第15話 解錠できるモノ
霊廟に行きスケさん相手に2人がかりでシューティングしてるとあっという
間に1週間は過ぎていった。
「スケさんあまりに弱過ぎて飽きたわ」
「グールの出現エリアは全然マップ更新されてないらしいから、宝箱も確実
にあると思う。解錠スキル覚えるまで我慢我慢」
俺もスケさんに飽きていたが急激な成長に経験が追いついてないとも感じて
いた。
「この成長した感覚のままで経験を積んでおきたいのもあるんだよね」
「それはわからないでもないわ。わたし達初心者でしかないもの」
俺も初心者とほぼ変わらないし、エリーにいたっては駆け出しなんだよね。
ただちょっと他のパーティーより火力過剰なだけで。
嬉しい事に大量のスケさんを狩る事でスケさんのレアも手に入った。
確かに狩りまくってはいるが、最近レアの確率が高過ぎる。1年ちょっとの
間、冒険者としてやってきたがレアなんて2回しか拾えてない。
「欲しい時に出なかったのになんで今更出るのよ!」
地面をガンガンと靴の踵で踏み鳴らし悔しがるエリー。
エリーは悔しがっているが知り合ってからのレアドロップ率を考えると、も
しかしたらエリーはとんでもない幸運の持ち主なんじゃないかな。
「ジャックが言ってたよ。そういうのを物欲センサーって言うんだって」
「物欲センサー? そんなの魔法で吹き飛ばしてやるわ!」
文字通りグールを魔法で吹き飛ばしてお金の力で手に入れたもんね。
今日は待ちに待った解錠スキル講習日。これを取得したらグール出現エリア
にメイン狩場を移そうと思っている。
以前受けたスキル講習と同じように受付で名前を呼ばれるのを待つ。
解錠スキルは人気なだけあってギルド内は人が沢山待機していた。
「さすが人気スキルだけあって人でいっぱいだね」
「次いつ受けられるかわからないし一発で取得してやるわ」
スキル講習は一発で取得できるかわからないところが怖い。今まで全部一発
で取得できたが解錠は予約が取りづらいから本当に落とす事ができない。
名前を呼ばれ今までとは違う大きな部屋へ通される。中には既に呼ばれた人
達が座っていた。
俺とエリーも空いてる場所へ座って講義が始まるのを待つ。
しばらくすると席が全員分埋まった。キャンセルも欠席もなしという事かな。
やっぱりすごい人気。
講師の人が前のドアを開け入ってくる。だいぶ小柄だけど歩き方だけでもわ
かる。全くスキが見つからない。
「こんこんー。そんじゃ始めよっか」
気軽な話し方で話してるが今受講者の一人一人が分析されてる。目の眼球が
微妙に動いてるのがわかった。気づかないフリをして目線を外しておこう。
「まず、解錠スキルは成長型スキルなんだ。だから今は開けられなくても将
来頑張っていれば成長して開けられるようになる事もある。もしもダンジ
ョンで自分の手に負えない宝箱に遭遇したら、どうか触らずにいてほしい。
その中身はもしかしたら大切な誰かのために使われる物かもしれないから」
隣を見るとエリーが感動でウルウルしていた。
「ここから実際の例を出して詳しく解説しちゃうからね」
宝箱と仕掛けられた罠の種類、解除に使うツール類の紹介、その内ダンジョ
ンに入る時に最低限用意するツールとアイテム。
成長型だけあっていきなり高難度の宝箱は開けられそうになさそうだ。
「んー実技だけど人数多いから何組かに分けてやろっか。悪いけどその間他
の人はこの部屋で待機してて」
俺達は最後の組に振り分けられたのでかなり待たされそうだ。
「ロック、わたし間違っていたわ! 開けられない宝箱を見つけても決して
魔法で吹き飛ばしたりなんかしない。いつか自分の手で開けられるまで!」
「うんうん。エリーは間違いを認められる子だよね?」
「愚問ね! わたしは自分の
ーだけは絶対に許さない」
大層お怒りでした。物欲センサーさん! 逃げてー!
