第14話 何が魔法かは自分の心で決める
エリーの杖も直り、俺の前衛としての能力も上がってきたので本格的に霊廟
の攻略を始める事にした。
初心者ダンジョン以降で重要な事の一つがマッピング。俺達はギルドで最新
のマップを購入済みだが、このマップはあくまで今の最新でしかない。
ダンジョンが流動し新しい通路や階層が現れた場合それを記入して報告すれ
ば見合った報酬が出るというシステムなんだ。
今回はマップの見方やマッピングの練習も兼ねて浅い階層をくまなく探索す
る事にした。
浅い階層のメインモンスターは毎度お馴染みスケさん。
今となってはスケさんがこちらに気づく前にエリーの魔法か俺の投げナイフ
の
「あれっ? ここ、もしかして新しい道できてない?」
「そうね! マップには何も書いてないわ。これで報酬いただきよ」
新たにできた道をマップに書き加えながら進んでいく。何本かの分かれ道が
あったが、
アイテムがあったらそれはそれで困る。
ダンジョンに出現するアイテムは宝箱に入っており、解錠スキルがないと開
ける事ができないんだ。その解錠スキルは俺とエリーの2人分の予約を入れて
あるが現在順番待ち。
超絶賛大人気スキルでもあるこのスキルだけはスキル取得後登録が必要で免
許も渡される。ダンジョンの宝箱以外も解錠できてしまうからね。
という事は、あんな事やこんな事も可能だから登録が必要なんだってさ。
「だからアイテムの入った宝箱が出現しても今の俺達だと指をくわえて見て
るしかないって事だよ」
「ぐぬぬ。わたしそんなの耐えられないわ! 宝箱があったら教えて。魔法
で吹き飛ばすから!」
えぇ……。俺はもしも宝箱を発見したとしてもエリーには教えないでおこう
と思った。宝箱とモンスターへの扱いが同じじゃないかな。
「そうなると早く解錠スキル取得したいわね」
「キャンセルが出ればもっと早くなると思うけど、なかなか出ないねぇ」
こう普通の会話をしているがこの間もスケさんを倒しまくっている。警戒か
らの遠距離攻撃が反則過ぎる。
「ロックの投げナイフの威力おかしくない!?」
「俺も使う度に威力上がってる気がするんだよね」
携帯用の
「シュッ」「スパッ」という音がするものであって、決して「ドゴンッ」
「バゴンッ」「グシャッ」といった打撃武器で殴打した音がするものではない。
「お願いだから、わたしにぶつけないでよね! 爆散デスしたくないわ」
「はっはっは、それはお互い様だよ」
隣で初歩魔法の詠唱破棄を連発してる人に言われたくない。ガリアさんの的
みたいにスケさんが跡形もなく吹き飛んで光の中へ消えていった。
ドロップしたお金や投げナイフを回収してる俺にだけは当てないでよ。
「ロック、わたし一つ気づいちゃったわ」
「奇遇だね。俺も気づいてたよ」
結構前からね。
「スケルトン弱過ぎて相手にならないわ!」
「そうだよね。クロエ様とアリスに成長したって言われたけど正直ここまで
とは思ってなかったよ」
というわけでここからしばらくエリーには休憩してもらい。軽盾スキルを試
させてもらおう。
「もう新たにできた道は全部奥まで調べたしエリーは少し見学してて。軽盾
スキルを試すから感想を聞かせてほしい」
「オッケー! しっかりダメ出ししてあげるわ」
「お、お手柔らかに」
丁度良く、武器持ちと普通のスケさんがいるので普通のスケさんを投げナイ
フでデスらせ武器持ちと一対一に持ち込む。
「武器持ちもこっちに気づいてくれたしやってくるね」
「ついでに消されたスケさんが
武器持ちスケさんがボロボロの片手剣を
生前は騎士だったのかもしれない。生前があるのかは知らないが。
武器を振り下ろしてくるがゆっくり過ぎる。初めは正面からおもいきり受け
止めてみる事にした。
俺がガリアさんに用意してもらった軽盾はラウンドシールドと呼ばれる円形
の軽盾なんだ。
軽い金属で出来たそれは少しぐらいの衝撃ではビクともしないはずだという
のがガリアさんの談だ。
「カキンッ」
思ったよりも軽い音と衝撃が盾から体に伝わる。これならそこまで力を込め
る必要もないだろうと感じた俺は、体を通常の体勢に戻し次の攻撃を待つ。
「カンッ」
やはり軽い音と衝撃しかこない。
