海上保安庁に勤務する五十嵐勝利は、今でこそしがないバツイチ男だが、かつては「海猿」と呼ばれた特殊救難隊にいた元エリート隊員だ。そんな彼がある日、海辺でひとまわりも年下の女性・海音と出会い、恋に落ちる。
さぞかし大人の恋愛が繰り広げられるのだろうと思いきや、海音さんは男らしい五十嵐にベタ惚れだし、五十嵐もずっと年下の彼女にメロメロで、熱々の惚気ぶりにあてられる。
交際を重ねて結婚を考え始めた頃、五十嵐にソマリア沖への海外派遣の話が舞い込む。
日本に帰ってこられるのは早くても一年後。遠距離恋愛は心が離れてしまうかもしれない。バツイチの五十嵐は今度こそ幸せな家庭を築きたい。しかし五十嵐の年齢では最後のチャンスとなるかもしれない。
恋愛と仕事の狭間で悩む五十嵐の背中を押し、海の男の晴れ舞台へと送り出す海音さんの内助の功がぐっと胸にくる。
そして恋人の献身に応えるため、海賊が出没する危険な海域で奮闘する五十嵐の勇姿が実に熱いのだ。
自分の身を捧げて海上の治安を守る海の警察官に敬礼だ。
(『夏色の物語』特集/文=愛咲優詩)