【第三話】魔法少女保護委員会本部
ついに来ました! 待ち望んでいたこの日が!!
すぐ魔法少女になれるのか……と思ったらそうでもないしさ。別にいいんだけどね。夢見た魔法少女になれるなら!
浮つきた足取りで街中を進んでいく。
周りは私の何倍もあるガラス張りのビル、洗練されたデザインのビル、カフェテラスのあるビル……あっちにも、こっちにもビル。
高い建物が多すぎて多少迷いながらも、ナビアプリを駆使して順調に近づいてきています!
大都会に初めてやって来た、ののにはすべてが新鮮です。 カッコよくスーツを着こなし歩くOLさんに、ビジネスマンを狙ったチェーン店の看板。
チェーン店もOLなら私の町にもあっのに『都会の』という言葉がつくだけでキラキラ輝いて見える。
なんで同じ東京なのにこうも違うのだろう。
「……つい、た!」
ののの目の前にそびえ立つのは魔法少女保護委員会本部。魔法少女のイメージを崩さないように(?)西洋とかの物語にありそうな洋館を模した外装になっている。なんか、本当にここだけ中世ヨーロッパって感じ。
庭のようなところに木が植えられているのがまた雰囲気が出ていて素敵。のの的にはステッキのオブジェがオススメポイントだよ。
……別に魔法少女全員がステッキ使ってるわけじゃないんだけどね。でも、やっぱりthe 魔法少女って感じがして好き!
すぐお隣には魔法少女会館なる模擬戦会場を始めとする魔法少女関連施設がズラリ……。どれもテレビで見た事のある建物ばかり。
ましかのの、猛烈に感動しています!
あ、ちょっと離れたところにグッズ屋さんが見える……。行きたい……。欲しい、買いたいぃ……。
腕時計に目をやると既に約束の10分前だったので今回は断念。
……帰りに絶対寄ろっと。
改めて重々しい空気を醸し出している正門に向き合い、呼び鈴を鳴らす。
すごい緊張する。私今人生で1番緊張してる自信あるもん。だって、本部の呼び鈴を鳴らす日が来るなんて思ってなかったし? なんて言い訳しながら。
緊張の印に手汗をじっとりと感じる。動きもどこかぎこちない。
ややあって、金属音を周辺に響かせながら門は開いた。見た目通り錆びてるせいで動きにくいのだろう。
「お待たせしまして大変申し訳ございませんでした。受付に担当を待機させていますので、そのまま真っ直ぐ前へとお進み下さい。」
いきなり話し出したインターホンに多少鼓動を早めながら辛うじてはい、とだけ返事を返してから恐る恐る中へと踏み出した。
入ってすぐに、来るのは1回目だし、ちょっと探索してみたい衝動に駆られる。本部なだけあって細々とした装飾品が上品な輝きを持っていて美しい!!ランプに透かし模様があるのとか、植物も不思議で見たことないようなものが多くて見どころは沢山ありそう。このキノコとかどうなってるの?
もう、全部可愛い!!
でもでも、下手に動いて迷子になっても困るよね……それに怒られるのもヤダ。
……仕方ない今回は諦めよう。どうせまた来ることになるだろうし。散歩はその時にでもすればいいかなー。
そうして言われた通りに道なりに真っ直ぐ歩いていくと本館らしき建物があったのでドアを開け入ってみたはいいけれど……。
「え?受付、どこ??」
そこはだだっ広い何も無い空間だった。シャンデリアとか調度品はあるけど……何だろここ……。人の気配は感じられない。
……エントランスとかなのかなぁ。まだ歩くとか?
再度、部屋を見渡してみるも真っ直ぐ行くような廊下は見当たらないのでほとほと困ってしまった。
「……。もしかしてのの、道間違えた??」
ひとつの結論に達したののは来た道を引き返そうとドアノブに手をかけた。
――刹那、ドアと私の間に女の子が現れた。
「待って待って! ストップなのサァー! 帰らないでよ。驚かそうと思っただけなのサ!」
「うわあ!?」
女子らしくない悲鳴をあげながら後ろに思いっきり転んでしまった。
……でもまぁこれは仕方ない、よね?
