第4章 ノースヘッド学園
第42話 学園都市での学園生活のはじまり(偽)
ノースヘッド学園は迷宮都市とは正反対も正反対。
大陸の最北端にあるこの場所は、一年の大半が雪と氷に覆われた極寒の地。
防寒着を着込み厚着をして、途中からはソリ付きの大型獣に各自乗り換えて
進んだ。
「この子って一応ドラゴンなのよね! その割に大人しくてかわいいわ!」
自分の乗ったソリを引っ張ってるドラゴンを撫でる。普通のドラゴンならこ
んな気軽に触らせるなんてありえない。触ろうとしたらデスッてる。
「オロローン!」
だが、このドラゴンはよく調教されてるようで人間にすごく懐いている。
「この子達はアースドラゴン。調教されてても普通はそんなに懐かないンゴ。
(この子達はアースドラゴンなのですわ。騎乗できる様に調教されています
が普通はそこまで懐かないのですよ)」
試しにとばかりにアーヤさんが自分の乗ったアースドラゴンを恐る恐る撫で
てみる。アーヤさんの乗っているアースドラゴンはチラッと後ろを見た。
「ブフォッ」
鼻息を噴いただけでムスッとしている。特に懐いてる感じはしない。俺とク
ゥも撫でてみたが、アースドラゴン自ら体を手にこすりつけてきたり懐いてく
れている。
「アースドラゴンって強者には逆らわないって聞いた事があるッス。それが
関係してるのかもしれないッスね」
「それならクゥも強者って事になるね。頼りにしてるよ」
「勘弁してくださいッス。戦闘は怖いッスよー」
「クゥが戦闘にも特化したらわたし達に敵はいなくなるわね!」
「なんかうちだけエモい(わたくしだけ懐いてくれないなんて寂しいですわ)」
普通の学生であるアーヤさんにはちゃんと従いはするけれども、心を許すと
ころまではいかないという事なのかもね。
ノースヘッド学園に到着して驚いた。
門で
学園都市が形成されていた。
「ロックさんどちゃくそ驚いた顔してて草 (ロック様、驚かれましたか?
黙っていて大成功です)」
「うん、驚いたよ。学園だけがポツーンとしてるのを想像してたんだ」
「それじゃ無事着いた事だしまずは教会に行っておきましょ!」
新しい街に着いたらまずは教会でお祈りする事が冒険者の基本だからね。
俺達はアーヤさんに教会の場所を教えてもらい教会へと向かった。
クロエ様へのお祈りを済ませると少しの寄付金を渡し教会を出る。
「お祈りも済んだ事だし、依頼人である学園長のところに行こうか」
再びアーヤさんの案内で今度は学園へ向かう。
学園の入り口で守衛さんに依頼書を見せ面会の手続きをする。アーヤさんは
学生証を持ってるので素通りだ。
「こんな真昼間なのに街の中に全然人が出歩いてなかったッスね」
お店は開いていたが、街中では数人とすれ違うだけでどの人も足早に通り過
ぎていく。
「うちがアドバンに帰る前は沢山人いたのに。なんかこわたん……。 (わた
くしがアドバンに帰省する前はたくさん人がいらっしゃったのに。なんだか
わたくし怖いですわ……)」
「その間に何かあったのかもしれないわね!」
「とりあえず、学園長の下へ急ごう」
何か奇妙な雰囲気を感じながら学園の中を歩く。学園の中も授業中なのかも
しれないがやけに静かな気がする。
来賓用玄関から校舎内に入り2階へ進む。
「ここで学園長とエンカできるよ (ここで学園長とお会いできますわ)」
案内された部屋にノックをして入室する。
「失礼します。迷宮都市アドバンから依頼で来た冒険者です……。え?」
「よぉ、ロック。遅かったな」
恐らく学園長と思われる薄毛の男性と向かい合っているのはジャックだった。
「なんであんたがここにいるのよ! さてはあんたストーカーね! ロック
の!」
「そこはせめて女の人相手にしてあげないッスか?」
「ホモが嫌いな女の子はいない。ワンチャンあるかも。 (男性同士の麗しい
友情を嫌いな女性はいませんわ。もしかするとそういう事もあるかもしれま
せんわね)」
俺は先輩であり友人でもあるジャックがそんな事はないだろうと思う。
「俺はジャックを信じてるよ」
「そのセリフ余計怪しく聞こえるからな!? 俺は派遣パーティーの選定中
だという事を先に伝えに来たんだよ」
学園長を完全に無視した会話を続けてしまったので改めて挨拶をしよう。
「俺は派遣されたパーティーのロックです。こっちはエリザベスとクゥです」
学園長は俺達を上から下までジロジロ見るとこう言った。
「ふむ、うちの学生とたいして変わらない年齢ぐらいだと思うのだが。本当
に大丈夫かね?」
それにエリーが反論しようとするが、その前にジャックが答えてくれた。
「彼らは迷宮都市アドバンにあるダンジョン、迷宮魔窟の最速クリアタイム
保持パーティーですよ。今回、獣人王サドニアさんも推薦してるぐらいな
ので見た目に騙されると痛い目を見ますよ」
「お、おぉ。そうだったのか。それは失礼な事を聞いてしまったな。すまな
い。それでは依頼の話に入りたいのだが……」
アーヤをチラッと見る。もしかしたら学生のアーヤには聞かれたくない話な
のかもしれない。
「アーヤ、ごめん。依頼の話は無闇に聞かせられないから外で待っててもら
ってもいい?」
「あーね。気づかなくてサーセン (そうですわよね。わたくしったら気づか
なくて申し訳ないですわ)」
快く退室していった。外で待っていてくれてるだろう。
「学生のアーヤに聞かせられないような話ってなんなの?」
学園長は腕組みをして目を
かポツリと答えた。
「それがわからんのだよ」
その言葉に無言で答える。何の前情報もない俺達は余計にわからない。
「すまないな。言葉が足りなかった。元々は突然、死に戻りが増えた学生用
ダンジョンの調査依頼をしてもらうつもりだった。事前に情報を集めよう
と教師や学生に聞き込みをしたが、皆が皆怖がっていて口が重いのだよ。
そして、この数日で噂が噂を呼びついには街の人までが恐れるようになっ
てしまった」
学園長は本当に困ったように頭を抱え込んでいる。むしろ学園長自身も恐れ
ている様子が
「
「学生用ダンジョンに謎のモンスターが目撃されている。はじまりの街のア
ルメイダの霊廟のようになってしまったのではないかとか、強力なモンス
ターであるヴァンパイアがうろついているんじゃないかとか……。冒険者
ならアルメイダの霊廟の件は知っているだろう?」
よく知っています。アルメイダの霊廟をそうさせてしまった張本人達が今、
あなたの目の前にいるんですから。
「君達の見た目は若い。アーヤくんとも仲が良いみたいだし、学生に紛れ込
んで情報を集めて問題の解決に当たってくれないか?」
アーヤに聞かせられなかったのはこれが理由かぁ。アーヤなら「おけまる
(大丈夫ですわ。わたくしも協力いたします)」とか言いそうだけどね。
「わかりました。もとより依頼でここまで来たので情報収集から開始します」
「さっきまで俺も学園長と話してたが謎だらけだ。何が起こるかわからない
し俺もしばらくこっちにいる事にしたぜ」
「ありがとう。ジャック! 心強いよ」
エリーはジャックを不審げに見て指差しながら叫んだ。
「わたしは騙されないわよ! ロック逃げて! 狙われてるわ!」
「修羅場ッスか!?」
雪と氷で閉ざされた学園都市で一体何が起きているのか。
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