第46話 RPGでは4人目が入れ替え制になる事が多々ある
「もうバレてるようなので話しても?」
依頼者である学園長に許可をもらう。
「あぁ。ミズキさん、彼らの事は今のところ内密に」
「なんとなく察した。彼らはこの件で呼んだ冒険者かな? 年はだいぶ若い
ようだが」
貴族の多い学園で生徒会長をしてるだけあって鋭いなぁ。
「その通りですよ。さすが生徒会長さんですね」
「それと、そなた達からは学生的な雰囲気があまり感じられないのだ。やけ
に落ち着いたところとかな」
「そんな事ないですよ」
生徒会長さんには俺の自己紹介の前のあたふた具合を見せてあげたい。
「それじゃ本題に入りましょうか。いくつか質問させてもらいます。学生用
ダンジョンの地図を出してもらっていいですか?」
学園長に頼みダンジョンの地図を広げてもらう。
2層だけという初心者ダンジョンよりも初心者ダンジョンしてるのがこの学
生用ダンジョンの特徴だ。
「まず第一にミズキさんはどこでそのモンスターにデスらされましたか?」
ミズキさんは地図を眺めた後に指で差した。地図の外側を。
「つまり新しい道が出現したって事ッスか」
「半分正解で半分間違いだ。通路や道というよりもアレはおそらく新しい階
層だとわたしはみた」
「それだとはじまりの街の霊廟と同じ事になりますね。何が出現してもおか
しくないですよ。ただ、神様が学生用ダンジョンにそんな階層を作るとは
思えません」
クロエ様が学生用に作るなら甘々のダンジョンにすると思う。実際にスライ
ムとスケルトンしか出ないダンジョンだったわけだし。
「次の質問に移りますね。直球で聞きますが、ミズキさんはなんのモンスタ
ーにデスらされましたか?」
ミズキさんは思い出すかのように腕を組み考えている。やがて少しずつ話し
出した。
「わたしは生徒会長としてデスる事を覚悟でダンジョン授業を受けた。だか
ら、この目にしっかりとやつの姿を焼き付けたのだ。あれはヴァンパイア
ではない。ヴァンパイアならば目を見れば一発でわかる。わたしがデスら
された相手の目はドス黒い色をしていた。そしてその姿はモンスター図鑑
にも載ってなかった」
ヴァンパイアでないなら対処できると思いきやとんでもない情報を得られた
みたいだ。
「モンスター図鑑にも載ってないって、それって新種って事じゃない!」
黙って話を聞いていたエリーが興奮しながら言う。
数々のダンジョンがあるが、最下層まで攻略されていないダンジョンは数え
る程しかない。その事からほとんどのモンスターは既に発見されているのだ。
エリーが興奮するのもわからないでもない。
「これは提案ですが、問題が解決されるまでダンジョン授業は浅い階層で行
うかデスる事に抵抗のない人だけの自由参加にした方がいいかと。正しく
デス慣れする前にトラウマになってしまうとデスる恐怖が強くなりますか
ら」
学園長はほとんど間を置かずに頷く。
「それがいいだろうな。生徒の安全が第一だ」
「わたしもそれがいいかと」
学園長もミズキさんも賛成なようで一安心。2人にはやってもらいたい事が
ある。
「俺達は準備でき次第、明日にでもダンジョンへ潜ろうと思います。明日も
しもダンジョン授業のあるクラスがあるなら休講にしてもらっても構いま
せんか?」
「あぁ、わかった。その辺の処理はやっておこう」
「それとお2人にやってもらいたい事があります。まずはこの件で獣人王に
推薦された冒険者を雇った事を学園内外に広めてください。それで一先ず
生徒や住民を安心させる事が今の学園都市には必要だと思います」
生徒会長はあまり良い顔をしていない。何かおかしな事でもあったかな。
「さすがに獣人王様の名前を勝手に使うのはまずいのではないか?」
そういう事ね。今回、思い知った。若い冒険者というのは侮られる事が多い。
経験不足は否めないからなぁ。
「事実だから問題ないわ! アドバンの都市長、ギルドマスター、獣人王サ
ドニアの推薦でここに来てるのよ」
「という事です。大々的に広めて安心させてあげてください。ないとは思い
ますが、もしも俺達の手に余るモンスターであるならば上級冒険者の派遣
を頼む事になります」
「知らぬ事とはいえ失礼した。見た目の年齢で判断するとは浅はかであった。