女の子は派手に転んだ私を見つめてコテン、と首を傾げている。
さっきは急だったから気づかなかったけれど、この子めっちゃ肌白い。目もくりくりしていてパッチリ。洋風な本部にいても様になるフランス人形のような女の子。全体的に透明感がある可愛い子って印象を受けた。
「これは……驚かすのに成功したってことでいいのかなぁ〜?」
人懐っこそうに笑っているあたり悪い子ではなさそう。ののの勘だけど。
立てるのサ?と差し出してくれた手をありがと、とお礼を言いながら何とか立ち上がった。
「さっきはビックリさせちゃってゴメンー。でも、貴方のことは大歓迎してるのー! 本部にようこそなのサー。」
可愛らしくお辞儀をしてきたので、慌ててこちらもお辞儀を返した。
なんだかやっと同い年くらいの人に会えた感じがしてほっとするな。
「大したことじゃないし別にそんなに気にしなくても……。それより、受付の所にいる担当さんに会いたいんですけど受付ってどこか知ってたり――」
「ああ!! そのことなら問題ないのサ!」
にっ、と頬を緩ませながら自分自身を指さして自信ありげに一言。
「その受付はここで。その担当はボクのことなのサー!!」
一瞬の沈黙。目の前にいるのは可愛い普通の女の子だ。間違いなく。
「嘘ぉぉぉぉぉぉ!?」
思わず大声を出してしまい周りの人からの視線を集めてしまった。ハッ、としたののは心の中でごめんなさい……と呟いた。
「嘘じゃないのサ。信じられないなら、振り向いてみて自分の目で確かめてみたら?」
「え、でもさっきは何も無かったじゃ……。」
振り返るとさっきとは違う景色が広がっていた。『受付』と書かれた札が乗っている机に向かって座り、淡々と業務をこなすお姉さんの姿がある。
受付さんだけじゃない。活発に行き交う人、人、人……あっ!! 魔法少女もいる!?
あんなに空っぽだった部屋が一瞬の間にどうやって……。
「あ、そう言えば自己紹介がまだだったのサー!」
女の子の言葉で現実に戻ってくる。
そうだよね。初対面だもん自己紹介ってとても大事だと思う。一応、私の担当さんな訳だし……全くそう見えないけれど。
「えっと……。私の名前はましk――」
「あ、いいのいーの! ボク君のことは全てお見通しなのさぁ〜。」
どういうこと?とののが尋ねる前に少女は自ら答えてくれた。
「初めまして、ましかののさん。ボクはね、
「硝子……?」
聞き覚えのある名前に眉をひそめる。
「そうさ。魔法少女大好きな君ならもうお気づきだと思うけどサ。」
魔法少女好きなら必ず知っている名前だ。有名だけれど姿は全くと言っていいほど知られていない。
彼女は魔法少女になってから1度もメディアに表れていない。声も見た目も何一つ外的要素は公表もされていない。
それは、彼女の性格と彼女に与えられた『司るもの』――魔法少女にひとつずつ与えられる能力みたいなもの――が原因だとののは考えている。
「ボクは魔法少女
魔法少女
そう、たとえ模擬戦に出場していようとも自らの姿を見えないようにしている。
魔法少女の中で1番の末っ子。魔法少女歴は十年。
十年間、存在しているのかさえ怪しかった魔法少女は
あろう事か私の担当さんで。
「今まで、後輩が居なくて寂しかったのサ〜! 仲良くしてね。」
本当に無邪気に笑いながら握手を求めるどこにでもいそうな女の子。
そんな彼女は魔法少女界隈でいわゆる、問題児なのだった。
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