それにしてもあの講師の人はなんであんなに受講者の観察をしてたんだろ。
それは俺達の組になってわかったんだ。
「はい、そこの大柄なきみー、こっちきて」
「俺か? 一体なんだよ講師さん」
俺の前にいた大柄な男が呼び出される。
「いやーさすがに空き巣で手配中のきみに解錠スキル覚えさせるわけにはい
かないっしょ」
「!? クソッ! バレてたのか」
「手配書回ってきたのが予約後だったからね。大人しくこっちにきなさい」
「バレてたなら仕方ねぇなぁ。なんて大人しくするか」
大柄な男は俺に襲い掛かってきた。
俺はスケさんと同じように爆散……は死に戻りで教会に送られてしまうので
最小限の動きで身をかわし、背後から飛びつくと首を絞めた。
少しの間暴れてたが暴れる事で余計に首が絞まりすぐに気絶した。
「パチパチパチ。お見事。すごい動きで驚いちゃった」
「見てないで助けてくださいよぉ」
「思わず魔法をぶっ放すところだったわ! 巻き込みを気をつけたのよ?」
「エリー気を使ってくれてありがとう」
スキル講習中にデスるとか本当に笑えない。エリーがぶっ放したらこの周辺
にいる人達全員デスりかねない。
「だって僕が手出しするよりきみの方が処理早そうだったからね」
「結果的にはそうでしたけども。対人戦って初めてだったんですよ」
「初めてでアレかい? 末恐ろしいね。きみはきっと上を目指せるよー。早
く上がっておいで」
大柄な男は待機していた複数の憲兵に担がれていった。
「気を取り直して続き続きっと」
俺とエリーは実技も難なくクリアし、解錠スキルを取得して免許も貰えた。
2人で恒例のおめでとう会を宿屋の食堂で開き、段々増えてきたスキルを見て
ニヤニヤしていた。
「わたし達、今スキル見てニヤニヤしてたわよね?」
「それは強くなれてきた証拠がスキルとして目に見えるからだよ」
「ジャックに以前言われたけど戦闘狂になってないかしら……。」
「大丈夫だよ。この間のすごいかっこ良かったよ。「氷像となり粉々に砕け
散りなさい! アイスアロー!」って叫んで20連発ぐらいしてたの」
「ホント!? あれ、すごい考えたのよね! 地獄の〜とか言っちゃうと上
位の魔法詠唱と被っちゃうし」
破棄できない部分を含めた時にどれだけのオリジナリティを詰め込めるかが
魔法詠唱の
エリーが堂々と魔法を放つ姿はかっこいい。そういう部分でモチベーション
を高めるのも魔法には大切な事なのかもしれない。
「悠久の時を生きる全てを統べる神よ。我が名はロック。召喚に応じおいで
下さい、クロエ様」
煙と共にクロエ様が現れる。ただしそっぽを向いてらっしゃる。
「あ、あれ? クロエ様、何か気に
「悠久の時を生きるってそれじゃお婆ちゃんみたいじゃない」
口を
「そんな事思ってないですよ! ただ魔法とか詠唱を変えた方がかっこいい
みたいなのでクロエ様を呼ぶ詠唱をつけてみようかなぁって」
俺はクロエ様を怒らせてしまったようで焦って訳を話す。
「うそよ。わたしがロック君に怒るわけないじゃない」
そう言って鼻の頭を人差し指で軽くツンッとしてきた。
「ロック君はわたしをお婆ちゃんなんて思ってないよね? どう思ってる?」
クロエ様の全身を見る。
人ではありえないような美しい体のラインを浮き出させる淡い色のドレスか
ら出るしなやかな手と足。
軽くウェーブのかかった茶色の髪にまるで彫像のように美しい顔立ち。
そしてドレスから主張している二つの……。
「世界で一番キレイなお姉さん神様ですかね」
「ありがと。でもあまりエッチな視線で見ちゃダメなんだぞ」
かわいく図星をついてくるクロエ様。またもや焦ってしまい視線を泳がす。
「ふふっ、だけどすっごく嬉しいから今日は特別な事をしてあげる」
クロエ様が指をパチンッと鳴らすと俺の体は宙を舞い、いつものように膝枕
の体勢に。そしてもう一度パチンッと指を鳴らす。
「あーあー、聞こえてるかな?」
「あれ、片方の耳からしか聞こえなくなったりもう片方の耳からしか聞こえ
なくなったりしてますよ?」
「うんうん、それでいいのよ。それじゃいくわね」
クロエ様の香りと声に包まれる不思議な時間を過ごした。どれぐらいの時間
が経ったのかわからなくなった頃、クロエ様はカウントする。
「これから3数え下ろすとあなたは、わたしを好きで好きでしかたなくなっ
てまたすぐに会いたくなります」
「3……クロエ様の良い香りが恋しくなる。会いたい、また会いたい」
「2……クロエ様の柔らかい体に包まれたい。好き、大好き」
「1……もうクロエ様の事以外考えられない」
「ゼーロッ」
「ロック君はこのままゆっくりとした眠りにつくわ。今日の事はあまり覚え
てないかもしれない。けどまたわたしを側に呼んでね。約束よ」
頬に温かい感覚を感じた時にはほとんど眠りに落ちていた。
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