わたしは動揺の広がってる生徒を抑えよう」
「ワシは学園の内と外へ向けて情報を流しておく」
スパイといえば情報操作。
その上、新種の発見かもしれないなんてなんて面白くなってきた。
今夜はジャックも含めてダンジョン攻略作戦会議といこう。
「集めた情報をまとめると、敵は新種の可能性が高い。それに相手を一撃で
デスらせる何かを持っていると思った方がいい」
ジャックに言われハッとなる。全員が全員、一撃でデスらされてる事を鑑み
るとその可能性が高い。
「単純に攻撃力があるのか、それとも何かのスキルなのか。全く検討がつか
ないッスね」
「隠密を使って暗デスさせられてる可能性もあるね」
「もしも隠密を使えるとしたらかなり厄介よ!」
下位のモンスターがスキルを使う事はない。スキルを自在に使えるという事
はその時点で中位以上の強力なモンスターである証明だ。
俺達はボス以外で特殊なスキルを使えるモンスターとの戦闘経験があまりな
い。
迷宮魔窟でグレイゴーストやエビルガイストが物体をすり抜けできたのは特
殊スキルの効果だからだという。あれは厄介だった。
クロエ様に言われた通り充分気をつけて戦おう。そうすれば良い経験になる
はずだ。
「新種だとしたらどんなスキルを使ってくるかわからない。いつも通り広範
囲警戒と罠感知はクゥに任せたよ。エリーはヤバイ相手だった場合、撤退
するか先制攻撃をするか判断してね」
「了解ッス。ヤバイ敵を感知したらすぐ逃げるッス」
「任せておきなさい! ヴァンパイアクラスなら即逃げるわ!」
頼りになるのかならないのかそんな返答をされたがいつもの事だし大丈夫だ
ろう。
「ロック、今回俺も臨時でパーティーに入れてもらえないか?」
「いやよ!」
エリーが即答した。
「ちょ! エリー様少しぐらい考えてくださいよ」
「わかったわ! いやよ!」
少し考えて即答した。俺としてはジャックが一緒に来てくれるなら心強い。
ここまでの嫌がられっぷりは少し同情してしまう。
「エリー、今回は何が起きるかわからないしジャックにも来てもらおうよ」
思えばこういったやり取りを村にいた頃からしてた気がする。男からの信頼
は厚いのに女の人達からはなぜか距離を置かれていた。
普段の行いがあるといえばあるのだが、それにしてもここまで嫌がらなくて
もと思ってしまう。
「ロックがそこまで言うなら仕方ないわねぇ。その代わり撤退する時はあん
たが
「わかりました! ありがとうございます!」
「この人、お礼を言うところ間違ってないッスか」
いいんだ。いいんだよクゥ。世の中色々な人がいていいじゃないか。
ほら、見てみなよ。踏まれて喜ぶジャックのあの
「ジャックさん、どん引きッス」
色々な人がいてもいいと思ったけれども踏まれて喜ぶのはさすがにどうかと
思った。クゥが言う通りどん引きだった。
今日は数日振りの冒険者スタイル。初めて着た制服も新鮮だったがやはりこ
の姿が一番しっくりくる。
学園長にこれからダンジョンへ潜る事を告げる。
「よろしく頼んだよ。ダンジョンの入り口の衛兵には伝えてある」
「わかりました。それでは」
挨拶も手短に済ませ。ダンジョンへ向かう。
学生用ダンジョンは学園の職員棟の地下に入り口があった。
学園を作った時にそういった作りにしたようだ。
階段を降りていくと門が設置してあり、その前に2人の衛兵が立っている。
「学園長から話がきてると思いますが冒険者パーティーの者です」
「おぉ、話は聞いてるよ。1人以外は随分若いから学生と職員かと思ってし
まったよ」
学生と職員という設定で潜り込んでましたからね。
「よく言われますよ。開けてもらってもいいですか?」
「あぁ、今開けるから待っていてくれ」
鍵と鎖で厳重に施錠された門が音を立て開かれていく。
「それでは気をつけてな」
「任せておきなさい! このダンジョンを塵も残さず豪快に吹っ飛ばしてや
るわ!」
「エリー様! お願いします!」
エリーさんお手柔らかに頼みますよ。物理的に燃やされたり、凍らされたり
して何日も入れなくなるのだけは勘弁してください。
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