【第六話】打ち合わせは硝子ちゃんと共に


「え、凄い! 魔法少女の衣装って本人達の希望も取り入れてくれるんですね!」

「そうなのサ〜。ある程度はこうやって公式が案を出してくれるけど、細部は変更可能なのサ!」


 色とりどりの衣装案原画を前にして心が弾む。どれもこれもクオリティーが高く、ののがこんなのを着てもいいのか……と気後れしちゃう。


 魔法少女保護委員会によってプロデュースされる魔法少女達は基本、全員『アバター型 』。アバター型と呼ばれる魔法少女は顔も体格も髪色も自由自在!! まさにゲームのアバターのように完全に別人――つまり、お好みの魔法少女――に変身できるのです!


 厳密に言えば魔法少女は『アバター型 』と『一般人型』、『 アイドル型』の三つに分けられるんだけど、アバター型が圧倒的人気を誇っているので基本的にアバター型なのです!

 因みに人気順に並べるとアバター型、アイドル型、一般人型、って感じ。


「うーん……。どれにしようかなぁ……。これも捨て難いし、あ! そっちのも素敵!」


 言いながら机の上の原画を手に取っては眺める。

 はぁ〜……。どれもため息が出るほどステキ……うっとりしちゃう。


「髪色や目の色。もちろん衣装の色も変更可能だから、デザインが好きなものを選ぶのをオススメするのサァ〜」


 そう言ってまるでわが子を見るかのようにののを微笑ましく見守る硝子ガラスちゃん。


 そう、ましかののはただ今委員会敷地内にあるカフェで打ち合わせの真っ最中!! 担当の魔法少女透明硝子トランスペアレンちゃんと一緒にの魔法少女詳細を決めています!

 言うまでもないかもしれないけれど、すっっっっごく楽しいです!!!

 本当に! 今まで今日のために生きてきた感じするくらい!!


「ううん……これは……決められません、硝子ガラスちゃん。どれもこれもの好みダイレクトアタック! 過ぎるんです!!」

「ん〜、それは困ったねぇ~。決めてもらわないといけないしぃ……。自分で決めるのが一番いいと思うんだけど……。」


 ののがしているように原画をいくつか手に取り見比べていく。

 途中で何かに気づいたのかハッ、と手を止め顔を上げた。そして、のの方を見て自分の耳を指しながらちょいちょい、と手招きをした。

 よく分からないけどののは耳に手を添えてみた。すると硝子ガラスちゃんがこう耳打ちしてくれた。


「キミの司るもののイメージから決めるのはどうだい?」

「えっ、でもそれはさっき教えられないって……。」


 お互いにテーブルから体を乗り出して顔を近づけることにより、なるべく周囲に聞こえないようにする。念には念も入れて小声で。


「ボク的には教えても問題ないと思うのサ。でも一応ナイショね、ナイショ。お役所仕事は頭が固いからサ。」


 周りの目を気にしながら人差し指を口に当ていたずらっぽく笑うので、ののはただひたすらに頷く。

 1時間くらい前に教えられないと言われてからとてもとても気になっていたので教えてくれるのは非常に有難いです。感謝、感謝。


 再度手招きをされたので口元にの耳を寄せる。


「キミの、司るもののはね……サ。」


 えっと、……??運を司るってどういうこと……?


「……その様子だとよく分かっていなそうだネ。まぁ、ボクにも詳しいことは分からないけどサ。いざという時に運をちょっと良くしたり出来るんじゃない?」


 申し訳ない、と首をくすめる。


「聞いた感じ戦闘向きではないだろうね。ボクの透明よりかは遥かに凡庸性高そうだけど。」

「戦闘向きじゃないんですか?」

「多分ネ。聞いた時にイマイチパッとしないヤツは大体そうなのサ。具体的に例を挙げると『勘 』とか。」


 まぁ、あの子はそもそも一般人型だからサイトにも載らないし異例中の異例みたいなものだけど……と付け足す。

 そっか、戦闘向きではないんだ……。格好よく模擬戦とかで活躍したかったんだけどなぁ。


「まぁまぁ、そんなに落ち込まないで。能力がアレでも皆ある程度は魔法使えるし、身体能力次第では物理で殴る子もいるからサ〜。」


 魔法少女になった時点である程度の戦闘能力は保証されているということかな? それならまだチャンスはありそう。


「で、衣装の方はどうすr――」

「その事なんですけど、お家に持ち帰って決めてもいいですか?」

「はぇ??」


 硝子ガラスちゃんの想定外だったみたいで気の抜けた声が漏れる。普段は中性的な声をしているけどちゃんと女の子なんだなぁ。


「変身する時にイメージが固まってれば出来るって言ってたから……。ゆっくり考えたいなって。」

「ん〜。そっかぁ。ボクとしては最後までお手伝いしたかったけど」

 残念だなぁ~と少ししゅんとする。

「キミがそれを希望するなら止めないヨ。」

「ありがとうございます!」


 快諾してくれた硝子ガラスちゃんに軽く会釈をする。

 何だかんだ言いつつ私の気持ちを優先してくれるからとても嬉しい。硝子ガラスちゃんが担当で良かったかもしれない。ののにはピッタリ。


「そしたら今日は特に出来ることはないネ。これでお開きにしようか」


 席を立ち、お金はボクが払うよとレジに向かい出した。慌ててののも後を追おうと立ち上がる。


「ま、待ってください! 自分の分は自分で会計しますから〜!!」


 の声にすぐ様反応して振り返る。


「ここは先輩として奢らせてくれよ〜」

「いえ、! 流石にそういう訳にはっ!」

「奢るのが夢なんだよー。夢叶えさせてくれよー。」


 その後なんとか説得することに成功し結局、各々おのおので支払いを済ませた。

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