序章8話 辛いことを強いた
ポイントの総計は三千弱あった。たかだか十体ほどのオークで、と思ったがそれは違うだろう。
ポイント増加とレベルアップがかなり効いているようだ。レベルが十になっておりジョブにつけるのだろう。
まあ、それは後回しでいいだろう。
今は二人を優先しないといけない。
ポイントをタップしてスキルを表示させた。
お金でもスキルを買えるみたいだけど、ポイント形式を持つ俺以外への対処のためだろう。
千五百使うことにはなったが、スキル『マップ』を獲得した。もちろん、スキルレベルを最高まで上げておく。
ポイントからのスキルの獲得で駄目なところは一つだけ。スキルの説明がないのだ。
だからこそ取る前に異次元流通から説明を見ておいた。必要なスキルであり、俺の求めていたものであった。
「少し気持ち悪いな……」
「ん? どうかしたの?」
俺の呟きに唯がそう聞いてくる。
一応「なんでもない」と返したが気分が悪いのは変わらない。マップを使った瞬間に視界が二重になったのだ。
背景が周りの情景で周囲の情報が地図として書かれている。例えば敵は赤い点、仲間は青い点だ。関心がないものなら書かれない。
後はオークと検索すればオークがいる場所が緑の点がうたれる。とてもわかりやすい分、慣れないと扱いづらいな。
最初こそオークの少ない場所の方がいいだろう。まだ調理室は取られていないようだし。
それに乾パンとかも回収できるなら、と思ったがそれは要らないか。買えばいい買えば。
「図書室に向かうぞ」
俺は二人にそう声掛け、図書室に向かった。
敵がいない場所を通ったため、少し時間がかかったが無事到着できた。
図書室の扉の前に来ていただけだがわかる、中にオークがいることは。
すごく鼻息の荒い豚の鳴き声が聞こえる。何度聞いてもこの嫌悪感は拭えないな。
「中に三体いる。俺が怪我をさせて動けなくさせるから、二人が一体ずつトドメをさせ」
したくない事だけど二人に汚い豚を殺させないといけない。穢れないといいのだが。
「……わかりました、そうしないと生き残れないですもんね」
菜沙は納得したようだ。
唯もそれを聞いて頷く。そんな二人を見て頭を優しく撫でておいた。
「固くならなくていい。一緒にいられる間は守ってやるから」
俺の容姿はそこまでイケメンではない。だからといってデブでブスということもないがな。
だから菜沙が顔を赤らめる、なんてラノベ展開もないようだ。少し悲しいけどな。
「んぐっ」
「お兄ちゃんは変わらないよ」
また腹に突撃を食らった。ある意味、唯の突撃はオークのそれより重い気がする。
静かに扉を開けた。
オークは名前だけに奥の方にいるようだ。
俺は駆けて三体との距離を詰める。
足を切った。行動ができないように。
それを見て二人が入ってきた瞬間、オークが下卑た笑みを浮かべる。酷く汚い、二人に向けられるべきではない視線。
「ブヒャァァァ」
無意識に三体の腕を切り落としていた。
それをカバーするために俺は口を開いた。
「二人とも首を切れ」
俺は二人に命令をして、手本のように一体のかオークの首を掻っ切った。
それからすぐに二体のオークの声が消える。
「……ごめんな。辛かっただろ」
二人にそんな声をかけた。
自己満足のためだとわかっていながら、そんな言葉を表に出してしまった。
酷い自己嫌悪に襲われる。
「……生きるためです」
そんなことを言う菜沙。
「お兄ちゃんのためだから」
唯はブレないがそれがとても嬉しい。
「それとステータスを手に入れることができました。どうしましょうか」
菜沙はそう言って話を変えようとしてくれた。本当に優しい子だ。
「今のところは調理室に行こう。……二階だったよな」
二人は頷いた。
それを見てオークを回収してから、数冊の本を倉庫に入れた。
そのまま俺たちは図書室を後にする。
マップを手に入れて正解だった。オークの数が増え、俺でさえも死ぬかもしれない数になっている。
それの抜け道を探して行動した方が時間短縮になる。マップのオークの名前の隣にレベルが表示されているが、かなり高い。
最初こそ敵が弱かったが、もう強い敵が現れ始めているようだ。敵も人を殺せばレベルが上がるのか、それとも同士討ち、いや種族の違いから戦ったからとかか。
どちらにせよ、そいつらと戦って二人を守れる自信がない。
オークソルジャー、レベル34とかは普通に無理だろう。
なんとか調理室の目の前に来てから扉を開ける。鍵はかかっていないようだ。実際、すぐ近くに職員室もあるので、鍵を取りに行ってもいいのだが。
手間が省けた。
中に入り中から鍵をかける。
二人とも調理室に入ったのを確認してからステータスを確認した。
ポイントはまだ残っている。千五百あるので千使いスキル『拠点』を手に入れた。
スキルレベルを10にして使用する。
体から力が抜ける感覚があり頭痛が酷くなってきた。調理室が白い光で包まれる。
そんな景色とともに隣にいた唯の方へと体を傾け、意識を飛ばしてしまった。
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