言う。
「少し隠れていろ。もう少しであいつらが来るから」
豚は鼻が利くと聞いたことがあるが、オークもそのようで微かな莉子の匂いから追ってきているようだ。
確かに莉子は可愛いし、オークとしては孕ませたいのだろう。オークに美学センスなんてものがあればの話だが。
コンピューター室の最後方にある用具入れに莉子が隠れたのを確認してから、俺はグングニールを持つ手に力を込めた。
隠れて一分も経たず蹴破られた扉からオークの顔が出てくる。
「火球」
瞬間、オークの顔が燃えた。
レベルが5だとはいえ、油断はしない。顔を手で覆ったがそれでオークの怒りの炎に油を注いでしまったようだ。
突撃してくるオークの首の部分にグングニールを刺して、すぐに引っ込める。少しわかった、攻撃をする際に爆発のイメージを持たなければそれは起こらない。
さすがに狭い密閉空間であるコンピューター室で爆発は起こせないからな。
レベル5のオークを潰して廊下に出た。すぐに来た、だが待っているので関係がない。
「狭い場所で戦うわけがないだろう」
タイマンならまだしも、四対一なら廊下の方がいい。
「ブアァァァ」
何度も聞いた鳴き声を聞いてから、突撃を仕掛けてくる四体。
今更だがレベル5のオークは肉切り包丁を持っているようだ。さっきの奴も持っていた。
単調的な攻撃、連携のれの字もない。
俺を囲んで肉切り包丁で切れば、楽に俺を殺せるかもしれないのに。
「火球」
少し頭がクラクラするな。魔法の使いすぎか。だが想像通り火の玉を四つ作り出すことができた。
オークの顔に被弾させる。
二体は得物で軌道を逸らしたが、二体には直撃。レベル1の方は熱さから後方に飛んだ。
それが悪手だったようで、逸らされた火球はレベル1のオークの腹に直撃した。
そんな小さな奇跡が少し面白かった。
学校自体は長い歴史を持つため木造建築だ。
つまりオーク以外に火球が着弾すれば、学校が燃える。それはさすがにダメだ。
今度からは火球を使うのを控えようと心に決め、勢いの止まらない火球を逸らしたオークの片方に、グングニールを伸ばした。
もう片割れは肉切り包丁を振り下ろしてきたが、横に飛んでそれを躱す。同時に攻撃をしたけたため、オークはガードを取ることができない。
小さな実験だ。多分、失敗しないと思うが、失敗したら学校にも影響があるかもしれない。
結果、一体のオークの頭が爆散した。
成功した。
それを見て少し怯んだ二体のオーク。少しで充分だ。
「水球」
水の玉が三つオークに向かって飛んだ。
ぶつかった瞬間に弾け、三体のオークの顔を濡らす。それを見てあまり使えないことに気付いた俺は、水球の使い道を後で考えようと決めた。
水球によって意表をつかれた高レベルオークの頭にグングニールを刺す。爆発、辺りに血の霧が待った。
これで確信した。爆発の威力も調節ができる。そのままオークの遺体を蹴って、横からの肉切り包丁の攻撃を躱す。
そのままグングニールを引いて、地に足がついた瞬間、横薙ぎで首を飛ばした。
怯えていた低レベルオークの頭もすぐに飛ばして、戦いは幕を閉じた。
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