俺が本来身につけるべき攻撃の受け流しに入ろう。グールみたいな相手の場
合、正面からもろに受け止めていては戦いにならない。
上下左右、どこから攻撃がきても受けた時に力の方向を変えて流す。軽盾ス
キルにより基本動作は体が覚えている。
ゆっくり上段からきた攻撃を力に逆らわず流していく。あまりに弱い攻撃で
流せたのか自分でもよくわからない。何度かそんな不思議な時間を繰り返した。
最後に攻撃こそ最大の防御シールドバッシュの練習をして終わろう。
「ベキッゴグシャッ」
武器持ちスケさんは光の中へ消えていった。
「軽盾スキルを一通り試してみたけどどうだった?」
「わたしまた気づいちゃったわ」
「エリーにしては冴えてるね。何に気づいたの?」
「武器持ちスケルトンが弱過ぎてどれがスキルの効果かわからないわ!」
「軽盾装備してると防御力が上がったりしてるけど地味だからね」
「最後のだけ凄かったわ!」
頭魔法少女にはやはり威力の方が重要だったらしい。
「最後にやったシールドバッシュは頭魔法だったって事?」
「えぇそうね! 最高に頭魔法してたわ!」
軽盾スキルの実戦練習も早々に終え、ギルドへ新しい通路の報告に行った。
「複数の道を詳しく記入してあるので、全部で金貨5枚の報酬になります」
「そんなになるんですね。ありがとうございます」
「いえ、こちらこそありがとうございます。これは新しいマップ作成に使わ
せてもらいます」
「あと、解錠スキルの講習ってまだ空きでないですか?」
「その事ですが1週間後に2名分の空きを確保したので受けられますか?」
「本当ですか!? もちろん受けます」
「わかりました。2名分予約を受け付けました」
「ありがとうございます! よろしくおねがいしますね」
いつものギルド職員のお姉さんとお互いにありがとうございます、ありがと
うございますと言いながらカウンターから離れた。
今回は現金で受け取ってエリーと半分ずつに分ける。
「ありがとう! ドロップも多かったしだいぶ儲かったわね!」
「スケさんをあれだけ倒したまくったもんね」
「もうギルドに用はないし宿に戻りましょ!」
帰り道で解錠スキルを1週間後に受講できる事を伝えると飛び跳ねながら喜
んでいた。
喜びを素直に表現できるエリーはすごいと思う。喜んで飛び跳ねる人を初め
て見たよ。
その晩、クロエ様を呼び出した。今度はちゃんと自分から呼び出す事って釘
を刺されちゃったからね。俺もクロエ様とお話したかったし。
「クロエさまー。今だいじょうぶですかー?」
数秒が経ち、忙しいのかな? と思い始めた頃だった。煙と共にクロエ様が
現れた。
「お待たせー。ロック君待ったー?」
「いえ、さっき呼んだばかりだから全然待ってないですよ」
「それなら良かったわ。準備に手間取っちゃって。ごめんね」
「全然待ってないので気にしないでくださいよ」
「それじゃお詫びに、えいっ」
クロエ様は座ってる俺の前にフワリッと来ると俺の上に乗っかりながら抱き
締めてきた。この体勢だと丁度クロエ様の豊満な胸が……顔に……。
そのままの体勢でいつものように頭を撫でられる。
「なでなーで。お詫びだから特別よ?」
クロエ様からは甘い花の良い香りがしてふわふわ柔らかく、天にも昇る気持
ちとはこういう事を言うのかなと堪能していたらデスりそうになった。
エリーが嬉しくてデスりそうになった気持ちがよくわかった。
「ロック君のために準備してきたのよ? 良い香りでしょ?」
「はい、温かくて柔らかくてすごく良い香りです」
「今日も頑張ってきたロック君をわたしが寝かしつけてあげる」
クロエ様は耳元で優しく語り掛け俺が寝るまで柔らかく包み込んでくれた。
「ロック! 朝よ。起きなさい!」
翌日、バタンッとドアが開けられエリーに起こされて目覚める。
「おはようエリー」
「ロック……あなたまさか神様と間違いとか犯してないわよね?」
エリーは青ざめる。
「この部屋すごく甘い花の香りがするの」
「寝るまで話してただけだから! それだけだから!」
浮気した男が弁解や言い訳をする気持ちもよくわかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます